行動原則実践事例紹介 第4回 協同組合FUJI

2021年06月22日

本企画では、毎月1回会員各位の外国人労働者受け入れ事例を紹介しています。

第4回でご紹介するのは、協同組合FUJIで、会員としてJP-MIRAIに参加されている監理団体です。

協同組合FUJIは、横浜と名古屋に本部があり、ベトナム、インドネシア、タイ、中国、インド、フィリピンから技能実習生を受け入れています。

協同組合FUJIのウェブサイトは右記をご覧下さい。https://c-fuji.or.jp/

<協同組合FUJIの皆さん>

6月中旬に、JP-MIRAI事務局によりオンラインインタビューを実施しました。

Q:監理団体設立から現在の状況について教えてください

2009年、岐阜県で設立しましたが、設立当時は、岐阜県や愛知県で繊維業を中心に研修生や実習生を安い労働力として受け入れる傾向が強くあり、違法行為が日常的に生じていました。そのような中、私たちは、法令順守を意識し、人権に配慮した技能実習生の受け入れを目指し団体を設立しました。

2020年度の技能実習生の受け入れ人数は、ベトナムから3100名、インドネシアから400名、タイから160名、中国から90名、インドから70名、フィリピンから10名で、設立当初は、中国からの受け入れが多かったのですが、近年は、ベトナムからの受け入れが多くなっています。

設立当初から、幅広い業種に対してアプローチをして、さまざまな業種が参加する組合を設立しました。受け入れ企業も、農業、建築、機械・金属、食品製造等、さまざまな業種にわたり、多くは中小企業ですが、上場企業や上場企業系列企業など大企業もあります。

横浜と名古屋に事業所があり、全国にある受け入れ企業各社のフォローを行っています。コロナ禍の現在はオンラインも活用していますが、受け入れ企業や実習生からのご要望にお応えして、週に1回以上訪問するなど、きめ細かくフォローを行っています。

協同組合FUJIでは、スタッフのうち半数の約60名がベトナム、インドネシア、タイ、中国、フィリピンの外国人スタッフで、日本語能力試験のN1に合格したスタッフも多数在籍していて、実習生に対して丁寧に対応をしています。

Q:送出機関との連携や選定基準について教えてください

現在は、コロナ禍により、現地に行くことはかないませんが、送出機関への訪問はかなりの頻度で行っています。実習生受け入れの際には、受け入れ企業とともに訪問し、面接を行い、その際に、送出機関の寮の状況や専門学校の先生の授業の様子を受け入れ企業と一緒に訪問して確認もしています。信頼ができる送出機関とは長いお付き合いをしています。

<参考:6月15日に実施したJP-MIRAI主催手数料問題研究会における協同組合FUJI代表理事 服部説夫様の講演より>送出機関の問題として、高額な手数料の徴収、ブローカーによる手数料の徴収、不十分な教育、労働条件・雇用条件の不適切な説明、監理団体へのキックバックなどが指摘されていますが、どの送出機関も、すべてに該当するわけではなく、一部の項目について問題があるというケースも多くあります。このような問題が発覚した時には、その都度指摘し、改善をしてもらっています。

協同組合FUJIでは、不適切な送出機関を排除するために、実習生全員に入国後のアンケートやヒアリングを行い、送出機関への支払いなど来日までに負担した金額や日本語の語学力を把握し、送出機関の選定基準を設け、現地の日本語学校の日本語ネイティブの教員の数、駐在事務所/駐在員の配置の有無、トラブル発生時の協力と発生後の改善、帰国後の再就職支援の実施状況、現地での情報発信、キックバックや二重契約の提案の有無などを確認しています。

また、送出機関からの接待をなくすために、2年半前より名古屋、新横浜でオンライン面接の設備を整えて現地での接待の機会を減らしたり、キックバックの提案などを行う不適切な送出機関の情報を監理団体間で共有することなども行っています。

これまでに、実習生のアンケート調査で手数料以外にも徴収されていることが判明した場合や、日本語の教育レベルのばらつきなどについて改善依頼をしました。

たとえば、実習生が送出機関に支払う手数料などについて、実習生から聞いた話と送出機関からの説明が異なる場合には、時間をかけて真偽を確認し、場合によっては、その送出機関とは距離を置くというような対応もしています。

Q:受け入れ企業(組合加入企業)の基準はありますか?

