【実施報告】東南アジアのNGO『Issara Institute』に学ぶ~グローバルサプライチェーンにおける労働問題への対処~」【2022年11月21日】

2022年11月30日

11月21日(月)、JP-MIRAI(責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム)は、オンラインセミナー「東南アジアのNGO『Issara Institute』に学ぶ~グローバルサプライチェーンにおける労働問題への対処~」を開催しました。

日本企業のサプライチェーンが海外に拡大していく中で、海外のサプライチェーンにおいても労働者の人権尊重に関する取り組みが企業に求められています。
そこで、JP-MIRAIはタイに本拠を置き、東南アジアにおけるサプライチェーンの労働問題のリスクをモニターし、解決に向けた助言を行うNGO「Issara Institute」を招き、彼らの海外サプライチェーンにおける取組をご紹介いただきました。
「Issara Institute」は2014年に設立されたNGO団体で、数々のグローバル企業をパートナーに持ち、労働者の声を直接聞き取り、サプライチェーンの企業とともに改善の取り組みを行っています。
*Issara Instituteのホームページはこちら

当日はJP-MIRAI会員を含む41名の方にご参加いただきました。

<Issara InstituteのOhnmar Ei Ei Chawさん、Ana María Sotoさん>

まず、Regional DirectorのOhnmar Ei Ei Chawさんより、Issara Instituteについての紹介をして頂きました。以下紹介の概要になります。

Issaraは2014年に設立されたNPO団体で、タイで活動を開始し、翌年にはミャンマーやカンボジアに拠点を置き、2022年からマレーシアやネパールにも拠点を拡大しています。通常の監査やコンプライアンスでは見つけられない移民労働者の労働虐待を、労働者採用の初期段階での対応及びテクノロジーで発見することを強みとしており、現在13のグローバルブランド企業と戦略的パートナー契約を結んでいます。
Issaraは以下の3つの手段を通じて常に移民労働者と接触し、彼らの声を集めています。
1. 求職者が村で仕事を探し、その後都市で研修後派遣先に行くまで、それぞれ職場・コミュニティにて移民労働者と接触する。移民労働者の採用組織などにもトレーニングを行う。24時間ホットラインを開設。毎日約16000件の相談が寄せられる。
2. Golden Dreamsというスマホアプリを開発。人材派遣、雇用主などの情報を移民労働者に提供し、移民労働者が雇用主をレビューできる機能ももつ。
3. 移民労働者に情報を提供するためにSNSで発信。
Issaraは移民労働者への働きかけにとどまらず、人材紹介会社、サプライヤーのための研修も実施し、政府、企業、NPOなどとのマルチステークホルダー向けのセミナーも開催しています。

続いてDirector – Research, technology and Worker VoiceのAna María Sotoさんより、Issara Instituteの活動詳細や日本での活動について紹介がありました。以下紹介の概要です。

Issara Instituteの具体的な活動として以下の9点があげられます。
1. Inclusive Labor Monitoring :労働者のもつ仕事場への懸念を共有する特別なチャネルで、労働者の苦情を的確に処理し環境改善を行います。
2. Ethical Recruitment System:透明性を備えた採用プログラムの構築により移民労働者の脆弱性の克服に取り組みます。
3. Grievance Mechanism Strengthening:苦情処理メカニズムの支援を行います。
4. Workers Satisfaction Survey:労働者満足度分析を雇用者に提供します。
5. Worker Recruitment Fee Analysis and Recommendations:労働者採用料金の分析・手数料の体系的な調査と報告書を作成します。
6. Issara Academy :ビジネスと人権について考察するワークショップ、ウェビナーを開催します。
7. Golden Dreams Marketplace:スマホ用アプリで、求職者が安全に仕事を探し応募できるサイトを開設しています。
8. Global Forum:ステークホルダーが一堂に集まり議論する場を設けています。
9. Research & Reports 倫理的採用などに関するレポートをまとめています。

またInclusive Labor Monitoringという概念のもと、移民労働者と様々な場所で接触を試みてつながり、移民労働者の信頼を獲得していく活動をしています。
日本での活動では、2019年よりIssara Instituteはグローバルブランド企業と戦略パートナー契約を結んでいます。その中で日本の技能実習生にインタビューを行う機会がありました。
2人の技能実習生にインタビューする中で共通するリスクを発見しました。
それは、出身国での採用過程、雇用主と人材派遣会社の合意が不透明であり、来日後の仕事に関する情報について、実習生は来日するまで情報を得られていないことです。来日前に透明性のある仕事の情報提供が重要です。
また、一部の技能実習生が派遣先の紹介料金を負担していたり、実習生と人材派遣会社の合意が不透明であることや、労働者が非常に高い募集手数料を払い、借金を負っているという実態もあるようです。
一方で日本企業がビジネスと人権、倫理的採用に注目し始めており、労働者の声を通じたモニタリングを重視し始めていることがわかってきました。
日本におけるこの労働者リスクは他国で発見したリスクと似ています。
ISSARAはこのような従業員のあらゆるリスクを洗い出し、改善し、さらに倫理的採用プログラムを自ら開発し、企業が利用できるようにしてます。

Chawさん、Anaさんの紹介の後、活発な質疑応答を経て閉会となりました。

今後、JP-MIRAIとしてもIssara Instituteと連携し、日本企業の海外サプライチェーンにおける人権デューデリジェンスの取り組みを支援していきたいと考えています。

当日のセミナーの動画及び資料は以下よりご覧下さい。

セミナー資料

Issaraセミナー

質疑応答

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