【実施報告】2024年下半期JP-MIRAIシンポジウム(第二部)【2024年12月12日】

2024年12月27日

12月12日に開催されたJP-MIRAI下半期会員フォーラムおよびシンポジウムでは、急速に変化する外国人労働者の受け入れ環境への対応をテーマに取り上げました。第二部では「育成就労制度」の発足を見据え、外国人労働者の権利保護や地域社会との共生に向けた具体的な取り組みを関係者と共に議論しました。本シンポジウムは、制度改正までの3年間で強化すべき課題を発信し、共有する貴重な機会となりました。

第一部 会員フォーラムの記事はこちら

開催概要

日時:2024年12月12日(木)14:00-18:00 
会場:JICA市ヶ谷国際会議場 及びオンライン配信 
参加者数:会場50名 / オンライン113 / メディア4社

第二部 シンポジウム
「外国人材受入れの制度改革に向けて、今取り組むべきこと」

基調講演「制度改革に向けた取り組み」 JICA理事長 田中明彦

「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」で座長を務めた経験を基に、制度改革の3つの視点である、「外国人の人権保護」「外国人のキャリアアップ」「安心安全・共生社会」に沿って、制度改正に向けた検討の経緯を振り返るとともに、新たな育成制度の導入に向けて期待される取り組みについても言及 JICAは国際協力の実施機関として引き続き送出国や国内の課題解決に取り組むとともに、マルチステークホルダーの連携強化のプラットフォームであるJP-MIRAIとともに、「共創」のハブとして関係者間の力を結集する考え 

メッセージ「JP-MIRAIへの期待」 出入国在留管理庁長官 丸山秀治

育成就労制度は、国際的な人材獲得競争が激化する中で、技能実習制度や特定技能制度で指摘されてきた課題を踏まえ、日本が外国人材に選ばれる国となるため新しく創設された制度である。具体的には、人権保護の観点から本人の意向による転籍制限の緩和、悪質な送出機関の排除、監理支援機関の設置、そして外国人育成就労機構の指導監督機能の強化などが挙げられる。この制度はJP-MIRAIの理念等とも整合しており、日本が魅力ある働き先として選ばれる国になるような環境を整備していくためには、外国人材の受入れに係る関係者とより一層連携する必要がある。

ビデオメッセージ「国際社会の取組みとJP-MIRAI」 
Responsible Business Alliance (RBA)責任ある労働イニシアチブ最高責任者兼RBA労働担当本部長 Mr.Carlos Busquets

RBAは、強制労働の原因となる手数料問題に取り組み、2017年に責任ある労働イニシアチブ(RLI)を開始。国際基準に沿った多産業間のデューデリジェンスを推進し、マレーシアなどで5,000人以上の労働者の条件を改善しました。JP-MIRAIとの連携を通じ、日本市場を拠点にさらなる取り組み拡大を目指 

パネルディスカッション「私たちが今取り組むべきこと」

国際社会では、欧州を中心にビジネスと人権への取り組みが一層強化されています。一方、国内では深刻な人手不足が続き、外国人労働者が年間20万人規模で増加しています。今年、技能実習制度と特定技能制度の見直し法案が成立し、2027年には技能実習制度が廃止され、新たに育成就労制度が開始される予定です。この制度は、人権保護、キャリア形成、共生社会の実現を目指しています。こうした背景を踏まえ、各分野のパネラーをお招きし、今後注力すべき重点課題について議論を深めました。 

【パネラー】

① 株式会社ファーストリテイリング・サステナビリティ部 吉田 龍介 

外国人移住労働者の人権保護への取り組みとして、2004年に制定した生産パートナー向け行動規範(CoC)の国際基準に基づく改訂、賃金要件や移住労働者の権利保護方針を明確化。さらに国際移住機関(IOM)などと連携し、基準とガイドラインを策定。移住労働者の雇用関連手数料負担禁止や移動の自由確保など最低基準を提示し、生産パートナー支援を通じて責任ある雇用を推進。 

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② 日本繊維産業連盟副会長 富吉賢一 

繊維業界における外国人技能実習制度の課題や適正な取引推進を目的としたデューデリジェンス(DD)ガイドラインの紹介。同ガイドラインは、労働者の人権に焦点を当て、日本特有の課題や具体的な確認項目を示し、初心者向けのチェックリストも提供。また、「繊維業における特定技能の受け入れに係る追加要件」として、労働環境の改善や国際基準への適合が求められる認証制度の導入、及び毎年の適合審査を義務化する「Mandatory Due Diligence」を導入予定。 

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③ 熊本県庁 遠藤 浩昭 

熊本県では在留外国人が過去最高の27,407人に達する一方で、就職率の低下や東京への流出により、2030年には6.5万人の人手不足と予測。外国人の適切な受入れや多文化共生社会の実現を目指し、有志の県内企業や団体とともにJICAが支援して設立された「KUMAMOTO KURASU」では、外国人労働者の実態調査や官民協働による社会構築を進展させ、熊本を「選ばれ続ける地域」にすることを目指す。

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④ 厚生労働省 外国人雇用対策課長 川口俊徳 

技能実習制度の見直しにより導入された育成就労制度の趣旨について、外国人材(労働力)の確保を目的としつつも、基準の適正化により企業や監理団体に実習生の定着や支援への積極的な取り組みを求めるもの。背景には、海外との人材獲得競争があり、日本が「選ばれる国」であり続けるための適正化を重要視。また、送出国の事情やルール変更にも対応し、日本は継続的な努力をしていく必要がある。

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【ディスカッション】 

モデレーターの宍戸が進行を務め、ビジネスと人権に関する取り組みで直面する課題や解決策、地方における人材定着について、転職要件の緩和が引き起こす人材流出の懸念やその対応、地方の人材定着に向けた政府の取り組みなどについて議論が行われました。 

 【コメンテーター】

ディスカッション後、2名のコメンテーターからお話いただきました。 

⑥ 弁護士法人Global HR Strategy 代表弁護士 杉田 昌平 

各国の法律は守るべき最低限の基準であり、守らなければ市場から退場することになる。しかし、COCや自社の取り組みは、企業が目指す理想の世界観や人権に対する価値を実現するためのものであり、単なる最低基準にとどまらず、理想を追求すべきもの。そのビジョンをステークホルダーと共有し、ともに進めていくことが重要。理想と現実のギャップを埋めることが価値を生み出す。また、現状日本は外国人労働者に選ばれているものの、本当に日本が必要とする人材に選ばれているか、解像度を高める必要を指摘。 

 

⑦ 毛受敏浩JP-MIRAIアドバイザー 

地方が注力すべき取り組みとして、外国人との共生が福祉の枠を超え、生き残り策として重要。多文化共生の取り組みは地域に定着しており、地方は国に先駆けて外国人を積極的に受け入れる動きが進む。栃木県の外国人幸福度指数の導入など、地域での受け入れ競争が進む中、選ばれる地域となるためには、外国人労働者のキャリアパスを見据えた対応が不可欠であり、日本人と外国人労働者を対立的に捉えるのではなく、共に成長する視点が求められる。 

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