【実施報告】自治体・国際交流協会等勉強会 第6回「JCIE調査報告~自治体の新たな動きと課題の解決に向けて」【2023年10月25日】

2023年11月08日
2023年10月25日、第6回「自治体・国際交流協会等勉強会」をオンライン形式にて開催しました。第6回の本勉強会では、日本国際交流センター(JCIE)が2021年7月に実施した「自治体における外国人住民関連施策に関するアンケート調査」についての分析結果報告と、「地域でのより良い受け入れに向けて」をテーマとしたパネルディスカッションを行いました。

第一部 「自治体における外国人住民関連施策に関するアンケート調査」分析結果報告

李 惠珍(イ・ヘジン)氏(JCIEシニア・プログラム・オフィサー)

 調査は、全国の地方自治体に対し包括的且つ綿密に実施されており、プレゼンテーションでは、その分析結果から見えてきた自治体の意識や課題について様々な角度からお話しいただきました。中でも、

  1. 9割以上の自治体で外国人住民が増加しているが、自治体の規模や、定住者が多いか技能実習生が多いかで、抱えている課題、多文化共生への意識と取組みに違いがみられる。
  2. 地域での外国人住民の増加、共生の進展を、異なる文化・言語を接する「国際化」と、「人手不足の解消」としてとらえる視点が強く、「イノベーション」、「地域社会・経済の担い手」としての視点は弱い傾向がみられる。
  3. 今後必要な取組みとして、「外国人と日本人との交流・相互理解支援」、「外国人住民の現状・実態の把握」を重要であるとしている自治体が多い一方で、就労、就学・教育、福祉、生活困窮など外国人住民の経済的・社会的自立にかかわる取組みについては、必要性への認識が低い傾向にある。

といったことが特徴として挙げられました。

発表資料はこちらからダウンロードできます。

第二部 パネルディスカッション

パネリスト

  • 出口 幸治 氏(神戸市市長室国際部国際課課長)
  • 黒岩 春地 氏(佐賀県国際交流協会理事長)
  • 坂本 久海子 氏(NPO法人愛伝舎理事長)
  • 宍戸 健一 氏(JICA理事長特別補佐)

モデレーター
毛受 敏浩 氏(JCIE執行理事)

Q1.イ・ヘジン氏の発表について
  • 出口氏:人手不足解消のため多くの外国人を受入れているが、地域経済の担い手となるという、そこまでの認識はないのが現実。同じ問題意識。
  • 坂本氏:計画ができていない自治体が多いことに驚き。今後自治体間の競争が大きくなるのでは。
  • 黒岩氏:自治体で重要に思うファクターが技能実習や特定技能である点と日本語教育の指導者の不足は佐賀県も同様。外国人全員に対して調査をし、ある程度実態を把握して対策を取っている点は佐賀県が進んでいる。
  • 宍戸氏:集住地区の好事例はよく紹介されるが、日本全体で見た時の平均値は厳しいものがあるのでは。(散住地区の課題がある)
  • 毛受氏:移民にとってどう日本はアトラクティブな国になるのか。制度改正後、地域に定着してもらうためにどうするかもっと真剣に地域ぐるみで考える意識転換が必要。
Q2.これまでは必ずしも人口減少と多文化共生を結びつけて考えられてこなかった。自治体における外国人受入の位置づけ、外国人の受入をどこまで真剣にやるつもりがあるのか。
  • 坂本氏:困っている子供たちを助けることが人口問題であるとなかなか理解されてこなかったが、最近伝わるようになった。県教委や公立高校、民間企業でも、三重県で教育を受け、三重県を支えてほしいという意識。実際日本で育った子供が正社員として就職し始めており、教育に取組んだ結果が出てきている。これによりグローバル人材が地元にいる、という認識に変わると思っている。
  • 黒岩氏:技能実習生と特定技能が外国人の4割。いなくなると産業が成り立たないことが意識されてきており、産業政策上きちんととらえるべきという議論が出てきている。多文化共生の部署もできた。気運は高まっている。
  • 出口氏:特定技能(介護職)の産官学連携。留学→大学での日本語学習と介護現場学習+特定技能資格取得→就労 という神戸モデルがある。今年、神戸市に地域協働局ができ、外国人の生活の問題解決を担っている。地域全体として受入に取組む。
  • 宍戸氏:単純作業をさせるだけでは日本は選ばれない。「仕事の中で人を育てる」という日本のスタイルが売りになるのではないか。
  • 毛受氏:日本の若者との交流が必要。会社に囲まれているから手が出せない、ではなく自治体は努力するべき。でないと都会に行ってしまう。
Q3.今時差別的な意識はないと思いつつ、ある地域で、いままで外国人がいなかった地域に技能実習生ばかりが増えたところでは、偏見も生まれている。一般市民の認識はどうか。意識啓発の必要性は。
  • 坂本氏:調査した結果、外国人は鈴鹿は住みやすく日本人と交流がある、一方で日本人は外国人との交流がないという違いが見えた。今は保育園から日本人と外国人が普通に友達として混ざっている状況。若い人の中では外国人がいて当たり前。普段工場など限られていて接点がない人は遠い。外国人に関するニュースはネガティブなものが多いため、接点無く関心がない人にとってはそんな風に見えてしまう。「外国人がいてクールだ」という風に持っていきたい。特別なインフルエンサーではなく、地域の外国人に、母国語で発信してもらい世界とつながることを見える化していく。
  • 黒岩氏:2年前に実施した住民の意識調査では、多文化共生を聞いたことないか、聞いたことはあるが意味を知らない人が7割。外国人と付き合いが無い人が8割。技能実習生は職場と寮との往復ばかりでコミュニティに出ていない。市町村では防災の交流会などを開催、外国人には地域の活動に参加してもらうなどして、付き合いを広げていければ。閉じられた扉をどう開いていくか。
  • 出口氏:地域の人と外国人をつなげるのは、一朝一夕にはできない。地道なこと。留学生に多文化交流員登録。地域のイベントで通訳をやってもらう。PRアンバサダーに母国語で発信してもらう。という取組みをしている。できることは限られているが、続けることが大事。
  • 宍戸氏:外国人は日本人と関わりたいと思っているのに、日本人はあまり関わりたくない、関わる必要がないと思っているという話がある。これを改善するには、学校とか、先入観の無い子供たち世代からの関わりが必要。
  • 毛受氏:外国人のイベントに日本人を。日本人のイベントに外国人を。接点になる人、きっかけ作りをする人が必要。
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