基本的には、中小企業組合法で加入希望者を断ることはできませんが、社会保険への加入など法律で決められていることは当然のこととして、それ以外にも、チェックシートでの確認や、受け入れ企業の社長様の人柄、現場の雰囲気、日本人労働者も含め酷使されていないか、ユニフォームが汚い人たちが多くいないかなど、そこで働く実習生の目線に立って確認をしています。

協同組合FUJI側から、受け入れ企業に賃金を少し高くしてほしいと依頼しているので、それに同意してくれる会社に加入をしてもらい、安く受け入れたいという会社はお断りすることもあります。

Q:JP-MIRAIの行動原則についてお伺いいたします。

行動原則1① 「関係法令を遵守します」ということについて
実習生の負担軽減となるような受け入れ基準を設定するために、ベトナム人実習生を対象にインターネットでアンケート調査を実施し、1400名から回答を得ました。そのアンケートをもとに、今後、新たな受け入れ基準を設定する予定です。

<参考:6月15日に実施したJP-MIRAI主催手数料問題研究会における協同組合FUJI代表理事 服部説夫様の講演より>具体的には、海外就労に政府が関与し、手数料を実習生が負担することのないフィリピンモデルを他の国でも展開できないかと考えています。

現在、ベトナムでは、送出機関は、実習生から、3年間で上限3,600 USドル範囲内での手数料の徴収が認められていますが、協同組合FUJIでは、まずは、試験的に、実習生が送出機関に支払う費用の上限を1,500USドルとし、残額を日本側で負担する取り組みを複数の送出機関と検討を始めました。受け入れ企業には実習生が送出機関に支払う初期費用の一部を負担していただき、監理団体も送出機関運用費用とし送出管理費を増額する仕組みです。いずれは、実習生が負担する手数料がゼロになるよう目指しています。

近々、この新基準での受け入れを始めるべく、すでに営業も行っている状況です。

技能実習生の失踪が問題となっていますが、フィリピンからの受け入れを行っている団体では、失踪者がほぼゼロの団体もあるので、手数料の負担額の大きさと失踪は関連があるのではないかと考えています。

行動原則2「外国人労働者の人権を尊重し労働環境・生活環境を把握し、課題の解決に努めます」ということについて

実習生が母国とのつながりを維持できるように、ポケットWiFiの貸し出しなど通信環境の整備を行っています。

また、ベトナムでは地震がなく、避難することも知らないため、日本では、地震の際に携帯からアラートがなることや、避難経路の周知、避難場所に直接つれて行くことも行っています。

行動原則3「外国人労働者との相互理解を深め、信頼関係を醸成します」ということについて
コロナ禍では難しい状況ですが、以前は、実習生と受け入れ企業の方、協同組合FUJIの通訳で、地域が主催しているイベントに参加し、その地域の方たちと一緒に畑を耕し芋ほりやお花見、スポーツなどをしていました。今後は全国のNPOや大学のサークルなどと連携して実習生の地域社会への溶け込みを促進する活動を進めたいと考えています。この活動は、優良団体として必須の活動のため、受け入れ企業にも実施していただくように働きかけています。

行動原則4「外国人労働者の能力開発に尽力します」ということについて
日本語の習得も、母国への帰国後に実習生たちの職業人生に大きく役立つものと考え、日本語習得のサポート体制を構築しています。

受け入れ企業ごとに、実習生のシフトに合わせて、実習生に対するオンラインの勉強会を開催してサポートしています。

そのほか、外国人労働者向けのショート動画がたくさんアップされている株式会社soeasyさんの動画ツールsoeasy buddyを活用しています。協同組合FUJIでも、さまざまな言語の通訳スタッフが、あいさつの仕方、「危ない」、「痛い」などの日本語をショート動画にしてアップし、実習生がその動画を見て勉強できるツールを開発しています。

Q:コロナ禍における課題や問題などはありますか?

いくつかの受け入れ企業で、実習生を雇用できなくなったことがありましたが、幸い、他の受け入れ企業や知り合いの監理組合などに相談し、ほぼすべての実習生の転職先を見つけることができました。さらに、他の監理団体からも、600人ほどの実習生の再就職先についての相談があり対応をしているところです。

Q:実習生と受け入れ企業とのトラブルの解決はどのように行っていますか?

受け入れ企業側には、同じ日本人として思いやりをもって実習生に接してほしいと思いますし、実習生の言い分もすべて正しいわけではありませんが、コミュニケーション不足でミスマッチが起こることも多いため、現場に行き、実習生と受け入れ企業の両者の話をしっかり聞いて、それぞれ改善すべき点は改善していただくようにしています。どうしても、雇用する企業側は強い立場にありますので、どちらかというと、実習生の立場に立って、目線を合わせて話をすることを心がけています。

Q:JP-MIRAIに期待していることはありますか?

