行動原則実践事例紹介 第7回 アジア技術交流協同組合

2021年12月01日

本企画では、会員各位の外国人労働者受け入れ事例を紹介しています。第7回は、アジア技術交流協同組合です。

アジア技術交流協同組合は「世界中の人や企業にチャンスを提供する」を理念として2008年に設立された監理団体で、インドネシア人を中心とした技能実習生の受入れを行っています。アジア技術交流協同組合の概要については右記ウェブサイトをご覧下さい。https://asea.jp/

10月26日にJP-MIRAIが行ったJP-MIRAI会員の2021年上半期活動報告会で今年の取り組みについて報告いただきました。そして会員相互の投票により優秀賞に選ばれました。https://jp-mirai.org/jp/2021/7375/

そのアジア技術交流協同組合の事務所をJP-MIRAI事務局が訪問し、取り組みや想いを伺いました。

<インタビューに応じて頂いた アジア技術交流協同組合 左から小川さん、ナディアさん、代表理事の下茅さん>
<アジア技術交流協同組合の皆さん>

Q. アジア技術交流協同組合(ASEA)のプロフィール、他の監理団体と比べた特徴を教えてください

アジア技術交流協同組合(以下ASEA)は2008年設立の監理団体です。設立メンバーがインドネシアとビジネスのつながりがあり、インドネシアに貢献したいという想いからこの団体が設立されました。代表の下茅はもともとグローバル企業に所属しており、仕事の中でインドネシアと関わる機会も多く、そんな中技能実習事業に関する依頼を受け、代表を引き受けることとなりました。
ASEAは技能実習生の受け入れをメインの事業としていますが、特にサポートに力を入れている団体です。東京本社にはインドネシア人スタッフが現在4名おり、皆日本語能力試験N1の資格を持っています。日本人スタッフも海外経験が豊富で、外国人への理解が深いスタッフが多く在籍しています。日本人と外国人双方のメンバーが上手くチームを組みながら技能実習生の受入れを行っています。
具体的には、実習生の受入れ企業に対して監理団体の担当は通常1人だと思いますが、ASEAでは日本人チームとインドネシア人チームのダブルチーム体制で対応しています。企業側、実習生側両方の悩みに応えるため、日本人(企業)の文化とインドネシア人(実習生)の文化の両方を理解できる体制が必要だと考えています。また、月1回以上はASEAの担当者が実習生へコンタクトを取って、状況を確認したり悩みを聞いたりして実習状況の把握に努めています。
ASEAの特徴の一つとしてインドネシア人実習生を中心に受入れを行っていることが挙げられます。彼らは全般に手先が器用で、真面目で素直だと多くの企業から高い評価のお声を聞きます。また、相手の気持ちを気遣うところなど日本人と似ている部分があると言われています。現在の組合員企業様が別の受入れ企業様を紹介して下さることによって、ASEAが関わるインドネシア人実習生の受入れが増加しています。

Q. JP-MIRAIの5つの行動原則の実践において特に重視していることを教えてください

以下の行動原則を特に重視して活動しています。

●【行動原則3】私たちは、働く場と生活の場の両方で、外国人労働者との相互理解を深め、信頼関係を醸成します

・メンターの設置

社内における日本人と外国人の価値観の違いを認識しその課題を解決しようとしています。
具体的には、外国人スタッフを日本人スタッフがフォローし相談に乗っていく「メンター」を2020年の9月から配置しています。
メンターを設置する前から日本人スタッフは外国人スタッフの「相談役」として時々相談には応じ、その中で彼らの課題は見えていました。今までは日本人スタッフは一個人として悩みを聞いていたのですが、そこから組織としてシステムを作っていこうとなってメンター設置に至りました。
東京オフィスにはインドネシア人が4名いますが、彼らに対し日本人メンターを2名配置しています。メンターは外国人スタッフと月1回の面談を実施しマネージャーへ共有、マネージャーから他の日本人スタッフに外国人スタッフの課題と改善策を共有していく、という仕組みです。
外国人スタッフは「文化の壁を気にして自ら発信しない」ことも多く、「大丈夫?」と聞いても「大丈夫」としか言わないことも多いです。そこで立場が近い人間が彼らの意見を吸い上げることがポイントとなります。インドネシア人実習生にも共通することですが、「こちらから聞く」というスタンスが大事だと思っています。具体的に聞くことによって、外国人スタッフは答えやすくなるようです。

