第11回:吉開章さん

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本企画では、会員各位の外国人受け入れ事例を紹介しています。

第11回でご紹介するのは、個人会員の吉開章さんです。やさしい日本語ツーリズム研究会の代表を務める吉開章さんは個人会員としてJP-MIRAIに参加され、2021年度下半期活動報告会での発表で会員相互の投票にて優秀賞にも選ばれています。 
吉開さんの活動報告については右記のページの動画でも見ることができます。 https://jp-mirai.org/jp/2022/10727/ (「第1部 会員活動報告会」の動画)
やさしい日本語ツーリズム研究会のウェブサイトは右記をご覧下さい。https://yasashii-nihongo-tourism.jp/

8月中旬に、JP-MIRAI事務局によりオンラインインタビューを実施しました。

<2022年7月5日のJP-MIRAI会員活動報告会に登壇する吉開さん>

Q. 吉開さん及びやさしい日本語ツーリズム研究会のプロフィールを教えてください。

私は株式会社電通に勤務しています。今まではデジタルミーティングの仕事をメインにしながら、海外支社のマネジメントも行っていました。
2010年に日本語教育に関心を持つようになりました。そのころ仕事でアジアの様々な国と接したり、フランス語を勉強し始めたのですが、ネットで日本語教育者とフランス語教育者をマッチングするシステムを通じて私がフランス語の作文を送ると、アルジェリアやモロッコからフィードバックが来て、彼らが日本語を教えてほしいということがありました。そのとき、フランス以外でフランス語を母語とする地域があること、日本語を教えてほしいというニーズがあることを知ります。
このようにして日本語教育に関心を持っていく中で日本語教育の資格を取り、Facebookで5万人の日本語教育の先生とつながりプロボノで世界中の学習者を支援してきました。その中で日本に来た外国人の困難を知り、何とかこれを自分の仕事にできないかと考え、「やさしい日本語」に注目しました
2016年、実家のある福岡の柳川市長に、観光客向けの「やさしい日本語ツーリズム」の企画を提案し、柳川市長のイニシアティブのもと、現地観光課が予算を獲得してくださったことで4年間「やさしい日本語ツーリズム」企画を実施しました。それを全国に広げるべく「やさしい日本語ツーリズム研究会」プロジェクトを立ち上げたのです。

<吉開さんと金子健次柳川市長>

Q. 吉開さんのJP-MIRAI入会の経緯について教えてください。

2017年に西日本新聞が主催した外国人関連シンポジウムにパネリストで出席したときに、公益財団法人日本国際交流センター執行理事の毛受敏浩さんと知り合い、その後毛受さんを通してJP-MIRAIのことを知りました。そして個人会員の制度を知り入会したのです。

Q. JP-MIRAIでは、会員企業・団体に、「責任ある外国人受け入れのための5つの行動原則」(https://jp-mirai.org/jp/code-of-conduct/)を実践して頂くよう呼び掛けています。下記の行動原則に関連する取り組みを教えてください。

行動原則3「私たちは、働く場と生活の場の両方で、外国人労働者との相互理解を深め、信頼関係を醸成します。」の実践をしています。7月5日の「会員活動報告会」では、やさしい日本語ラップ「やさしい せかい」の制作について発表させて頂きました。

やさしい日本語ラップ「やさしい せかい」
https://yasashii-nihongo-tourism.jp/yasashiisekai

「やさしい日本語ツーリズム」は年に1回クリエーティブを起用したビデオを制作しています。ある年は「やさしい日本語とは何か」のプレゼン動画、ある時はセブン・イレブンさんとコラボした日本人オーナーとミャンマー人店長の談話で、初めて「外国人労働者」に注目しています。
今回は、はっきり・さいごまで・みじかく言う「ハサミの法則」というやさしい日本語の心がけを楽しく学んでもらえるビデオを作りたいと思ったとき、「ラップ」を思いついたのです。「ラップ」はいろんな歌詞を盛り込めるので、日本にいる外国人の多様な悩みをとにかく盛り込むにはぴったりくると考えました。
自分の勤務する電通の社内にラップをやっている社員がいたので、彼らに相談しながらプロのミュージシャン、知り合いの映画監督を巻き込んでビデオを作りました。そこでは外国人の生の声を活かしたいと考え、普段から連携している明治大学の山脇啓造教授のゼミ生に協力を頂き、ゼミ生が地元中野区に住む外国人の皆さんとのヒアリングの場を設定し、学生と共にそれを歌詞に落としていきました。当事者と若者がかかわることで、リアルに表現する理想的な内容になったと思います。
このやさしい日本語ラップ「やさしい せかい」は無償で使用していただけるようにしています。皆様にどんどん使っていただくことで、やさしい世界を広めたいと思っています。

