行動原則実践事例紹介 第17回 一般社団法人磐田国際交流協会

2023年03月24日

第17回でご紹介するのは、一般社団法人磐田国際交流協会です。一般社団法人磐田国際交流協会は団体会員として2021年8月にJP-MIRAIに参加され、2022年度上半期活動報告会での発表が会員相互の投票にて優秀賞に選ばれています。
協会の活動報告については下記リンクからご覧頂けます。
2022年度上期JP-MIRAI会員活動報告会実施報告 (ページ下部に活動報告動画・資料を掲載しています。)

今回は協会発足当初から尽力されている現副会長の高塚 勝久様に、協会の変遷とこれから目指す姿、先日実施された「磐田・袋井・掛川インターナショナルフェア2023」の様子などを伺いました。

副会長 高塚 勝久様
新しくなった協会ロゴマーク

Q. 一般社団法人 磐田国際交流協会のプロフィールを教えて下さい。

2005年旧磐田市と福田町、豊田町、竜洋町、豊岡村という1市3町1村が広域合併した際に、それぞれの国際交流協会も合併し、今の一般社団法人 磐田国際交流協会が発足しました。
それまで各協会では、海外の都市と相互交流”外との国際交流”が活動の中心でした。しかし磐田市は全国でも屈指の外国人集住都市で、2005年当時も、人口17万人に対し、外国人口は7千人でした。外国人住民とどのようにして良好な関係を築き、地域で共生していくか、多文化共生が地域にとっての重要な課題であると考えていました。地域の”中の国際交流”と言えるでしょう。そこで磐田国際交流協会はこの2つの国際交流を柱として活動をスタートしたのです。

Q. これまで活動を行ってきての気づきや課題感などを教えてください。

先程申し上げたとおり、協会発足当時、17万人口の内、外国人人口は7,000人でした。ゴミの分別や騒音などの問題に加え、治安が悪くなる等の偏見も少なからずあったと思います。
多文化共生への取り組みもそうしたネガティブな問題の解決であったり、日本の生活環境に慣れない外国人住民をサポートするというようなイメージがありました。
生活相談、日本語教室の運営、外国人児童の学習支援、ランドセル等の学用品のリユース品の提供、そしてリーマンショックの時には食料品の支給活動も行いました。
ところが現在は多文化共生への考え方は大きく変わったと感じています。磐田市周辺は基幹産業が盛んで、仕事が得やすい環境であるが故に、外国人集住地域となっています。少子高齢化により人口減少が深刻な日本の地方都市の現状において、磐田市が外国人集住の土壌を持つことは、今後の地域発展のポテンシャルになり得ると思います。外国人住民は労働力の提供と共に、地域の経済活動にも参加します。また地域活動にも参加してもらえる可能性もあります。外国人住民は地域を支える仲間であると捉え、多文化共生社会の充実を図り、より多くの外国人住民を磐田市に迎えようという、多文化共生を活かしたまちづくりが、地域の明るい未来に繋がるという考え方です。

Q. JP-MIRAIに加入した経緯を教えて下さい。

当協会の理事に過去JICAで仕事をしていた方がおり、紹介してくれたのがJP-MIRAIでした。発足の経緯や、「信頼され選ばれる・日本になる」ために活動をしているという話を聞いて、共感を受け加入しました。
私共の目指す多文化共生を進めていく上で、JP-MIRAIに入会して、様々な知見やネットワークを活用させていただくことは、当協会にとって、大きな力となりますし、地域の企業の参画を積極的に促すためにも、行政と連動した磐田独自の認証制度があれば良いと考えておりましたので、今後は磐田市にも入会してもらいたいと考えてJP-MIRAIのことを紹介しながら、認証制度の設立を提言しています。

Q. 磐田独自の認証制度とはどんなことを考えているか教えてください。

多文化共生社会の実現には、企業の参画が欠かせません。しかし一部の企業を除いては、まだまだ多文化共生への理解や、取り組みが足りないと感じています。そこで実効性のある企業の多文化共生への取り組み促進をするためにも、行政主導による「(多文化共生に取り組む企業の)認証制度」が必要だと考えています。
企業にとっても労働力確保としての、外国人人材の雇用には高い関心があります。外国人労働者の人権擁護を含め、多文化共生や日本語教育に積極的に取り組んでいる企業に対し、行政が認証を与える。認証された企業は社会的信用と共に、外国人人材を雇用する上で優遇措置が得られるという仕組みです。
隣の浜松市では既に認証制度をスタートしていますので、参考にしながら磐田独自の認証制度に繋がれば良いと思うのですが、磐田市行政への働き掛けと共に、市内企業の意識の高揚を目的とした、シンポジウム等も企画したいと考えています。その際はJP-MIRAIさんにも是非ご協力をお願いいたします。

Q. 磐田市では定住外国人も多く、外国人の子ども達への教育も活動が盛んのようですが、その取り組みを教えてください。

地域の子ども達は、将来的に活躍してくれる人材にもなり得るわけですから、教育は多文化共生の中でも、とても重要だと思っています。
ただ、学校での学習以前に、外国人の子ども達は言葉や学校生活への適用等の問題を抱えていて、学校もその対応に苦労をしているのが現状です。
協会では、2010年度から継続して磐田市の教育委員会から受託事業として、外国人児童生徒学習支援を行っています。具体的には、支援者が市内の必要な小学校の授業に入り、外国人の子ども達の学習支援にあたったり、日本に来たばかりで、日本語が全く話せないような子どもの個別の初期支援を行ったりしています。
(参考資料:外国人児童生徒学習支援
また高校や大学等への進学のサポートも必要です。本人の意識は元より、両親の理解が必要不可欠ですが、豊かな将来のために可能性を求めてもらいたいと願っています。誰もが頑張ることが出来る機会を仕組み化して提供できるようにすることが大切だと考えています。

