第10回:株式会社ジェイサット

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本企画では、会員各位の外国人労働者受け入れ事例を紹介しています。
第10回でご紹介するのは、株式会社ジェイサットです。株式会社ジェイサットは企業会員としてJP-MIRAIに参加され、2021年度上半期活動報告会ではご発表もいただきました。
株式会社ジェイサットのウェブサイトは右記をご覧下さい。https://www.j-sat.jp/
1月上旬に、JP-MIRAI事務局によりオンラインインタビューを実施しました。株式会社ジェイサットからはミャンマー、日本双方の事務所よりインタビューにご参加頂きました。

<株式会社ジェイサット ゼネラルマネージャー 森川晃さん>

Q:株式会社ジェイサットについて教えてください。

株式会社ジェイサットは1998年に設立されました。もともと日本企業のミャンマー進出支援から始まった会社ですが、ミャンマーに進出した企業が現地で経験豊富な人材を確保することに悩んでいたため、クライアント企業のサポートのためにミャンマー人の人材紹介事業も始めたのです。今では当社はミャンマー進出日系企業の8割に利用頂いており、毎年は5000人以上の人材を日系企業に紹介させて頂いています。日系企業向けミャンマー人材紹介会社では最大手の会社になります。
ミャンマー人材を日本企業本社に送り出しする事業を始めたきっかけは、ミャンマーに進出するクライアント企業から「日本でミャンマー人材を教育し、その後ミャンマーの支社に送り込みたい」というニーズを頂いたのでそれに答えたものです。既存の外国人労働者の送り出し機関を模倣したものではないので、当社の取り組みにはユニークな部分が多くあると思います。
実際、当社はミャンマーにベースを置く会社として、従来の技能実習だと帰国した後ミャンマーで活躍できる能力が身についていないことに違和感を抱いていました。当社から、日本企業の新しいミャンマー人採用モデルを作れればと思っています。

Q:JP-MIRAIでは、会員企業・団体に、「責任ある外国人受け入れのための5つの行動原則」(https://jp-mirai.org/jp/code-of-conduct/)を実践して頂くよう呼び掛けています。下記の行動原則に関連する取り組みを教えてください。

行動原則3「私たちは、働く場と生活の場の両方で、外国人労働者との相互理解を深め、信頼関係を醸成します。」の実践をしています。具体的には下記のとおりです。
日本企業で働きたがるミャンマー人材は多いです。しかし、実は「日本企業の考える当たり前」と「外国人労働者(当社の場合はミャンマー人材)の考える当たり前」には大きなズレがあります。

この「ズレ」を放置したままでは外国人材が日本企業で安心して働くことはできず多くの問題が生まれてきます。当社では、この「ズレ」を解消しミャンマー人材が長く安心して日本企業で働いてもらえるようにいくつかの「モデル」を作っています。
まず、「キャリア達成シート」を企業に作ってもらいます。下記は一例です。

上記は介護の技能実習生のキャリア達成シートの一例です。大事なことは、外国人材に何を求めるのかを企業に明確にしてもらうことなのです。往々にして技能の技術面を磨けばいいという外国人材の思いに対し、日本企業は身だしなみや時間管理などを求めることが多く、そこにズレが生じます。企業がキャリア達成シートを用意し、外国人材と目標をすり合わせることでズレが解消されるのです。
こういったキャリア達成シートを自社で用意している企業もありますが多くの中小企業は自分では用意していません。そのため当社が企業と一緒に外国人材のためのキャリア達成シートを作成していきます。
更に、企業に必ず作成をお願いするのが「キャリアパス」です。

上記も介護の技能実習生のキャリアパスの一例になります。日本で初めて働く外国人材には「キャリア」のイメージがわかない人が多いのです。そういう人材たちに、日本で働いていく中でのキャリアのイメージを作ってあげるのが目的です。
現状技能実習の期間は最長5年です。この期間を終え特定技能の在留資格を持って外国人材が更にキャリアを重ねていくときに、転職してしまう危険もあります。それを防ぐためにも、技能実習の受け入れ先の企業が、外国人材が特定技能の在留資格へと変更した後のキャリアを最初から提示する必要があるのです。
往々にして短期的視点の外国人材と長期的視点の受け入れ企業との間には視点のミスマッチが起きます。これを是正するため、当社は受け入れ企業と一緒になってキャリア達成シート、キャリアパスを作り、企業の外国人材に対する説明会の際には必ず提示してもらうようにしているのです。
外国人材が企業に内定した後も、企業に1カ月に1度の面談をしてもらっています。みなし残業などの規定がある場合はそれもすべて事前に説明してもらっています。