コロナの中でこのビデオを制作したので、人が集まって録音したり撮影するのが大変でした。明治大学が1日キャンパスを貸し切りで使わせてくれたのが大きかったです。またイーストウェスト日本語学校(中野区)にも協力して頂き、お盆休みの教室を貸して頂いて録音しました。コロナが収束していない期間の収録だったので健康管理に万全を期して収録し、山脇教授も「奇跡」というくらい無事に収録できたのが記憶に残ります。

Q. 制作後の反響はいかがでしたか?

再生回数も増え、日本語教育の関係者も見てくれて「涙が出た」という反応も来ました。私の知り合いのやさしい日本語関係者に見せたとき、その人も涙してくれました。異国でマイノリティとして過ごす中で「やさしい せかい」のビデオを見て感動したと。何度も見たという人も多く、音楽作品の力を感じました。
ビデオ制作過程で私が執筆・出版した『入門・やさしい日本語』の考えを盛り込みましたが、やさしい日本語を必要としているのは外国人だけでなく、視覚障がい、聴覚障がいの方でもあると考え、実際の当事者の方も呼んで出演して頂きました。
多様性を認め、社会の垣根を越えていくうえで「やさしい日本語」はとてもいい視点だと思っています。今後もその方向性で自分は活動していきたいと思っています。
YouTubeでは18言語の字幕を付けています。ラップの歌詞を1度やさしい日本語に翻訳し、それを18言語に翻訳しています。この動画の日本語YouTube字幕はオリジナルの歌詞と別な「やさしい日本語」になっているので、外国人の方にも理解できるようになっています。さらにそれをAI翻訳で18言語にしているので翻訳の精度も高くなっています。
「やさしい せかい」は、やさしい日本語を基点とし、手話を含む多言語で翻訳を付けることで、言葉の壁を解消するショーケースになっていると思います。

Q. 吉開さんの「やさしい日本語」の現在の普及活動について教えてください。

外国人に対する「やさしい日本語」は2019年から国策に位置付けられています。官公庁がこれに取り組んでいますが、今後は民間企業も取り組んでほしいと考えています。『入門・やさしい日本語』認定講師という講座をにほんごぷらっと(日本語教育情報プラットフォーム)さんと共同で開講し、全国に200名近くの仲間が広がりました。仲間のみなさんはやさしい日本語と「技能実習生」「介護」などのようにそれぞれの得意分野や関心分野との掛け算で取り組んでいます。それぞれの地域で外国人に継続的にサポートする人材が求められているし、自分もどんどんそのような仲間を作って国が課題に取り組む受け皿になりたいと思います。

Q. 企業の「責任ある外国人労働者受入れ」に関して、どんなことを感じますか。

外国人が日本人同様の日本語を話すのを待つのは時間もコストもかかりますが、日本人がやさしい日本語を覚えることはそんなに時間もかからず、費用もあまりかかりません。企業がやさしい日本語に取り組むということは、人材確保や育成において、圧倒的なコストカットにつながると思うのです。外国人の日本語教育は、誰か別な人が施して納品してくれるといった部材調達のような考え方が一番問題だと思います。日本人の話し方は多くの場合、曖昧で、文を濁し、ダラダラ言う傾向があります。はっきり、さいごまで、みじかく言う「ハサミの法則」を日本人の方が心得るだけでも、外国人に対して内容の70%は通じるでしょう。日本人が変わる方が、企業のプラスになるということを考えてほしいと思います。
もう1つ思うのは、「外国人の日本語が下手=能力がない」と考えることは極めて不当なことだということです。私たちが英語を話す時も間違いは避けられないし発音も違います。でも、話している内容を聞かずに形式だけで評価されるのは自分たちに置き換えれば怒りを感じる事態ですよね。そのことをJP-MIRAIにも皆さんにきっちり伝えてほしいと思います。

Q. JP-MIRAIおよびJP-MIRAI会員への期待を教えてください。

「やさしい日本語」は簡単ではないと思われがちですが、実は誰でも子供の頃は「やさしい日本語」で話していたはずです。適切な研修やワークショップで劇的に心がけを変えることができます。「やさしい日本語」をぜひJP-MIRAI会員の企業の中でも広げて欲しいと思います。それは外国人のためだけではなく、障がい者雇用の観点からも大事です。多様な方への「配慮」は企業において常に大事です。
JP-MIRAIは素晴らしい団体でもっともっと大きくなると思います。企業が多数参加しているし、JP-MIRAIの役割は大きいと思います。その中で「やさしい日本語」は非常に取り掛かりやすいテーマなので今後も注目してほしいと思います。

