日本貿易振興機構アジア経済研究所 新領域研究センター 上席主任調査研究員
JP-MIRAIアドバイザリー会合メンバー
山田 美和
JP-MIRAIが誇るべきは、その行動原則に掲げているとおり、「ビジネスと人権に関する国連指導原則」にもとづく取組みであることです。指導原則は、人権を尊重する責任は、事業を行う地域にかかわらず、企業に期待されるグローバル行動基準としています。すべての企業に、自らの活動を通じて人権に負の影響を引き起こしたり、助長することを回避し、そのような影響が生じた場合にはそれに対処すること、そしてたとえその影響を助長していない場合であっても、取引関係によって企業の事業、製品またはサービスと直接的につながっている人権への負の影響を防止または軽減するよう努めることを求めています。
私は今から15年前、タイの水産加工場で劣悪な状態で働くミャンマー人労働者たちに出会い、その製品の仕向け先が日本であることを知り、日本企業のサプライチェーンの問題を目の当たりにしました。発注元の日本企業ははたしてこの労働者たちの状況を知っているのだろうか。製品の質は問うが、どのような状況においてどのような人々によってつくられたかは目をつぶるのだろうか。その答えとして学んだのが、指導原則です。人権のなかには、特定の産業や状況でより重大なリスクに晒されうるものがあり、企業は負の影響を特定の属性の人々により与えうる可能性があります。外国人労働者の権利はまさにそれにあたります。
タイから帰国してみれば、技能実習制度は制度的人身取引であるとの米国人身取引報告書による指摘にみるように、日本における外国人労働者の権利侵害は国際的な批判の的であり続けています。責任をもって外国人労働者を受入れ、「選ばれる日本」になるために具体的活動に取り組むJP-MIRAIの設立趣旨に私は賛同して関わらせて頂いています。JP-MIRAIの存在自体が「選ばれる日本」を体現するものであるよう、アドバイザリーメンバーとして貢献できればと願っています。
(タイのLPN(外国人労働者支援組織)のソンポンさん(中央)、CPグループのネティトンさん(右)と)