実は日本企業の課題として、日本人社員も若い人が辞めています。外国人材日本人材関係なく、人材に選んでもらう企業になるためには企業が社員のキャリアパスを明確に提示できることが必要なのだとも思います。
上記のキャリアパスをお願いした時、実は企業によって対応が違ってきます。

①すぐ作る(日本人用にある)企業
②ないけど今から作る企業
③「そんなの必要ない」という企業

上記のうち③のような会社では、外国人材が本当にやめていくのです。もちろんキャリアパスを作ったからと言って人材の退職が100%なくなるわけではありませんが、外国人材から選ばれる会社や組織造りのためにも、上記のような取り組みを通じて、外国人材から選ばれる会社と外国人材採用に関するモデルを作っていきたいと思っています。
また、行動原則4「私たちは、日本及び国際社会の発展と安定に貢献するため、外国人労働者の能力開発に尽力します」の実践もしています。具体的には以下の通りです。
当社ではヤンゴンにて日本語学校「J-SAT ACADEMY」を運営しています。

<J-SAT ACADEMYの生徒たち>

J-SAT ACADEMYでは、ミャンマー人材に「10ヶ月で日本語をマスターしてもらう」ことができる教育を行っています。テレビにも取材してもらいました。下記の動画をご覧下さい。

日本語をちょっとだけ勉強して日本に行く技能実習生がいますが、それでは日本でコミュニケーションの壁にぶつかり技能実習の目的が達成できません。実習期間が終わってミャンマーに帰国しても日本企業への就職も難しいし、また日本に行って稼ぐかということになります。これでは技能実習制度の目的が果たされません。ですから、当社では外国人材が日本で働く前の日本語教育に非常に力を入れているのです。

Q: 日本の「外国人材受入企業」に今後求められていくことは何だと考えますか?

日本企業の「思い」だけを一方的にミャンマー人に押し付けてもうまくいかないです。きちんと通訳を通じてミャンマー人に思いを伝えつつ、ミャンマー人の思いも企業に伝え、彼らの気持ちを聞いて企業が「変わって」いかないといけないのです。企業が採用したミャンマー人をリーダーにしていき、彼らと一緒になって今後いろいろなことを改善していく。そういったミャンマー人リーダーが出てきたとき、企業は次の外国人材採用で経験を活かすことができ、いいミャンマー人材の循環ができてくると思います。
外国人材からホンネを聞き出すのは難しいです。当社では外国人材の育成期間中にメンターをアサインし、日本で就職した後もコミュニケーションを取り続けます。何かあった時には悩みを相談してもらい、その悩みをジェイサット日本事務所が共有して企業に伝えることにしています、1か月に1回、日本側の悩みもジェイサットヤンゴン事務所に共有しており、常に社内でもコミュニケーションをとりながら進めています。
ミャンマー人材の受入企業には、彼らの来日前に受け入れ企業に必要リスト(生活準備リスト)を作成してもらっています。

<来日準備リストの一例> 

来日前にすべて企業に明らかにしてもらい、ミャンマー人材に伝えています。

Q. この1年間のミャンマー政変の中での貴社の体験、変化、その中で感じるミャンマー人材への想いを聞かせてください

この政変は今後3-5年続くと思います。一番深刻なのはミャンマー人の教育です。日本をミャンマー人の避難と教育の場にしてほしいと思います。この状態が今後ずっと続くわけではないのでやがてミャンマーが再度成長カーブを描いたときにミャンマー人の教育に空白を作ってはいけないと思っており、日本企業にはミャンマー人材に将来につながる技術を教えてほしいと思っています。そして、ミャンマー人材にはそのための日本語の素養を得てもらうことが必要だと思っています。今後も日本とミャンマーがお互いを利用してほしいと思います。

Q:JP-MIRAIおよびJP-MIRAI会員に期待していること、貢献できることなどございましたら、教えて下さい

私たちが作った、日本企業が外国人材を受け入れるにあたってのモデルケースを、信用力のある所を通じて拡散していくことが必要だと思っています。皆さんにまねして頂くことによって、日本が外国人をよりよく受け入れることに貢献していきたいと思っています。それによって外国人に「日本に来てよかった」と思ってもらいたい、それが当社の願いです。