続いて、吉開さんおよび明治大学国際日本学部の山脇啓造教授の紹介を頂き、「やさしい せかい」のビデオに出演されたシリア人大学生のラーマさんにもオンラインで取材を行わせて頂きました。

<シリア人大学生 ラーマさん>

Q. 日本に来た経緯、日本に来てから思っていたことについて教えてください。

シリアで2011年に内戦が起きて身の危険を感じ、2013年10月に母と兄と私の3人で日本に逃れることができました。この時は13歳でした。
日本に来て6か月は野良猫状態でした。難民申請をしたもののなかなか認められず、最初の6か月は家も借りられず仕事もできず何もできませんでした。6ヶ月後には在留資格が認められ、働けるようになり、1年半後には難民認定が降りて生活が保証されました。
日本に来ていろいろなことを経験しました。命が助かったことでほっとはしたものの、異国で暮らすことの不安でいっぱいでした。その中でも、何があっても自分の将来を作ろうと思っていました。
母が仕事を頑張る中で、自分は日本語を覚えて家族が自立できるようにし、いい将来を作ろうと思いました。その中でいろんなNPOやボランティアの方にお世話になって、大学に進学することができました。

Q. 「やさしい せかい」ビデオに出演するきっかけを教えてください。

明治大学の山脇ゼミの活動に参加する中で山脇先生にこのビデオ制作のことを教えて頂き、ゼミ生ではないのですが興味を覚えて参加しました。

Q. 「やさしい せかい」のビデオに出演してどんなことを思いましたか?

いろんな表現方法があるということを学びました。私もいろいろなところで多文化共生のことを話しますが、私がプレゼンテーションをして皆さんが聞いてくれるというのが普通です。それに比べ、ラップという形式は軽い気持ちで異文化の問題に触れることができるので魅力的だと思いました。社会マイノリティといわれる人たちが出演しているので、イメージだけではなく当事者(日本語が話せない外国人、耳が聞こえない人、目が見えない人など)と実際にビデオの中で触れることができることが魅力的だと思います。

Q. 日本人に伝えたいメッセージはありますか?

相手の立場になって考えてほしいと思います。昔、学校で「舌打ち」をしたことがあります。日本では怒りを表す表現だと思うのですが、シリアでは軽い気持ちで使う表現で、ギャップに驚いたことがあります。文化の違いがあることを理解してもらえればと思います。
一方で、外国人に会ったときにどう接していいかわからないという日本人は多いと思いますが、同じ人間だし壁を作る必要はないと思います。変に意識する必要はないと思います。そういう意識とか壁が少しでもなくなればいいと思います。偏見とかステレオタイプとかイメージとかを取り払って、一個人として皆さんと接してほしいと思います。私はシリア人だけど、シリアを代表しているわけではありません。個人として接してほしいと思います。

<インタビューを終えて>
吉開さんおよびラーマさんには、お忙しい中長い時間をこのJP-MIRAIの取材のために割いていただきました。この場を借りて感謝申し上げますと同時に、JP-MIRAIとしても吉開さん、ラーマさんのご意見を今後の活動にしっかりと活かしていきたいと思います。

