国際機関や国際NGOの日本人スタッフ、JETRO/アジア経済研究所、グローバルコンパクトネットワークジャパン(GCNJ)、JP-MIRAI等が連携し、9月15日~19日にバンコクで開催された「責任あるビジネスと人権フォーラム(アジア太平洋地域)2025」に合わせ、様々なサイドイベントを企画し日本企業の参加者の興味に応えながらビジネスと人権の理解と実践を促しました。
その1つとして、海外サプライチェーン上の移住労働者とサプライヤーについて知る「現地集合スタディツアー」を国際移住機関(国連IOM)タイ国事務所、イサラ研究所、JP-MIRAIの3団体共同で行いました。
午前中は国連IOMの会議室にて、ミャンマーからの移住労働者と支援NGOであるHRDFのスタッフから、人権侵害や労災事故の実例とその解決に苦心する生の声を聞き、午後は、イサラ研究所が提携する戦略パートナー企業のタイサプライヤーの主に欧米向け水産加工を行う工場(従業員の83%がミャンマー人)にて、 タイ人とミャンマー人が共に働き、共に福利厚生の充実に取り組み、常に良い従業員が集まり、定着し、企業もメリットを感じている様子を見学しました。

Photo: IOM/Shuzo Sato

Photo: イサラ研究所
日本の企業、監査法人、市民団体などからの18名の参加者からは、「前半と後半と対照的な内容で非常に勉強になった。」「タイの移住労働事情がよく分かった。」「実際に目で見るべきで、来年は本社の別の担当者にもぜひ参加させたい。」など高い満足度と多くの感想を頂きました。この記事の後半「参加者の声」をぜひご一読ください。
今後も、関係団体と連携し、日本企業と海外サプライチェーンのステークホルダーを繋げ、お互いの理解と協力を深める機会を設けていく予定です。
参加者の声
Q1: 9月15日開催バンコク現地集合スタディツアーについて全体的な感想をお聞かせください。
【サントリーホールディングス株式会社 サステナビリティ経営推進本部 中村 美佐 様】
スタディツアーでは、実際の移住労働者の方との対話、サプライヤー様訪問など、現地参加ならではのリアリティーのある貴重な体験をさせて頂きました。また参加者の皆様とのネットワーキングを通じ、自社の取り組みへの多くのヒントや気づきを得た有意義な機会となり、共催3団体をはじめ関係者の皆様に大変感謝しております。
【ソジョウ・カンパニー株式会社 砂道 康介 様】
フォーラムに先立っての開催であり、スタディツアーで得られた現場感を踏まえ、仮説をもちながら参加できたため、フォーラム自体がより有意義なものになりました。また、今回フォーラム自体初参加であったため、事前のブリーフィング含め皆さまにご丁寧に対応頂き、参加への安心感がもて、ありがたかったです。
Q2: 前半の移住労働者と支援NGOとの語り合いはいかがでしたか?
【サントリーHD中村様】
IOMのタイの労働状況の報告とNGOの支援状況も踏まえた上で、実際にタイに移住した外国人労働者の話を聴くことで、企業が取り組むべきポイントや意義がより明確になると感じました。自社のサプライチェーンでもサプライヤー様の労働者との対話の実現は難しいと思いますが、今回異業種とはいえ、『タイ人と同じように尊重して扱ってほしい』『日本企業には見学してよりよい福利厚生を提供するよう働きかけてほしい』といった移住労働者の生の声を直接聞けたことで、対話の重要性や現状への理解を深めることができました。
【ソジョウ・カンパニー 砂道様】
NGOが救済に関与する実例を、対面でお伺い出来たことが、一次情報として貴重でした。登壇頂いたNGOは移住者への救済に注力されており、陸続きで、隣国の社会情勢も不安定な中、ライツホルダーへの影響度が高い課題へ、段階的に対応している状況をお示し頂きました。また、移住労働者からは、入国の経緯や就労後の事案等、具体的にお話を頂き、実情への理解を深めることに繋がったと感じました。
Q3: 後半の現地サプライヤー訪問はいかがでしたか?
【サントリーHD中村様】
サプライヤー様の現場訪問ではイサラ研究所様とサプライヤー様との日常的な取り組みが様々なところで形になっており、結果、従業員の満足度向上につながっていると感じました。サプライチェーン上のリスク評価では、アンケート等のみで評価をすることもあると思いますが、実際の現場視察や労働者との対話を通じながら、問題の把握や事前防止策、是正策を検討することが必要で、それは必ずしもサプライヤー様のみにお任せをするのではなく、専門家とも協働して人権DDを進める方法も有効であると思いました。エンゲージメント強化の方法として検討していきたいと思いました。
【ソジョウ・カンパニー 砂道様】
現地でサプライヤーの方と直接対話し、生産ライン含め拝見する機会を実現頂き、ありがたいと感じています。訪問先企業は、方針や体制、取組の内容から、全般に先進性を感じたと共に、従業員エンゲージメントなどとも関連し話をされていたことが印象的でした。このような場で、対話を重ねることが、人権DDの実行力を高めることに繋がると考えています。
Q4: 今年のRBHRフォーラム全体や(9/15本スタディツアー以外の)関連イベントで特に学びのあったものなどへの感想があればお聞かせください。
【サントリーHD中村様】
ジェトロアジア経済研究所の実践セッション(ケーススタディ研究)やRBHRフォーラムでも行われていたテーブルごとのグループディスカッションなど、対話を重視しながらの進め方は、今後の人権に関する社内啓発の方法として参考にしたいと思いました。
【ソジョウ・カンパニー 砂道様】
フォーラムでのセッション全般を通じて、グローバルサウスのライツホルダー(当事者)、ならびにNGOの方からの発言が印象に残りました。今後制度化等を通じ強化されるだろう人権DDに対する、彼ら・彼女らの意見について、日本企業が人権取組を推進する際に、理解をしておくことの重要性を改めて認識しました。
Q5: 最後に9/15の現地ツアーで得られたことを今後どう活かしていきたいかお聞かせくださいますか。
【サントリーHD中村様】
現地ツアーならではの対話を通して得た多くの学びを社内に共有し、ネットワーキングでつながった方々と今後も意見交換・情報共有をさせていただきながら、人権DD推進活動の拡大につなげていきたいと思います。また、百聞は一見に如かずで、より多くの社内関係者に実際に参加し自ら視野を広げ活動に役立てるよう働きかけていきたいと思います。
【ソジョウ・カンパニー 砂道様】
各組織で人権推進を担われる参加者の方とお知り合いになることが出来たため、幅広い論点が存在する人権取組推進の貴重なネットワークとさせて頂ければと思っております。また、今回得られた現場感を活かし、海外DD推進により深く関与出来たらと考えます。
■参考リンク
国連「責任あるビジネスと人権フォーラム(アジア太平洋地域)2025」(英語)
国連RBHRフォーラム2025日本企業向け企画の告知イベント – JP-MIRAI
国連責任あるビジネスと人権フォーラム2024 日本企業向けサイドイベント – JP-MIRAI