<インタビューを終えて>

株式会社ジェイサットの皆様には、お忙しい中長い時間をこのJP-MIRAIの取材のために割いていただきました。この場を借りて感謝申し上げますと同時に、JP-MIRAIとしても皆様の意見をきちんと今後の活動に活かしていきたいと思います。

一覧

本企画では、会員各位の外国人受け入れ事例を紹介しています。 第9回でご紹介するのは、個人会員の大場孝弘さんです。京都にほんごRingsに所属する大場孝弘さんは個人会員としてJP-MIRAIに参加され、2021年度上半期活動報告会での発表で会員相互の投票にて優秀賞にも選ばれています。 https://jp-mirai.org/jp/2021/7375/ 大場さんの活動報告については右記のページの動画でも見ることができます。 https://jp-mirai.org/jp/2021/7660/ (「優良活動報告」の動画) 京都にほんごRingsのウェブサイトは右記をご覧下さい。https://www.kyo-rings.net/ 12月中旬に、JP-MIRAI事務局によりオンラインインタビューを実施しました。 <大場孝弘さん> Q:京都にほんごRingsの概要を教えてください。 京都にほんごRings(以下、Rings)は、京都府内で日本語教室を開いているボランティア団体のネットワーク型の組織で、2002年に結成されました。Ringsの主な活動は、地域の多文化共生を進め、情報共有・連絡調整を行うことです。3か月に1回会議と年1回の総会を行い、その時々のニーズに沿って、日本語の学習に関する技術の向上を目指しグループを作ったり、京都府の南北の違いなどの地域特性も踏まえ他教室の参考情報を提供したりしています。 日本語教室の対象や目的は団体や支援者により異なりますが、現在は教室を運営する23の団体と個人が加盟し、全員がボランティアで活動しています。2020年度の推定値では、約700人の支援者が延べ2万人の学習者に日本語の学習機会を提供しました。 公益財団法人京都府国際センターと協力し、今まで教室がなかった空白市町村での教室設置を目指して、新規教室の立ち上げ支援や日本語教師の養成講座に取り組んできました。2016年は18教室でしたが、その後、教室、支援者、学習者ともに増加しています。昨年は、新型コロナウイルスの影響で、以前から運営している教室関係者からは、「学習者・支援者とも減少している」と報告がありましたが、新規教室の増加によって全体的に増加傾向にあります。 <京都にほんごRings 教室データ 2018年度版> Ringsに加盟している団体・人は日本語を教えている方がほとんどですが、私自身はボランタリーな活動が目的を果たすための運営面をサポートしています。日本語教育以外の地域の特性や、多文化共生における課題を考えてもらう機会を提供する研修会の企画、自分の教室ではできないが会員から要望としてあがってくる取り組み(特に子どもに関わる活動)などのプロジェクトを進めてきました。 ここ2年間は新型コロナウイルスの拡大の影響で、私自身はオンラインツールの活用サポートが大きな役割となっています。 Q:加盟している日本語教室について教えてください。 歴史の長い教室では、国際交流の一貫として開いた教室や、英語などの媒介語を使った日本語学習をしていた教室もあります。日本語を使って日本語を教えるという、日本語教師の資格を持つ人を中心に開かれた教室もあります。 国際結婚や帰国者などを対象にした教室では、日本語学習とレクリエーションの機会の提供、暮らしの相談を行っているところもあります。最近は、学習者のほとんどが技能実習生という教室もあり、そこでは日本語能力検定対策のニーズが高くなっています。 教室の成り立ちによって支援者の参加動機や関心も異なり、日本語教育の手法に関心を持つメンバーは全体的に多いものの、技能実習生の増加に伴って、生活上の疑問や困りごとを聞くことに関心を持つ支援者が多い教室も生まれています。 Q:JP-MIRAIでは、会員企業・団体に、「責任ある外国人受け入れのための5つの行動原則」(https://jp-mirai.org/jp/code-of-conduct/)を実践して頂くよう呼び掛けています。下記の行動原則に関連する取り組みを教えてください。 ①各団体への支援・情報提供 2020年のコロナ禍により、それまで行っていた公共施設を利用しての対面での教室は実施できなくなりました。そこでRingsは、各教室へのオンライン会議支援、学習機会の提供、オンラインイベントを開催し、支援を行いました。 RingsでZoomの有料契約を行い、Zoom操作の基礎やホスト運営の勉強会を開き、関心を持つ個人を集めて「Zoom活用グループ」を作り、勉強会や、運営体験を交代で行う体験会、その他のオンラインツールの利用法等の勉強会を開いてきました。また、個別に受けた相談に関して、同じような関心を持つ方を集めたオープン相談会も開いています。 