外国人や外国にルーツのある人たちが自分らしく過ごせる社会に向けて、日本の「現在地」はどこにあるのでしょうか。ことば、就学、就労、医療……。それぞれの“持ち場”で多文化共生実現のために動いているトップランナーたちにお話を聞きました。インタビュアーは、社会起業家として企業の外国人雇用を推進している中村拓海氏。この世界に飛び込んだ動機から、仕事への向き合い方、そこにあった喜びや挫折まで、率直な言葉で語っていただきました。多様な人が生きやすい社会をつくる人たちも実に多様。それぞれが自分らしいスタンスでその役割に向き合っています。多文化共生について知りたい人はもちろん、自分で動きたい人にもぜひ参考にしてほしい内容になっています。
「難民なんて日本にいないのでは」と思う人が大半だっただろう2016年に、難民のための就労支援を始めたのが、NPO法人WELgee代表理事の渡部カンコロンゴ清花さんです。難民を個の人間として捉え直し、パイオニア人材として企業に繋いできた渡部さん。報道番組などでもその熱い思いを発信している渡部さんに、これまでの活動を振り返るとともに、日本社会の難民への目線と、その変化の兆しについて話していただきました。
外国人にとってもっとも身近な法律職が行政書士ではないでしょうか。海外支援を行うNGOでの勤務経験から、結婚後に自分が住む地域に目線を移し、行政書士として活動しているのが、神奈川県川崎市の笠間由美子さんです。国際業務、在留資格・国籍手続業務を通して外国人に寄り添うやりがいや、そこで感じる日本社会の課題について話していただきました。
「外国にルーツのある子どもの支援」という言葉を社会に浸透させた立役者といえばNGO法人青少年自立援助センター定住外国人支援事業部責任者の田中宝紀さんです。いじめ、フィリピンへの単身留学、フリーター……。壮絶ともいえるそのライフストーリーを振り返るとともに、この分野の第一人者としてのこれまでの実践と自分の立ち位置の変化について、率直な言葉で語っていただきました。
日本が多文化共生社会に向かう上で問題になるのがことばの壁。そこで注目されているのが、日本語に不慣れな外国人にも理解しやすい「やさしい日本語」です。この動きを加速するためにも、難しい行政文書などをわかりやすい日本語に書き換えていこうと提言しているのが、聖心女子大学教授の岩田一成さんです。「やさしい日本語」が持つ可能性と、岩田さんが考える日本人にもやさしい日本語の必要性について、研究者ならではの多角的な視点で話してくださいました。
日本で暮らす外国人が増えていますが、彼らを受け入れる医療の体制は整っているといえるでしょうか。この問題に医療の専門家として向き合い続けているのが、神奈川県勤労者医療生活協同組合港町診療所の所長で内科医の沢田貴志さんです。開発途上国での活動に興味を持っていた沢田さんが、日本の外国人医療に目を向けるようになったのには、どんなきっかけがあったのでしょう。“地理オタク”だった少年時代から外国人医療に関わるまでのライフストーリーを明かしていただくとともに、この仕事のやりがいや、日本の外国人医療が抱える課題についても話していただきました。
少子高齢化による労働生産人口の減少や、経済のグローバル化により、外国人材の積極的な受け入れに舵を切る企業が増えています。そうした企業を法律家として支援しているのが、弁護士法人Global HR Strategyの杉田昌平さんです。在留資格手続きから税務、社会保険労務まで、横断的なリーガルサービスを行うことで、企業が安心して外国人を雇用できるように支援を行っています。杉田さんはどういうきっかけで、外国人雇用の業務に関わるようになったのでしょうか。この分野の弁護士業務のやりがいや将来性についても熱く語っていただきました。
多様な価値観が認められる居場所、そして社会を――。世界中の人が“一つ屋根の下”に暮らすことができる国際交流シェアハウスが増えています。その仕掛け人の一人がボーダレスハウス社長の李成一さん。社会起業家として、そして在日コリアンとして、今の日本社会をどう感じ、どう変えていきたいと考えているのでしょうか。ご自身のアイデンティやキャリアを振り返りながら、その思いを語っていただきました。
多文化共生というとNPOや地域日本語教室といった民間の活動をイメージしやすいですが、2019年の日本語教育推進法の制定もあり、行政も力を入れ始めています。自治体の職員として多文化共生に関わる人はどんな仕事をしているのでしょうか。佐賀県庁の多文化社会コーディネーターとして県の多文化共生施策をリードしてきた北御門織絵さんに話を伺いました。アメリカ留学中の衝撃的な“事件”や、専業主婦から今の仕事に就くまでの経緯についても話してくださっています。
多文化共生への取り組みが進む一方で、外国人労働者や在留資格のない外国人への差別や抑圧は今もなくなってはいません。そうした弱い立場におかれた外国人のために「弁護士バッジをつけた活動家」として闘い続けているのが、弁護士の指宿昭一さんです。2021年には米国国務省から「人身取引と闘うヒーロー」にも選ばれた指宿さんに、外国人支援に関わるようになった経緯や、その活動の軸となっている強い思いについてインタビューしました。