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本企画では、会員各位の外国人受入れに関連する事例を紹介しています。 第15回でご紹介するのは、佐賀県です。佐賀県では、平成26年度に“佐賀県国際戦略”を策定し、その中で内なる国際化(多文化共生の地域づくり)を重点分野と位置づけ、様々な施策を行っています。外国人労働者に関わる事業としては、外国人に関する総合相談窓口(多言語コールセンター含む)であるさが多文化共生センターの設置・運営、防災セミナー、日本語教育の体制づくり、やさしい日本語の普及・啓発、地域での交流機会の創出や企業と連携した受入環境づくり等を佐賀県国際交流協会と協力しながら実施してきました。 今回は佐賀県地域交流部国際課長の井崎 和也様にお話を伺いました。 地域交流部国際課長 井崎 和也様 Q.  佐賀県地域交流部国際課のプロフィールを教えて下さい。 平成27年頃から、技能実習生を中心とした外国人が佐賀県にも多く入ってこられるようになり、外国籍住民の数が飛躍的に増加しました。そのような状況の中で、地域住民と外国籍住民の方々とのコミュニケーションがうまく取れないといった問題が生じてきました。平成27年には、東京外国語大学の協力を得まして、外国籍住民及び地域住民を対象に調査を行いましたが、調査結果においても、同じような問題が顕在化していることが分かりました。 参考:佐賀県外国籍住民アンケート調査、佐賀県における多文化共生に関する調査報告書 それに対応して、佐賀県ではこれまで行ってきた生活支援に加え、コミュニケーション支援として、地域での日本語教室の取り組みを活発化することで、地域日本語教室を核とした地域における顔の見える関係作りを目指してきました。 その後も外国人の数は増え続け、地域課題だけではなく、産業分野における課題も増えてきたため、対応を各企業や民間に任せきるのではなく、多文化共生の観点から、政策として取り組むべきだと問題提起が出されたのが、令和2年の初旬になります。 行政としてこの課題にどう向き合うのかについて半年間に渡り検討を重ね、同年の12月、国際戦略本部会議にて一つの方針を決定いたしました。 それは現在地域で取り組んでいるコミュニケーション支援を活用しながら、今後は産業分野において働く環境整備が必要であることから、受入れ企業側にも多文化共生を理解していただき、外国人が早期に馴染めるような、そのような働く環境の整備に我々も積極的に関わっていこうということです。 併せて、地域での顔の見える関係を築くための交流の機会作りにおいては、地域日本語教室の活動と合わせて積極的に行っていき、その双方を上手く実行することによって、外国人の方が地域に融合していくというような形で、地域づくりに取り組もうと動き出しました。 また、令和3年4月には、多文化共生については一つの係として独立させ、集中的に取り組んでいこうと、職員を増員して業務を進めています。 Q. 受入企業、外国人労働者に向けて行っている具体的な活動を教えてください 多文化共生のマインドを広めていくという取り組みに関しては、受入企業に対しては、私たちが企業へ赴いたり、逆に依頼を受けて多文化共生に関するセミナーを開催したり、双方向からの形で進めています。一方で外国人の方が入ってこられたら、生活オリエンテーションだけでなく、受入れ側の社員等へのやさしい日本語の講座もそこで一緒に行うなどしています。 また、地域でのコミュニケーション円滑化のためのツールとして、やさしい日本語の教材動画を作っているのですが、そういったものを社員教育のために使っていただいている企業もあります。 参考:やさしい日本語動画(入門編・基礎編・実践編) 受入れ側と入ってくる側、双方に対して我々が積極的に関わっていくことで、問題が起こらないようマインド醸成のための、言わば営業活動のようなことを中心にやっています。 もちろん雇用管理セミナーのようなところで我々が登壇して働きかけるというのもありますが、そういった集合研修では人権問題というのは知っていて当然という前提であり、持つべき人に本当にマインドが醸成されたかがわからないことから、そこからもう一段階踏み込んで、企業に赴いたり、企業の中におられる外国人に直接オリエンテーションなどを行うことによって、その場で終わりではなく、当事者たちが次の行動に自分たちで繋げていくというところまでフォローしています。 Q. 外国人に関する総合相談窓口(多言語コールセンター含む)について教えてください。 電話相談窓口の多言語コールセンターでの対応は21言語で行っております。また、対面での対応ということになると、佐賀県はベトナム国籍の方が非常に多いため、令和元年の7月から国際交流員としてベトナム人を雇用し、対応にあたっております。 ベトナム人国際交流員のファン グエン アン トゥイットさん(写真左) Q. 活動を続けていて、受入れ企業側が変わってきたと感じられる点はございますか。 私達が関わっている企業の中には、変わられていっているところも少なからずありますが、外国人を雇用されている企業は県内に1,000近くありますので、その全てがどうかという話になると、まだまだなのかもしれません。 ただ、私たちは地域全体を丸ごと作っていこうということを目指して活動しているので、企業内での働く環境整備だけではなくて、外国人の方が企業の近くの地域の方々と交流して、地域と密着して生活することができていれば、何か私たちが目指している本来の形に近づいているのではないかと思っています。 Q. 今後はどのような展開をお考えでしょうか。 受入れ企業に対して、コンサルティングのような形で、伴走支援という仕組みを作っていくことを考えてます。今の営業活動の延長線上にはなりますが、やはり企業側のマインドの醸成やそれと合わせた働く環境整備を企業側が自ら整えていけるよう、私たちが寄り添って支援していくような仕組みを作れないかと考えています。 そういった取り組みをこれまでも行ってこられた優良企業がありますので、そういった事例をお伝えしながら、自分たちの力で、自分たちの取り組みに変えていこうとする企業を、私たちがお手伝いすることを考えています。 Q. JP-MIRAIおよびJP-MIRAI会員への期待をお聞かせください。 JP-MIRAはプラットフォーム組織なので、難しいのかもしれませんが、優良事例を指し示すだけでは、なかなかマインドの醸成まではいかないと思います。佐賀県内でも働く環境整備等を行っている企業がいらっしゃいますので、例えば、そういった企業の経営者の方とネットワークを構築していただくとか、また、やはり人権問題なので、雇用する受入れ側の経営者の方や人事担当の方へ実現可能なレベルで理解を促進する必要があると思います。 他には、当地域で何かワークショップのようなイベントを開催していただいてもよいかもしれません。 地域での日本語教室やセミナーなど「交流」といったような言葉を使うと、非常にハードルが高く聞こえてしまい、大きなイベント実施を想像しますが、私たちが普段行っているのは、外国人の方と地域住民の方とのお喋り会のようなものなのです。特定技能で入ってこられる方とか、留学生もそうですが、ある一定程度の片言でも日本語が使えたり、やさしい日本語で会話ができるということをベースにして考えると、地域の方々が、一旦その外国人と日本語である程度コミュニケーションができるようになると、ハードルが圧倒的に下がるのです。 何か地域のためにテーマのある交流機会を作らなければいけない、ということでなくて、実際に対面でお話をする機会を作ってハードルを下げる、普通に喋れる状況を作るということが意外と大事なのかと思います。 <インタビューを終えて> 井崎様には、日々の業務で大変お忙しい中、取材に応じていただきました。取材中何度もお話されていた「現場レベルでのマインドの醸成」を常に意識して取り組みをされている姿勢に胸を打たれました。また、佐賀県では、ウクライナ難民者支援においても、身寄りのない方に対し、自治体やNPO職員が身元引受人になって対応している状況なども伺い、改めて佐賀県の多文化共生に対する取り組みの本気度を伺うことが出来ました。この場をお借りして感謝申し上げます。JP-MIRAIとしても、引き続き多くの自治体の皆様のモデルとなるような活動を目指してまいります。...