支援者の中にはオンラインに抵抗を持つ方も少なくないため、オンラインでの交流会を開き、オンラインツールの抵抗を減らす取り組みをしてきました。Zoomのブレイクアウト機能を使った9時間のオンラインの交流イベントを実施し、日本語を学ぶ部屋、運営を話し合う部屋などの他に、支援メンバーが趣味を披露する部屋など多様な部屋を開いて、参加者が自由に出入りする催しとなりました。 オンラインでの日本語教育の研修のほか、個人で参加できる日本語教育について学びあう機会を設けたり、京都府内のコロナウイルス関連情報を定期的にMLで流したりしています。 現在、Ringsのウェブサイトでは、ワクチン接種会場で困らないように、ワクチン接種会場における会話スクリプトを作成し、各教室で活用できるようホームページにて公開しています。(https://www.kyo-rings.net/link20/211006/) ②Ringsの取り組みによる各教室や支援者の状況の変化 コロナ禍により完全に活動を停止していた教室もありましたが、個人的な努力でオンライン学習を続けた教室や、オンライン学習に取り組み始める教室も生まれました。オンラインツールに抵抗を示す支援者の理解を得るために、Ringsの研修やイベントを活用された教室もありました。一番大きな変化は、交流会に参加した支援者たちに、これまでは対面でないと開催できないと考えていたパーティーや交流会が工夫をすればオンラインで実施できると感じていただけたことでした。現在は、年始の交流イベントの準備をグループのメンバーとも相談しながら進めています。 特に郊外の市町村では、1か所の教室で、広範囲をカバーすることは難しかったのですが、対応できる見通しが立ってきました。より多様なサポートが可能だと考える支援者が増えてきたことが大きな成果だと感じています。 ③Ringsの取り組みによる学習者の状況の変化 オンラインの活用によって、これまで時間的・距離的な問題で参加できなかった学習者の参加が増えたことは大きな変化だと感じています。教室までの移動の負担がなくなったことで、参加のハードルが低くなったという意見も出ています。 双方が運営に慣れていない場合も多いですが、慣れてくると、日本語の学習だけでなく会話の頻度も増えてきて、学習者としてだけでなく生活者としての面に関心を持つ支援者も生まれていると聞いています。 一方で、特に、技能実習生は、会社からWiFiの環境を提供されていない、学習するスペースがないなど、学習者の通信環境・学習環境が整っていない問題も散見されています。 Q:今後の活動の展望を教えてください これまでの学習者は国際結婚や帰国などで地域の中で日常的に生活をしている人たちでしたが、この5年で、支援者も不足するほど技能実習生が急激に増加してきました。一方で、国際交流から始まった日本語教室も多く、日本語を教えることにやりがいを感じているものの、技能実習生特有の深刻な問題など、当事者の課題に踏み込むことに躊躇されている支援者も多くいらっしゃいます。 これまで、個人的に解決しようにも制度がわからず対応に苦労し、辞めてしまうボランティアもいたため、日本語教育以外は行わない教室もありました。 現在では、外国人技能実習生の課題に関心のある教室運営者も増えてきているため、個人の日常生活のお悩みや課題解決について関心のある教室も増えてきています。 今までもRingsの支援者とは「地域の日本語教室は他の行政サービスでは把握できない外国ルーツの人に出会える場所」であるということを話してきました。 親密度や信頼度が増せば、学習者が困っていることを話すようになることも当然考えられます。教え-教えられるという関係でなく、支援者が学習者に対して、地域に一緒に暮らす人として関心を持ち、接していくことにより、そのような機会が増えてくると感じています。 支援者は問題を一人で解決するのではなく、行政機関やNPO、企業などへの橋渡し役を担うことができるのではないかと思っています。 外国にルーツがある人の現状を知ってもらうことができるような情報提供も続けていきたいと考えています。 Q:JP-MIRAIおよびJP-MIRAI会員に期待していること、貢献できることなどございましたら、教えて下さい 多様な立場の方の経験を伺うことができ、Ringsの運営を考えるにあたってとても役立っていると感じています。それぞれの立場により、どのようなことで困るのか、またどのようなことが得意なのかなどがわかると、お互いに協力できることが増えていくと思います。 課題別に問題改善のチームなどを作り、具体的な改善事例が生まれるとより参考にしやすくなるのではと思います。 <インタビューを終えて> 大場様には、お忙しい中長い時間をこのJP-MIRAIの取材のために割いていただきました。この場を借りて感謝申し上げますと同時に、JP-MIRAIとしても皆様の意見をきちんと今後の活動に活かしていきたいと思います。 <取材執筆協力 株式会社クレアン 秋山映美・原田宏美>...

