行動原則実践事例紹介 第14回 公益財団法人沖縄県国際交流・人材育成財団(OIHF)

2023年01月13日

本企画では、会員各位の外国人受入れに関連する事例を紹介しています。

第14回でご紹介するのは、公益財団法人沖縄県国際交流・人材育成財団(OIHF)です。2021年には「多文化共生推進アライアンス認証制度」を開始し、沖縄県内の外国人労働者の生活や雇用環境を向上させようと日々取り組んでいらっしゃいます。

※「多文化共生推進アライアンス認証制度」とは、厚生労働省沖縄労働局及び出入国在留管理庁福岡出入国在留管理局那覇支局との3者間で締結した「在住外国人の労働・生活環境向上に向けたパートナーシップ協定」を基盤としたプラットフォームである「多文化共生推進アライアンス」による、「適正な労働環境と雇用管理の確保等、外国人労働者の労働・生活環境の改善に責任を持つ企業や団体」の認証制度です。
参考:多文化共生推進アライアンス制度

今回は国際交流課課長・根来全功様、主幹・葛孝行様にお話を伺いました。
同財団は2020年に会員としてJP-MIRAIに参加され、2021年度下半期活動報告会での発表では会員相互の票にて優秀賞にも選ばれています。

国際交流課課長 根来 様

主幹 葛 様

Q. 公益財団法人沖縄県国際交流・人材育成財団(OIHF)のプロフィールを教えて下さい。

当財団は、特殊法人琉球育英会を前身として、平成12年に沖縄県国際交流財団と沖縄県人材育成財団とが合併してできた組織です。財団の職員は全体で36人程おりますが、国際交流課は6人の職員で運営しています。
参考:国際交流課のHP

Q. 沖縄県が現状抱えている課題はどのようなことがありますか?

1つ目は、県内で働く技能実習生に関わる問題です。ここ数年で技能実習生が飛躍的に増えているのですが、そのような中で、以前、文化庁の事業の一環で、日本語教育に携わる外国人定住者にヒアリングを行いました。その結果、就業先は送出し機関が決めており、どこに行くかが直前まで分からないケースもあり、さらに、県内在住者の中には、必ずしも沖縄を選んで来ている方が多いわけではないという実態がみえてきました。
2つ目は、永住化、定住化、高齢化に関する問題です。他県に比べて傾向が特に顕著な点として県内には米軍基地が点在しており、基地内外に住む約5万人の軍人・軍属がおり、彼らは日本の住民票は持たず、また、中には高齢化しリタイアした後も沖縄に住み続けている方も多くいます。その方々が、日本語が分かる配偶者を亡くされて孤独化し困難に直面するケースもあり、問題は多岐に渡っています。
また、当地は海外からの旅行客も多く、観光産業が盛んです。同産業は経済的には県に貢献している一方、外国人労働者という側面で考えると、必ずしもそこで働いている外国人が良い待遇を受けているわけではない、という点も課題の一つです。

Q. そのような課題を抱える中で、多文化共生推進パートナーシップ(出入国在留管理庁・厚生労働省沖縄労働局)協定締結に至った経緯を教えてください。

国際交流課では、2019年から外国人からの相談を受け付けています。労働に関係のない生活に関する相談もありますが、労働に関する相談を聞くと、労働者側だけの問題だけではなく、雇用主側が労働法をあまり理解していないということも、一つの要因として挙げられることに気が付きました。双方に、雇用に関する法や決まりを浸透させることが、解決に導く手助けとなりますし、相談に至るようなケースを少しでも減らしたいと考え、多文化共生推進パートナーシップ協定を結びました。
協定を結ぶにあたって、我々自身が労働法や労働基準法を100%理解しているわけではないため、外国人労働者から相談を受けた我々が相談をできる機関が必要と考え、当初から在留管理庁、労働局に同協定の構成員として参画してもらおうと進めていました。
協定の概要はこちら