本企画では、会員各位の外国人受入れに関連する事例を紹介しています。第14回でご紹介するのは、公益財団法人沖縄県国際交流・人材育成財団(OIHF)です。2021年には「多文化共生推進アライアンス認証制度」を開始し、沖縄県内の外国人労働者の生活や雇用環境を向上させようと日々取り組んでいらっしゃいます。※「多文化共生推進アライアンス認証制度」とは、厚生労働省沖縄労働局及び出入国在留管理庁福岡出入国在留管理局那覇支局との3者間で締結した「在住外国人の労働・生活環境向上に向けたパートナーシップ協定」を基盤としたプラットフォームである「多文化共生推進アライアンス」による、「適正な労働環境と雇用管理の確保等、外国人労働者の労働・生活環境の改善に責任を持つ企業や団体」の認証制度です。参考:多文化共生推進アライアンス制度今回は国際交流課課長・根来全功様、主幹・葛孝行様にお話を伺いました。同財団は2020年に会員としてJP-MIRAIに参加され、2021年度下半期活動報告会での発表では会員相互の票にて優秀賞にも選ばれています。             国際交流課課長 根来 様                        主幹 葛 様Q. 公益財団法人沖縄県国際交流・人材育成財団(OIHF)のプロフィールを教えて下さい。当財団は、特殊法人琉球育英会を前身として、平成12年に沖縄県国際交流財団と沖縄県人材育成財団とが合併してできた組織です。財団の職員は全体で36人程おりますが、国際交流課は6人の職員で運営しています。参考:国際交流課のHPQ. 沖縄県が現状抱えている課題はどのようなことがありますか?1つ目は、県内で働く技能実習生に関わる問題です。ここ数年で技能実習生が飛躍的に増えているのですが、そのような中で、以前、文化庁の事業の一環で、日本語教育に携わる外国人定住者にヒアリングを行いました。その結果、就業先は送出し機関が決めており、どこに行くかが直前まで分からないケースもあり、さらに、県内在住者の中には、必ずしも沖縄を選んで来ている方が多いわけではないという実態がみえてきました。2つ目は、永住化、定住化、高齢化に関する問題です。他県に比べて傾向が特に顕著な点として県内には米軍基地が点在しており、基地内外に住む約5万人の軍人・軍属がおり、彼らは日本の住民票は持たず、また、中には高齢化しリタイアした後も沖縄に住み続けている方も多くいます。その方々が、日本語が分かる配偶者を亡くされて孤独化し困難に直面するケースもあり、問題は多岐に渡っています。また、当地は海外からの旅行客も多く、観光産業が盛んです。同産業は経済的には県に貢献している一方、外国人労働者という側面で考えると、必ずしもそこで働いている外国人が良い待遇を受けているわけではない、という点も課題の一つです。Q. そのような課題を抱える中で、多文化共生推進パートナーシップ(出入国在留管理庁・厚生労働省沖縄労働局)協定締結に至った経緯を教えてください。国際交流課では、2019年から外国人からの相談を受け付けています。労働に関係のない生活に関する相談もありますが、労働に関する相談を聞くと、労働者側だけの問題だけではなく、雇用主側が労働法をあまり理解していないということも、一つの要因として挙げられることに気が付きました。双方に、雇用に関する法や決まりを浸透させることが、解決に導く手助けとなりますし、相談に至るようなケースを少しでも減らしたいと考え、多文化共生推進パートナーシップ協定を結びました。協定を結ぶにあたって、我々自身が労働法や労働基準法を100%理解しているわけではないため、外国人労働者から相談を受けた我々が相談をできる機関が必要と考え、当初から在留管理庁、労働局に同協定の構成員として参画してもらおうと進めていました。協定の概要はこちらQ. 多文化共生推進アライアンス認証制度開始後の反響や活動を進めていく上での方針はございますか?我々としては、協定の意義をご説明し、賛同してくれる企業に絞って、就職マッチングなどを行っています。