本企画では、会員各位の外国人労働者受け入れ事例を紹介しています。 第8回でご紹介するのは、NPO法人トゥマンハティふくおかです。トゥマンハティふくおかは会員としてJP-MIRAIに参加され、2021年度上半期活動報告会ではご発表もいただきました。 トゥマンハティふくおかのウェブサイトは右記をご覧下さい。https://temanhati.jimdofree.com/ 11月下旬に、JP-MIRAI事務局によりオンラインインタビューを実施しました。 <代表理事 弥栄睦子さん> <トゥマンハティふくおかの皆様> Q:NPO法人トゥマンハティふくおかを設立した経緯について教えてください。 1997 年度留学生から学ぶ外国語「インドネシア語初級クラス」を受講したメンバーで、翌年インドネシア語学習サークルを設立しました。そこからインドネシア留学生や研修生と友達づきあいが始まり、現NPOの理事はこのメンバーが中心となっています。 1997年に起こったアジア通貨危機の影響により、インドネシアの通貨「ルピア」が暴落したことで、インドネシアでは経済的な理由から学校に通えない子どもたちが急増してしまいました。それを知った九州大学のインドネシア人留学生たちが、自分のお小遣いからインドネシア現地の子どもたちに支援を始めました。2002年には、留学生側から、チャリティ・イベントを開催したいので手伝ってほしいと頼まれ、『第1回インドネシア・チャリティ・デー』で、その活動をお手伝いするようになったことが団体設立のきっかけです。 2003年7月には、任意団体「インドネシアの子供の教育を救う会」を設立し、ほぼ毎年留学生と一緒にチャリティ・イベントを開催し、経済的理由などで通学を続けられない小・中学生へ奨学金を届けてきました。EPA(Economic Partnership Agreement=経済連携協定)で看護師、介護福祉士の方々が日本に来たり、技能実習生や大学の私費留学が増えたり、国内でもサポートをしなくてはならない人が増えてきたことから、2014年9月に名称を「NPO 法 人トゥマンハティふくおか」とし、特定非営利活動法人化しました。 Q:トゥマンハティふくおかの主な活動内容について教えてください。 トゥマンハティ(Teman Hati)とは、インドネシア語で『心の友』という意味です。日本に住んでいても、インドネシアに住んでいても、居住している国に関わらず、同じ権利を持って暮らせる社会にしたいという思いで名付けました。活動は国際交流、国際協力、多文化共生の三本柱で行っています。インドネシアの子供の教育支援に加え、福岡の国際化推進など、さまざまな活動を通して、地球市民ひとりひとりが「Teman Hati (心の友)」として安心して暮らせる真のユニバーサル社会実現を目指しています。 Q:外国人労働者支援の取り組みを教えてください 【職業性ストレス簡易調査票(57項目)多言語化事業】 EPAで来日していた看護師候補者と出会った際に、滞在期間中に国家試験に通らないといけないというストレスと、母国の家族に仕送りをしないといけないため身体的にも精神的にもいつも疲れていたように見えました。また、企業の受け入れ環境が整っていないことによるインドネシア人技能実習生のトラブルを実際耳にしており、メンタル面でもサポートが必要と感じていました。 国内で働くEPA看護師・介護福祉士候補者や技能実習生のため、簡易性ストレスチェック57項目を7か国語(カンボジア語、フィリピノ語、ミャンマー語、ベンガル語、タイ語、ネパール語、インドネシア語)に翻訳し、Webサイトにて無料で提供しています。 参照:https://stress-check-multilingual.jimdofree.com/ 2020年5月13日~2021年10月22日までの期間で、ページビューは3,635回(うちインドネシア語213、タイ語131、ミャンマー語115)でした。任意でご報告いただいたダウンロード件数は23件です。 検査後には、結果シートの翻訳、産業カウンセラーによる個別面談も受け付けています。 【インドネシア人人財サポート】 インドネシアに特化した強みを生かし、受け入れ準備から滞在期間中、帰国時まで、インドネシア人人財をさまざまな角度からサポートしています。 地域に暮らす外国人と住民が交わるきっかけが持てないことで、さまざまな問題が発生しているケースも見受けられます。まずお互いが文化や言葉について知識を持つことで仲良くなることができれば、就労トラブルなどのさまざまな問題を未然に防げるという考えの元、非営利団体という立場で支援を続けることが大切であると考えています。 多文化共生セミナーやワークショップの開催(受け入れ前の事前学習) 翻訳・通訳(ジャカルタ在住のメンバー) 日本語学習の機会の提供(日本語教師・日本語ボランティアの派遣) 【外国人と仲良く暮らすための多文化共生ワークショップ】 地域の方や同じ職場で働く方に、もっと外国人への理解を深めてもらう目的で、多文化共生についてのワークショップを実施しました。 <ワークショップのプログラム> 1. カードゲームを一緒に楽しんで、インドネシア人と仲良くなろう 講師:dopang株式会社(言語屋)代表 Tania Mirella氏) 2. やさしい日本語のコツを学んで、伝わる自己紹介をしてみよう 講師:「入門・やさしい日本語」認定講師 自見佳珠子氏 3. 「多文化共生ってなんだろう?」~事例を通じてみんなで考えるワークショップ 講師:JICAデスク福岡 国際協力推進員 鬼丸武士氏 4. インドネシアの基礎知識/プレゼンテーション 今回はインドネシア編として実験的にワークショップを実施しましたが、他の国でもアレンジできるプログラムにしたつもりです。今後バージョンアップを重ねて多方面に展開したいと考えています。特に、企業−従業員間のトラブルを未然に防ぐために、外国人材を受け入れている企業にもこのようなワークショップが有用ではないかと考えています。 【特定技能人材候補者との日本語交流会】 2020年度は新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の発令等により、予定していた事業が次々と中止となってしまいました。その一方で、オンライン会議の利点を生かして、現地とリアルタイムに結びつきコミュニケーションを取るという新たな支援の可能性も見えてきました。 2021年3〜5月に3回にわたって、インドネシア、バリ州ジュンブラナ県ヌガラの認定送出機関で日本語を学ぶ特定技能人材候補者たち(参加者:インドネシア人14名、日本人11名)とオンラインで日本語交流会を行いました。日本側からは「日本の生活費の相場」「日本語上達のヒント」「日本で働くことの心構え」について話をしました(インドネシア語での通訳つき)。送出機関とタイアップしてこのような事前レクチャーをすることは大事だと感じています。 Q:JP-MIRAIでは、会員企業・団体に、「責任ある外国人受け入れのための5つの行動原則」(https://jp-mirai.org/jp/code-of-conduct/)を実践して頂くよう呼び掛けています。下記の行動原則のうち、(1)~(4)について、特に気を付けていることや具体的な取り組みがあれば教えてください。 (1)私たちは、外国人労働者の受入れに当たり、関係法令を遵守します。 (2)私たちは、外国人労働者の人権を尊重し労働環境・生活環境を把握し、課題の解決に努めます。 (3)私たちは、働く場と生活の場の両方で、外国人労働者との相互理解を深め、信頼関係を醸成します。 (4)私たちは、日本及び国際社会の発展と安定に貢献するため、外国人労働者の能力開発に尽力します。 (5)私たちは、プラットフォームの取り組みを日本国内及び世界に発信していきます。 (2)の外国人の人権尊重を意識しています。特に私たちは労働者に焦点を当てているのではないのですが、私たちのコミュニティの交流の中にインドネシアから日本に来て働いて生活している方々も含まれていると考えています。企業に積極的に提言をしていくような段階にはまだないと考えていますが、特定技能登録支援機関や企業と知り合いになるところから、まずは意見交換から始めていきたいと考えています。皆でお互いに知り合いながら仲良くなっていくことが自然な形ではないかと考えています。 Q:JP-MIRAIおよびJP-MIRAI会員に期待していること、貢献できることなどございましたら、教えて下さい 私たちは、元々インドネシア人からインドネシア語を習っていたメンバーで、インドネシアが好き、という気持ちから交流の延長で団体の活動を行っています。インドネシアに関わって20年という歴史があるため、インドネシアについては国民性や文化などの知識の蓄積があります。何でも聞いていただければと思いますし、インドネシア語の通訳や翻訳も可能です。 NPOとして外国人労働者の責任ある受け入れを考えたとき、NPOだからこそできることとは、行政や企業、外国人とのハブになることだと考えています。前述した多文化共生のワークショップもさまざまな所属の方をお招きしました。NPOというどこにも契約関係のない第三者的な立場だからこそ、外国人労働者の方、ステークホルダーの方へ隣人のように多文化共生の支援を提供できると思っています。 <インタビューを終えて> 弥栄様には、お忙しい中長い時間をこのJP-MIRAIの取材のために割いていただきました。友人関係の延長線上としての支援というご認識が、とても印象的なインタビューでした。この場を借りて感謝申し上げますと同時に、JP-MIRAIとしても皆様の意見をきちんと今後の活動に活かしていきたいと思います。 <取材執筆協力 株式会社クレアン 秋山映美・原田宏美>...

