2024年9月は、コロナ禍後、入国数が著しく増えているネパールを訪問し、労働雇用社会福祉省、教育省、送出機関協会(NAFEA)、送出し機関、NGOなど様々な関係者と面談し、JP-MIRAIの活動について関係者と意見交換を行いました。
ネパールの送り出しの特徴は、日本語学校への留学による来日が著しく多い理由について、関係者の話を総合すれば、①日本に行くための時間(留学3か月、技能実習6~9か月)が短い、②日本語学校~専門学校~技人国とキャリアをつなげば、最短4年後に家族を呼び寄せ出来る、③地方では、日本からの帰国人材による日本語学校が乱立しており、「日本に働きに行くなら留学」という宣伝がなされている、④日本語学校の設立は地方政府承認で容易~教育の質に課題がある、⑤来年から豪州の留学生受入が厳格化するため、日本行きの希望者が増えると予想されるなど現状を知ることが出来ました。
労働雇用社会福祉省バンダリ大臣からは、「就労を目的とする労働者は、留学ビザで行くべきではない」「特定技能を推進し、送出し上の問題をなくすために、ネパール政府の手続きを見直した」などのお話をお伺いしました(写真右)。
送出し機関を4つほど訪問しました。送出し機関の中には、①マレイシアへの送出しでRBA水準を達成し、様々な組織からアワードを受けている企業、②日本企業との間で、ゼロフィーのプロジェクトを実現したいとしている企業、③年間6,000名以上の人材を中東送出している企業など非常に多様でした。
現在の中東への海外労働の実態について、質問したところ、最低賃金は、月給381ドル(宿舎・食事つき、語学要件なし)であり、雇用主の要求に寄り、出発前に1週間程度の技能訓練を行う場合があるとのこと(写真)で、本人が負担する斡旋手数料は、約2,000ドルが相場。ただし、最近は少し求人が減少傾向で、日本からの求人が増え始めているため、今後の日本への送り出し拡大を行いたいという意向を示している企業が多く見られました。
移住労働者を支援するNGOのプラットフォームであるNational Network of Safe Migration (NNSM)との意見交換では、以下のような指摘がありました。
① 日本の制度を正しくネパール語で書いた資料がなく、SNSで間違った情報が発信されているため「留学ビザで働きに行く」という事が起きている
② 技能実習生として訪日する人の中には、100万円以上の手数料を支払う人も居る
③ ネパールとマレイシアの間には、協定があり、マレイシアに移住労働する場合には、斡旋手数料を本人から徴収してはいけないという条項があるが、実態は守られていない。マレイシアの日系企業は、倫理的なリクルートを進めており、RBA水準に基づくゼロフィーが行われている。その実現のために、NGOが協力し、第3者モニタリングを行っている
ネパール送出し機関協会(NAFEA)を訪問し、JP-MIRAIとの連携について意見交換を行いました(写真右)。JP-MIRAI側からの説明に対して、NAFEAディック副会長から以下のようなコメントがありました。
① JP-MIRAIポータルサイトやアシスト(相談窓口)は、ネパール語対応が出来るのであれば、非常に重要であり、普及に協力可能。
② 公正で倫理的なリクルート(FERI)については、NAFEAの会員企業の中にも、IOMのIRIS認証取得、マレイシアへの送り出しの中で、RBA基準の実現など色々な仕組みを行っているが、FERIは精緻でよくできた仕組みであり、内容に賛同する。今後、JP-MIRAIと協力する方向で調整したい。
ネパールとの連携活動強化については、JP-MIRAI事務局として、ポータルサイトのネパール語対応(相談窓口は対応済み)、FERI導入に向けた議論を継続していく予定です。11月の現場アカデミーの機会などでは、参加者に皆様と現場視察や関係者との意見交換を通じて、更に議論を深めたいと考えています。
記 JP-MIRAI 理事 宍戸健一
活動報告