誰でも会員になれるとすれば当然会員数も増えるでしょうが、我々が考えていることはそういうことではありません。場合によっては、労働条件通知書や雇用契約書を確認させてもらい、是正が必要なものには助言を行い、それを改正していただいたりもしています。時間はかかりますが、しっかりと審査をし、賛同していただける企業さんに会員になっていただくというスタンスは曲げずに行っています。Q. 考えに賛同してくれる企業の特徴などはありますか?既に外国人を雇用している企業に話をしてみたところ、一概に企業の大小や、業種、経営状況などの決まった傾向は見られず、むしろオーナーの考え方、企業体質によるところが非常に大きいということが分かってきました。我々は賛同をしたいと手を上げてくれる企業に対しても、必ず実際に訪問し、雇用主や外国人労働者の声を聞いた上で、事業全体の説明をし、それに賛同してくれる企業のみ加盟を認めています。最近分かってきたのは、加盟企業の方々から「加盟することでデメリットってないよね。」という声をいただき、加盟した企業の正当性が対外的にもより際立って見える状況だということです。Q. 事業の一つである外国人相談窓口について教えてください。2019年度から開設しており、現在、市役所や役場内の外国人がよく訪れる窓口に、多言語でのチラシを設置し告知をしています。相談内容は生活に関わることから仕事に関することなど多岐に渡り、毎月20件程度問合せがあります。その中で労働問題に関することは、年間50件程度で2番目に多いです。労働問題は、一筋縄ではいかないことも多く、弁護士会とも相談したりと長期化したりすることもありますが、我々としては、雇用主、外国人労働者双方の話を聞き、一緒に解決の糸口を探りましょう、というスタンスで対応しています。Q. 会員間の新たな人脈づくりなどについて考えていることはありますか?新規団体の紹介やニュースレターの配信、求人情報提供依頼など行い、会員専用HPに掲載を行っています。SNSでの交流なども今後は検討したいと考えています。Q. 外国人労働者との相互理解や信頼関係を醸成する「リーガル・ライフサポーター養成講座」について教えてください。相談窓口を開設している中で、職員だけでは言語対応の限界があるため、外部支援を募る目的で始めました。これまで2回開催しましたが、毎回50名程度に講座を受けていただき、修了試験に合格した方のみ認定しています。試験に合格する方は毎回10名以下程度で、合格者はレベルが高い方が多く、法廷通訳も出来るような方もいらっしゃいます。リーガル・ライフサポーター養成講座詳細Q. 多文化共生推進アライアンス認証制度を運用している中での苦労と気づきを教えてください。毎回新しい企業に直接お伺いし、事業の説明をしていますが、企業の担当者の方に話をさせていたくと、肯定的な反応を示していただき、すぐにでも加入してくれそうな様子で、「すぐ社内で検討します。」と言っていただけるのですが、その後、しばらくしても連絡がなく、こちらからお伺いすると、「今回は見送りたい。」との回答があったりと、心が折れそうなことも多々あります。しかし、沖縄県内の多くの企業が、同じ方向性を向いて進んでいけるよう、根気良く続けていきたいと考えています。Q. JP-MIRAIおよびJP-MIRAI会員への期待をお聞かせください。元々、JP-MIRAIの活動を参考に、多文化共生推進パートナーシップ協定の締結に向けて取り組みを開始したため、我々と同じような考えの下、一つでも多くの県や地域の方々が、新しい取り組みを実施していこうと感じるような、魅力的な取り組みをこれからも展開していってほしいです。 <インタビューを終えて>根来様、葛様には、ウクライナの避難民受入れでも非常にお忙しい中、取材に応じていただきました。信念を貫きながら、事業の立上げから周囲への理解・浸透に尽力し、常に前向きに活動をされている様子を伺うことが出来ました。この場を借りて感謝申し上げます。JP-MIRAIとしても、引き続き多くの自治体の皆様のモデルとなるような活動を目指してまいります。...