本企画では、会員各位の外国人労働者受け入れ事例を紹介しています。第7回は、アジア技術交流協同組合です。 アジア技術交流協同組合は「世界中の人や企業にチャンスを提供する」を理念として2008年に設立された監理団体で、インドネシア人を中心とした技能実習生の受入れを行っています。アジア技術交流協同組合の概要については右記ウェブサイトをご覧下さい。https://asea.jp/ 10月26日にJP-MIRAIが行ったJP-MIRAI会員の2021年上半期活動報告会で今年の取り組みについて報告いただきました。そして会員相互の投票により優秀賞に選ばれました。https://jp-mirai.org/jp/2021/7375/ そのアジア技術交流協同組合の事務所をJP-MIRAI事務局が訪問し、取り組みや想いを伺いました。 <インタビューに応じて頂いた アジア技術交流協同組合 左から小川さん、ナディアさん、代表理事の下茅さん> <アジア技術交流協同組合の皆さん> Q. アジア技術交流協同組合(ASEA)のプロフィール、他の監理団体と比べた特徴を教えてください アジア技術交流協同組合(以下ASEA)は2008年設立の監理団体です。設立メンバーがインドネシアとビジネスのつながりがあり、インドネシアに貢献したいという想いからこの団体が設立されました。代表の下茅はもともとグローバル企業に所属しており、仕事の中でインドネシアと関わる機会も多く、そんな中技能実習事業に関する依頼を受け、代表を引き受けることとなりました。 ASEAは技能実習生の受け入れをメインの事業としていますが、特にサポートに力を入れている団体です。東京本社にはインドネシア人スタッフが現在4名おり、皆日本語能力試験N1の資格を持っています。日本人スタッフも海外経験が豊富で、外国人への理解が深いスタッフが多く在籍しています。日本人と外国人双方のメンバーが上手くチームを組みながら技能実習生の受入れを行っています。 具体的には、実習生の受入れ企業に対して監理団体の担当は通常1人だと思いますが、ASEAでは日本人チームとインドネシア人チームのダブルチーム体制で対応しています。企業側、実習生側両方の悩みに応えるため、日本人(企業)の文化とインドネシア人(実習生)の文化の両方を理解できる体制が必要だと考えています。また、月1回以上はASEAの担当者が実習生へコンタクトを取って、状況を確認したり悩みを聞いたりして実習状況の把握に努めています。 ASEAの特徴の一つとしてインドネシア人実習生を中心に受入れを行っていることが挙げられます。彼らは全般に手先が器用で、真面目で素直だと多くの企業から高い評価のお声を聞きます。また、相手の気持ちを気遣うところなど日本人と似ている部分があると言われています。現在の組合員企業様が別の受入れ企業様を紹介して下さることによって、ASEAが関わるインドネシア人実習生の受入れが増加しています。 Q. JP-MIRAIの5つの行動原則(https://jp-mirai.org/jp/code-of-conduct/)の実践において特に重視していることを教えてください 以下の行動原則を特に重視して活動しています。 ●【行動原則3】私たちは、働く場と生活の場の両方で、外国人労働者との相互理解を深め、信頼関係を醸成します ・メンターの設置 社内における日本人と外国人の価値観の違いを認識しその課題を解決しようとしています。 具体的には、外国人スタッフを日本人スタッフがフォローし相談に乗っていく「メンター」を2020年の9月から配置しています。 メンターを設置する前から日本人スタッフは外国人スタッフの「相談役」として時々相談には応じ、その中で彼らの課題は見えていました。今までは日本人スタッフは一個人として悩みを聞いていたのですが、そこから組織としてシステムを作っていこうとなってメンター設置に至りました。 東京オフィスにはインドネシア人が4名いますが、彼らに対し日本人メンターを2名配置しています。メンターは外国人スタッフと月1回の面談を実施しマネージャーへ共有、マネージャーから他の日本人スタッフに外国人スタッフの課題と改善策を共有していく、という仕組みです。 外国人スタッフは「文化の壁を気にして自ら発信しない」ことも多く、「大丈夫?」と聞いても「大丈夫」としか言わないことも多いです。そこで立場が近い人間が彼らの意見を吸い上げることがポイントとなります。