Q. 多文化共生推進アライアンス認証制度開始後の反響や活動を進めていく上での方針はございますか?

我々としては、協定の意義をご説明し、賛同してくれる企業に絞って、就職マッチングなどを行っています。誰でも会員になれるとすれば当然会員数も増えるでしょうが、我々が考えていることはそういうことではありません。場合によっては、労働条件通知書や雇用契約書を確認させてもらい、是正が必要なものには助言を行い、それを改正していただいたりもしています。
時間はかかりますが、しっかりと審査をし、賛同していただける企業さんに会員になっていただくというスタンスは曲げずに行っています。

Q. 考えに賛同してくれる企業の特徴などはありますか?

既に外国人を雇用している企業に話をしてみたところ、一概に企業の大小や、業種、経営状況などの決まった傾向は見られず、むしろオーナーの考え方、企業体質によるところが非常に大きいということが分かってきました。
我々は賛同をしたいと手を上げてくれる企業に対しても、必ず実際に訪問し、雇用主や外国人労働者の声を聞いた上で、事業全体の説明をし、それに賛同してくれる企業のみ加盟を認めています。最近分かってきたのは、加盟企業の方々から「加盟することでデメリットってないよね。」という声をいただき、加盟した企業の正当性が対外的にもより際立って見える状況だということです。

Q. 事業の一つである外国人相談窓口について教えてください。

2019年度から開設しており、現在、市役所や役場内の外国人がよく訪れる窓口に、多言語でのチラシを設置し告知をしています。相談内容は生活に関わることから仕事に関することなど多岐に渡り、毎月20件程度問合せがあります。その中で労働問題に関することは、年間50件程度で2番目に多いです。労働問題は、一筋縄ではいかないことも多く、弁護士会とも相談したりと長期化したりすることもありますが、我々としては、雇用主、外国人労働者双方の話を聞き、一緒に解決の糸口を探りましょう、というスタンスで対応しています。

Q. 会員間の新たな人脈づくりなどについて考えていることはありますか?

新規団体の紹介やニュースレターの配信、求人情報提供依頼など行い、会員専用HPに掲載を行っています。SNSでの交流なども今後は検討したいと考えています。

Q. 外国人労働者との相互理解や信頼関係を醸成する「リーガル・ライフサポーター養成講座」について教えてください。

相談窓口を開設している中で、職員だけでは言語対応の限界があるため、外部支援を募る目的で始めました。これまで2回開催しましたが、毎回50名程度に講座を受けていただき、修了試験に合格した方のみ認定しています。試験に合格する方は毎回10名以下程度で、合格者はレベルが高い方が多く、法廷通訳も出来るような方もいらっしゃいます。
リーガル・ライフサポーター養成講座詳細

Q. 多文化共生推進アライアンス認証制度を運用している中での苦労と気づきを教えてください。

毎回新しい企業に直接お伺いし、事業の説明をしていますが、企業の担当者の方に話をさせていたくと、肯定的な反応を示していただき、すぐにでも加入してくれそうな様子で、「すぐ社内で検討します。」と言っていただけるのですが、その後、しばらくしても連絡がなく、こちらからお伺いすると、「今回は見送りたい。」との回答があったりと、心が折れそうなことも多々あります。しかし、沖縄県内の多くの企業が、同じ方向性を向いて進んでいけるよう、根気良く続けていきたいと考えています。

Q. JP-MIRAIおよびJP-MIRAI会員への期待をお聞かせください。

元々、JP-MIRAIの活動を参考に、多文化共生推進パートナーシップ協定の締結に向けて取り組みを開始したため、我々と同じような考えの下、一つでも多くの県や地域の方々が、新しい取り組みを実施していこうと感じるような、魅力的な取り組みをこれからも展開していってほしいです。

<インタビューを終えて>
根来様、葛様には、ウクライナの避難民受入れでも非常にお忙しい中、取材に応じていただきました。信念を貫きながら、事業の立上げから周囲への理解・浸透に尽力し、常に前向きに活動をされている様子を伺うことが出来ました。この場を借りて感謝申し上げます。JP-MIRAIとしても、引き続き多くの自治体の皆様のモデルとなるような活動を目指してまいります。

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