外国人労働者は、日本で働き、生活する上で様々な困難に直面しています。その中でも、得た収入をどのように貯めて使うのか、日本人であれば銀行に預けて引出すという当たり前の金融サービスの利用が、多くの外国人労働者にとって実はハードルの高い行為であることは見過ごされがちです。また、一生懸命働いて稼いだお金を故郷の家族に送金してもそれが浪費されてしまうなど、必ずしも有効に使われていない現実もあります。
セミナーでは、非営利組織の経営とソーシャル・ファイナンスがご専門の、明治大学経営学部 小関隆志教授よりお話しいただました。
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外国人労働者が、銀行口座開設やクレジットカード申込、融資に関して、一般の日本人に比べて困難になりやすい現状があります。その原因としては、多言語対応の遅れ、マネーロンダリング対策の強化、銀行口座開設として入国後経過期間の金融機関による要件など、外国人特有の課題があります。また、多くの外国人労働者は海外送金サービスを利用しており、近年資金移動業者も増加していますが、無登録業者を利用しないように注意することが必要です。これら日本での金融サービスに関しては、外国人労働者への情報提供や支援が必要となりますが、多数ある外国人相談窓口では金融サービスに関する情報提供や支援は発展途上にあります。金融機関には、外国人とのコミュニケーションの強化(KYC=Know Your Customer)、政府には外国人が銀行口座を開設しやすいように制度面での見直しが必要であると考えます。
外国人労働者の中には、帰国後の人生設計のために蓄えることを目的とする方も多くいます。しかし、消費の誘惑や仕送先の家族での浪費などで、資産形成ができないケースも見られます。また、多額の仕送額により日本での生活が困窮してしまう過剰送金の問題も見られます。このため、来日前・来日後を通じて、外国人労働者に対して計画的な資産形成を促すための金融教育が必要となります。これらの金融教育は、送出機関、受入機関、企業、金融機関、送出国側政府、受入国側政府などの関係者がそれぞれの立場から取り組むべき問題です。小関教授は、2022年12月にインドネシア共和国東ジャワ州トゥルンアグン県において、同県移民労働局の協力を得て行った来日前の労働者への金融教育プロジェクトで、研修の企画・実施を行いました。研修は、(1)来日前の準備事項、(2)来日後の家計管理、(3)信用履歴の管理と相談窓口をテーマとして、講義や実習が行われました。