インドネシア人実習生にも共通することですが、「こちらから聞く」というスタンスが大事だと思っています。具体的に聞くことによって、外国人スタッフは答えやすくなるようです。 ・課題解決と今後の取り組み 例えば実際にあった外国人スタッフの悩みとして、集中してお祈りをする環境がないということがありました。(注:インドネシアはイスラム教徒が多く、1日5回のお祈りがあります。頻度はその方の宗教観によります。)それを受けASEAは、オフィスの中にお祈りコーナーを用意しました。また、車での移動中などでもお祈りが出来るよう配慮しました。お祈り中は外国人スタッフに話しかけたり触れたりしない、ということをASEA全体で周知して、安心してお祈りできる環境を作っています。 また、イスラム教の教えではアルコールは禁止されています。このため外国人スタッフがお酒を飲めないので社内の会合に参加しづらいということがありました。この問題もメンターが察知して日本人スタッフと検討し、外国人スタッフの為「ランチ会」を実施するようになりました。 今後のさらなる取り組みとしては、コロナが落ち着いてきたら、日本人スタッフと外国人スタッフのランチ会を再開し、更に親睦を深めていきたいと思っています。また、インドネシアにゆかりのないスタッフに対しても理解を深めてもらえるよう外国人スタッフによる語学文化講習の取り組みを再開したいと考えています。今後もメンターを活用し、外国人スタッフとの相互理解に努めていきます。 ●【行動原則4】私たちは、日本及び国際社会の発展と安定に貢献するため、外国人の能力開発に尽力します ・技能実習生へのキャリアサポート ASEAが受け入れている外国人にとって、技能実習生の時代が小中学校(土台)と考えると、特定技能に進むことは高校、大学のようなものと捉えることができます。彼らが技能実習満了後、母国へ帰るという選択もありますし、更に技能を磨くため特定技能の道へ進むことも出来ます。進路決定の際は、実習生本人の希望する進路にスムーズに移行できるよう、企業と協力しながらサポートをしています。 Q. 外国人の日本におけるキャリア観と現状の制度下での課題は何だと考えていますか。 技能実習生が3年で帰ってしまうのを残念に思う企業も多いです。熟練するにはもう少し時間が必要だと考える企業も多いからです。そのような企業からは、昨今議論されている、特定技能での在留期限を延ばすという話は歓迎されるかと思います。一方で外国人労働者(特定技能外国人)からすると、日本に長くいるためには整った生活環境も一定の給料も必要です。住居については現状外国人に対して貸し手が多くはないなどの問題が出てきます。さらに、特定技能2号に進む外国人労働者がどんどん増えることで、彼らの家族帯同による問題も出てくるかと思います。その時に、例えば日本語をまだ上手に話すことが出来ない帯同子女の教育について、責任をもって実施できる環境が日本ではまだ平均的には整っていないと言われています。私たち監理団体も今後は彼ら外国人労働者の家族の悩みや教育支援をすることが必要になってくるかもしれません。 Q. 外国人労働者を取り巻く環境に関するアジア技術交流協同組合の想いを教えてください。 私たちの組合は「世界中の人や企業にチャンスを提供する」という理念があります。インドネシアも国民の70%は中間層となりましたが、国民の30%は未だ貧困層です。この層に属する若者たちに引き続き日本に来るチャンスを提供していきたいと思っています。 また、日本国内でも地方の人口減少という問題がある中で、外国人の技能実習生が地域に入ることによって高齢の日本人労働者のモチベーションが上がるという効果も聞いています。 ぜひ海外の方に色々な地域に入って頂き、地方創生に役立ちたいと考えています。 Q. JP-MIRAIおよびJP-MIRAI会員への期待を教えてください。 JP-MIRAIのほかの会員企業のお話はとても勉強になります。もっと会員同士の交流の機会があればと思います。また、世界では国や宗教によって文化や考え方が異なります。それらを私たち日本人が学ぶことのできる専門家によるセミナー動画などがあれば是非活用していきたいと思います。 <インタビューを終えて> 下茅さん、小川さん、ナディアさんとも、お忙しい中長い時間をこのJP-MIRAIの取材のために割いていただきました。この場を借りて感謝申し上げますと同時に、JP-MIRAIとしても皆様の意見をきちんと今後の活動に活かしていきたいと思います。...