本企画では、会員各位の外国人受入れ事例を紹介しています。第13回でご紹介するのは、帝人フロンティア株式会社です。同社は企業会員としてJP-MIRAIに参加されている帝人株式会社のグループ会社で、2021年度上半期活動報告会での発表で会員相互の投票にて優秀賞にも選ばれています。 帝人フロンティア株式会社のウェブサイトはこちらをご覧下さい。11月中旬に、JP-MIRAI事務局によりオンラインインタビューを実施しました。 <取材に応じて頂いた帝人フロンティア株式会社の塚本さん>Q. 帝人フロンティア株式会社のプロフィールを教えてください。帝人フロンティア株式会社(以下帝人フロンティア)は2012年にNI帝人商事(株)が帝人ファイバー(株)のアパレル事業を統合して設立され、株式は帝人(株)が100%保有しています。一見新しい会社ですがその歴史は古く、創業は1869年の竹村半兵衛商店大阪支店開業まで遡ります。参考:会社沿革帝人フロンティアの企業理念は「私たちは新たな価値を創造し、美しい環境と豊かな未来に貢献します」、コーポレートメッセージは「暮らしは、せんいで進化する」を掲げており、繊維によって環境問題など様々な社会問題を解決していくことを目指しています。帝人フロンティアは「メーカー」と「商社」という2つの異なるDNAが融合したハイブリッドカンパニーですが、商社としてのコンバーティング力と、繊維の素材開発から製品生産までの技術力を融合させ、衣料繊維、産業資材など幅広い市場で、新しいビジネスを生み出していくことを強みにしています。Q. 帝人フロンティア株式会社のJP-MIRAI入会の経緯について教えてください。前共同事務局のASSCさんからJP-MIRAIの紹介があり、入会しました。Q:JP-MIRAIでは、会員企業・団体に、「責任ある外国人受入れのための5つの行動原則」を実践して頂くよう呼び掛けています。本行動原則に関連する取り組みを教えてください。行動原則1「私たちは、外国人労働者の受入れに当たり、関係法令を遵守します。」および行動原則2「私たちは、外国人労働者の人権を尊重し労働環境・生活環境を把握し、課題の解決に努めます。」の実践をしています。昨年12月6日の「JP-MIRAI公開フォーラム」では、この行動原則実践の取り組みについて発表させて頂きました。昨年12月6日の「JP-MIRAI公開フォーラム」における帝人フロンティアの発表内容(5:15から塚本さんの発表内容がご覧いただけます。)具体的には、国内外の帝人フロンティア製品を製造している拠点や工場において労働者に対する法令違反や人権侵害が行われていないかを調査し、問題があれば改善していくCSR(Corporate Social Responsibility)アンケート及び監査を行っています。CSRアンケートは、2021年は当社の調達先国内354社、海外154社から回答を受領しました。2022年は上半期に海外330社強にアンケートを発信し、現状での回答は100社ほどです。このCSRアンケートにおける調査項目は103に上ります。今年は労働時間を記録していないというところが数社ありました。また、避難訓練、健康診断を行っていないところも数社ありました。いずれに対しても改善要望を出しています。国内の調達先に対するCSRアンケートは現在準備中で、12月中に発信し、来年1月にとりまとめ、来年3月までにフォロー完了予定です。CSR監査については、国内では2021年は3社に実施、2022年は今のところ3社に実施予定です。例年10社を候補に挙げていますが、コロナの影響もあり、ここ数年は実施先が少なくなっています。海外についてはオンラインにて監査実施しています。2021年は13社実施、2022年は1社実施しました。毎年10数社を候補に挙げていますが、海外はオンラインでの監査実施のため、コロナの影響を受ける国内に比べると監査を受けてもらいやすいと言えます。中国は現地で直接訪問し実地監査を行っておりますが、こちらはコロナによる行動制限もあり、なかなか実地調査ができていないというのが現状です。監査で問題点が見つかった場合は、改善依頼計画書を作成し提出してもらいます。よく見られる問題点としては、緊急連絡先として工場担当者の連絡先はあっても110番や119番の連絡方法がないなど、緊急時の連絡先の整備が不十分な場合が多いです。Q: CSRアンケートや監査を行っていく中での課題はありますか?CSRアンケートについては、回収率がなかなか上がらないという課題があります。最近の回収率は30%強くらいです。