Q. 日本語教室について教えてください。

協会では2007年度から2021年度にかけての15年間、文化庁からの受託事業として、日本語教室運営を含めた「生活者のための日本語教育事業」を行ってきました。2022年度4月からは国の方針に則り、磐田市の独自の事業として協会が受託し、磐田市日本語教育事業を運営しています。協会の取り組む日本語教室の最大の特徴は、言語習得以上に多文化共生が目的であるということです。学習者である外国人が地域の日本語教室に来て、地域の人達が学習支援者として中に入る形式をとっています。各教室ではコーディネーターのファシリテートにより、様々なトピックに関して対話をしながら、日本語を実際に使いながらコミュニケーション活動を行う、アクティブラーニングを実践しています。
もう一つの大きな特徴は、より多くの外国人学習者に参加してもらう以上に、多くの支援者としての地域住民に参加してもらいたいという考えです。学習支援者としての地域住民は、そこで外国人住民とのコミュニケーションの実践を行います。このコミュニケーションがとても大事なのです。今はまだ、磐田市の多文化共生に関わる人はほんの一握りで、多くの人達は外国人住民に対して、壁を作ってしまっています。その大きな原因の一つが、言葉に対する不安です。ただ、元々コミュニケーションは非言語要素が75%と言われたりするくらいですから、たとえ言語が使えなくても、コミュニケーションを取ろうという気持ちさえあればなんとかなると、それをより多くの地域の人達に実体験してもらいたいのです。それにより、多文化共生の裾野が地域に広がっていくことは間違いありません。
日本語教室は、多文化共生社会の実現に繋がる地域の重要な拠点であると言えるでしょう。

Q. 先日行われた磐田・掛川・袋井3市合同のインターナショナルフェアについて教えてください。

磐田国際交流協会では、2013年度から2019年度に掛けて、多文化共生社会実現に向けて、企業、市民、行政、諸団体の連携を目的に、市内の公共施設を会場に、インターナショナルフォーラムを開催してきました。2020年に市内のランドマーク的存在である、ららぽーと磐田とのコラボレーションが実現し、ららぽーと磐田を会場としたインターナショナルフェアに移行しました。ららぽーと磐田を会場にすることで、地域の不特定多数の住民に、多文化共生への取り組みを周知させることができます。そのタイミングで同じく外国人集住地域として隣接する袋井市、掛川市にも声をかけたところ、共催という形で実施することになりました。多文化共生社会の広域化を図ろうとの考えです。
感染症の影響で、過去2年間は思うような開催が出来ずにいましたが、ついに2023年1月末に、企画制限無く、「磐田・袋井・掛川インターナショナルフェア2023」を開催することができました。中央ステージではサンバやタイの踊り等、地域の外国人住民によるステージパフォーマンス、多文化共生に関わる諸団体や企業による体験・展示ブースの出展、屋外では世界の料理を楽しめる20台の世界の料理キッチンカーの出店等、盛りだくさんの企画内容でした。展示ブースにはJP-MIRAI会員のNPO法人Adovoさんにも出展していただきましたし、来賓には在浜松ブラジル総領事にもお越しいただきました。

磐田国際交流協会紹介のポスター展示

また、フェアのプログラムの中で、静岡文化芸術大学の佐伯准教授を座長として、高橋磐田市副市長、久保田掛川市長、大場袋井市長の3名と3市に在住する外国人とを交えてのシンポジウムも行いました。外国人から言葉の違いにより苦労された話などの生の声は、来場いただいていた方にも非常に意義のあることだと思いますし、それを受けての各市の代表3名から、いずれも、この地域における多文化共生を大切な課題であると捉えているとの発信があったことは大きな成果であったと思います。
※「磐田・袋井・掛川インターナショナルフェア2023」の様子はこちら
フェアに関わって頂いた方々、また来場してくださったお客様方に、少なからず地域における多文化共生への意識の高揚に繋がったと自負しています・

Q. JP-MIRAIおよびJP-MIRAI会員への期待を教えてください。

JP-MIRAIの会員にしていただいて本当に良かったと思っています。JP-MIRAIの知見やネットワークを活用していくことが私達の多文化共生推進にもすごく大きな力になり得ますし、JP-MIRAIという存在があり、関わらせていただいていることが大きな心のよりどころにもなっています。
また、会員の皆様とのネットワークができることは、今後の中でお互いにとって、すごく大きな可能性だと思っています。是非同じ志を持って、より多くの外国人の方々が日本で働きたい、日本に住んでみたいと思ってもらえるように、そして、実際に来日した外国人の皆さんが、日本で住むことに幸せな未来を見出していけるような社会の実現に向けて、JP-MIRAI会員の皆様と相互連携しながら、これからも取り組んでいきたいと思っています。

<インタビューを終えて>
高塚様には、多文化共生社会の実現に向けて、外部からの情報収集、周囲からの理解と協力を得るために活動に取り組んでいらっしゃる真摯な姿勢をお伺いすることが出来ました。お忙しい中、JP-MIRAIの取材のために時間を割いていただきましたことを、この場を借りて感謝申し上げると共に、JP-MIRAIとして会員の皆様が相互連携出来るような仕組み作りへの取り組みにしっかりと活かしていきたいと思います。

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