JP-MIRAIでは、手数料問題勉強会を4回にわたって開催されていますが、この問題は、どこか1か所だけに問題があるということではないため、制度の根本的な改善の提言をしていただきたいと思っています。JP-MIRAIに加盟している団体はSDGsを含めた問題解決を適切に行っている団体の証になるようなプラットフォームを目指していただきたいと思っています。

続いて、協同組合FUJIさんの紹介を頂き、いすゞエンジン製造北海道株式会社で2019年から働くベトナム人のVI VAN TRUONGさんにもオンラインで取材を行わせて頂きました。

<VI VAN TRUONGさん>

インタビューには協同組合FUJIのNGUYEN THI PHUONGさんにも立ち会い頂き、取材をサポート頂きました。

Q:なぜ日本で働きたいと思ったのですか?

日本は先進国で先進技術を持っているということを聞いていました。新しいことを体験したい、勉強したいと思ったので2019年に日本に来ました。

Q:いすゞエンジンで働いて、期待通りの経験をしましたか? 思った以上の経験はありましたか?

工場の最新の設備に驚きました。機械とかロボットとかに驚きました。

Q:いすゞエンジンで実習生として働く中で問題があったことはありますか? 協同組合FUJIに相談しましたか? 協同組合FUJIはどのようにあなたをサポートしましたか?

いすゞエンジンの工場に来て、最初に困ったのは機械の操作です。ベトナム語版の作業手順書を頂いたのですが、タッチパネルには日本語の説明しかないので最初は協同組合FUJIのフォンさんに横にいてもらい翻訳してもらって教えてもらい、機械の操作を理解しました。

ほかにも、日本の生活習慣がベトナムと違うので困惑することがありました。車が道路の左側を通るとかごみの分別の習慣とか。

協同組合FUJIのフォンさんは、みんなに説明会を開いたり、月1~2回工場の現場に来てくれて困ったことがないか尋ねてくれたり、Facebookでいつでも困ったことに関して質問に答えてくれます。いすゞエンジンにも生活指導と技術指導の方がいるし、工場に通訳の人もいてお世話になっていますが、フォンさんにはいつもサポートしてもらっています。日本語も今は自分で勉強していますが、協同組合FUJIさんに日本語の勉強の資料をもらって勉強しています。

Q:日本に来る前に知っておくべき情報はありますか?

日本の文化、地域の風俗や生活習慣を来日前に知るべきだと思います。

Q:ベトナムでの研修中に何か問題に遭遇しましたか?

日本語の勉強が大変でした。ベトナム語と全然違います。最初は漢字が全然覚えられませんでした。

Q:外国人労働者を受け入れる日本の企業や組織に何を期待しますか。

外国人に対して思いやりの感情を持ってもらいたいです。文化も生活も全然違う国で働くといろいろ困ったことがありますし、特に言語に関しては誤解されていると感じることもあります。日本と外国との文化の違い、外国で働く労働者の環境を受け入れ企業側も理解してほしいと思います。

Q:社外の外国人労働者と接触はありますか?

ベトナムにいたころからの知り合いがいます。休みの日は工場以外のそういった友達と遊びます。

Q:外国人労働者の観点から、JP-MIRAIに何を期待しますか?

外国人労働者の職種に関するアンケート・調査を行ったり交流イベントを開催したりして外国人労働者と企業がお互い理解しあえるようにしてほしいです。ベトナム人はFacebookを良く使っているので、Facebookを活用してほしいです。

<コラム:JP-MIRAI会員としての、今後のさらなる「外国人労働者と企業がお互い理解しあえる」社会の実現に向けての取り組み~協同組合FUJIより>

協同組合FUJIとしては、活動計画にも掲げているとおり、地域イベントへの参加を気兼ねなくできるように、組合職員が言語支援(通訳)として同行を予定しています。

この、地域イベントに組合職員が言語支援(通訳)として同行する活動は受入企業へもアナウンスし、地域社会・受入企業・訪日外国人のコミュニケーションの場となるように計画しております。

また、日本の若者と訪日外国人のそれぞれが交流できる場の企画も予定しており、主に大学のサークルや、NPO法人等と連携し、職場・地域社会・国籍に囚われずに、相互理解を深める事を目的とします。

また、受入企業のいすゞエンジンは敷地内での家庭菜園を行ったり登山企画や週に数時間も終業時間内に検定対策の勉強、指導を行ったり、ゲームを交えた日本語勉強会なども行っています。

協同組合FUJIの皆様、TRUONGさんとも、お忙しい中長い時間をこのJP-MIRAIの取材のために割いて頂きました。この場を借りて感謝申し上げますと同時に、JP-MIRAIとしても皆様の意見をきちんと今後の活動に活かしていきたいと思います。

<取材執筆協力 株式会社クレアン 秋山映美・岸田匡>

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