営業を通じてのプッシュなども行っての現在の回収率なので、原因について社内で議論中です。まさにこれから取り組んでいこうとしているところです。CSR監査については、なかなか実地監査を受けてもらえないという課題があります。取引先が煩雑な仕事を避けたいので、コロナを理由に引き延ばしているようにも見えます。営業を通じてコツコツ連絡を取りながら、時には品質監査の方が調達先にも受けてもらいやすいので、品質の監査と合同でやるなどの工夫をしています。Q: 次に、技能実習生のサポートを行う監理団体との取引について伺います。塚本さんの昨年12月6日の発表によると、帝人フロンティアは現在信頼のおける監理団体に一元化して技能実習生のサポートを依頼しているとのことですが、その経緯と効果について教えて頂けないでしょうか。現在技能実習生を採用しているのは帝人フロンティア本体ではなく、当社のグループ会社です。現状、技能実習生を採用しているのはそのうちの2社になります。技能実習生をめぐっては、20年前の採用当初はいろいろな問題がありました。特に大きかったのが、せっかく採用した技能実習生が失踪してしまうという問題です。この問題を解決していくうえで課題だとわかってきたのが、ほとんどの実習生はお金を稼ぐために来日しており、その過程で現地で高額な手数料を送り出し機関に払っており、そのために借金し、その後来日してから賃金が思ったより低く、来日中は借金返済に精いっぱいで、さらに悪質なブローカーがより高額な賃金を提示することで失踪が生じ、そこで受入れ企業が実習生のパスポートを没収する、という悪循環だったのです。この悪循環解決のためには、根本的な問題である、技能実習生が来日前に払っている高額な手数料の問題を解決することでした。この課題解決のために監理団体と話し合いを進めていく中で、私たちの課題認識と理念に共鳴してくれた監理団体を発見しました。彼らは、私たちが課題解決のために実現しなければいけないと考えていた、技能実習生の来日前に支払う手数料をゼロにするという理念(ゼロフィー)にも共感してくれたので、2019年度からこの監理団体に技能実習生のサポートを一元化することにしました。そしてここから、ゼロフィーの取り組みを始めたのです。Q: 御社のゼロフィーの取り組みについて教えて頂けますか?最初はミャンマーの実習生につき法律で定められた手数料2800ドルを、受入企業が本人の来日後に本人に返還するという対応を取っていました。現在は、受入企業が直接送り出し機関に対して手数料を全額支払っています。受入企業としても、人手不足の中で技能実習生の獲得には真剣であり、その中でやむを得ない費用として受入れてもらっているのです。従って現在、技能実習生の手数料負担は一切生じていません。そして、失踪問題もゼロフィー採用後一切起こっていないのです。Q. ゼロフィーの取り組みの今後の課題について教えてください。当社が実践している今のゼロフィーの対応は、本来あるべき姿だと思っていますが、現在達成できているのは自社グループだけです。今後、自社グループ以外のサプライヤーにも広げていきたいですし、この流れを当社と取引のないところにも広げていくことが大事だと思っています。Q. その他、外国人技能実習生の責任ある受入れに向けた取り組みを教えてくださいCSR調達を他社に先駆けて取り組んできた中で、CSR調達基準書を現在作成し、調達先に配布しています。毎年配布する部数は4500部です。ここに至るまで、基準書の体系化、送付、さらに取引先にこの基準について理解してもらうまで、様々な経緯がありました。昨年基準書の一部改訂を行い、環境に配慮して電子版の発行を行い、多言語化も行っています。当社主催のセミナー等で調達先にCSR調達基準を訴えかけています。Q. JP-MIRAIへの期待を教えてください。経産省もガイドラインを出してはいますが、民間企業としても「どうすればいいのか」がピンと来ない面があります。民間企業としてこうしていくべきだ、という指標を、JP-MIRAIが先頭となって作っていくことを期待します。 <インタビューを終えて>塚本さんには、お忙しい中このJP-MIRAIの取材のために長い時間を割いていただきました。技能実習生の待遇をめぐっては様々な報道がありますが、ここまではっきりと技能実習生の手数料問題の解決を通じた技能実習生の待遇改善に取り組んでいる日本の企業があることを、もっと多くの皆さんに知ってもらいたいと思いました。この場を借りて感謝申し上げますと同時に、JP-MIRAIとしても当ご意見を今後の活動にしっかりと活かしていきたいと思います。...