・課題解決と今後の取り組み

例えば実際にあった外国人スタッフの悩みとして、集中してお祈りをする環境がないということがありました。(注:インドネシアはイスラム教徒が多く、1日5回のお祈りがあります。頻度はその方の宗教観によります。)それを受けASEAは、オフィスの中にお祈りコーナーを用意しました。また、車での移動中などでもお祈りが出来るよう配慮しました。お祈り中は外国人スタッフに話しかけたり触れたりしない、ということをASEA全体で周知して、安心してお祈りできる環境を作っています。
また、イスラム教の教えではアルコールは禁止されています。このため外国人スタッフがお酒を飲めないので社内の会合に参加しづらいということがありました。この問題もメンターが察知して日本人スタッフと検討し、外国人スタッフの為「ランチ会」を実施するようになりました。
今後のさらなる取り組みとしては、コロナが落ち着いてきたら、日本人スタッフと外国人スタッフのランチ会を再開し、更に親睦を深めていきたいと思っています。また、インドネシアにゆかりのないスタッフに対しても理解を深めてもらえるよう外国人スタッフによる語学文化講習の取り組みを再開したいと考えています。今後もメンターを活用し、外国人スタッフとの相互理解に努めていきます。

●【行動原則4】私たちは、日本及び国際社会の発展と安定に貢献するため、外国人の能力開発に尽力します

・技能実習生へのキャリアサポート

ASEAが受け入れている外国人にとって、技能実習生の時代が小中学校(土台)と考えると、特定技能に進むことは高校、大学のようなものと捉えることができます。彼らが技能実習満了後、母国へ帰るという選択もありますし、更に技能を磨くため特定技能の道へ進むことも出来ます。進路決定の際は、実習生本人の希望する進路にスムーズに移行できるよう、企業と協力しながらサポートをしています。

Q. 外国人の日本におけるキャリア観と現状の制度下での課題は何だと考えていますか。

技能実習生が3年で帰ってしまうのを残念に思う企業も多いです。熟練するにはもう少し時間が必要だと考える企業も多いからです。そのような企業からは、昨今議論されている、特定技能での在留期限を延ばすという話は歓迎されるかと思います。一方で外国人労働者(特定技能外国人)からすると、日本に長くいるためには整った生活環境も一定の給料も必要です。住居については現状外国人に対して貸し手が多くはないなどの問題が出てきます。さらに、特定技能2号に進む外国人労働者がどんどん増えることで、彼らの家族帯同による問題も出てくるかと思います。その時に、例えば日本語をまだ上手に話すことが出来ない帯同子女の教育について、責任をもって実施できる環境が日本ではまだ平均的には整っていないと言われています。私たち監理団体も今後は彼ら外国人労働者の家族の悩みや教育支援をすることが必要になってくるかもしれません。

Q. 外国人労働者を取り巻く環境に関するアジア技術交流協同組合の想いを教えてください。

私たちの組合は「世界中の人や企業にチャンスを提供する」という理念があります。インドネシアも国民の70%は中間層となりましたが、国民の30%は未だ貧困層です。この層に属する若者たちに引き続き日本に来るチャンスを提供していきたいと思っています。
また、日本国内でも地方の人口減少という問題がある中で、外国人の技能実習生が地域に入ることによって高齢の日本人労働者のモチベーションが上がるという効果も聞いています。
ぜひ海外の方に色々な地域に入って頂き、地方創生に役立ちたいと考えています。

Q. JP-MIRAIおよびJP-MIRAI会員への期待を教えてください。

JP-MIRAIのほかの会員企業のお話はとても勉強になります。もっと会員同士の交流の機会があればと思います。また、世界では国や宗教によって文化や考え方が異なります。それらを私たち日本人が学ぶことのできる専門家によるセミナー動画などがあれば是非活用していきたいと思います。

<インタビューを終えて>

下茅さん、小川さん、ナディアさんとも、お忙しい中長い時間をこのJP-MIRAIの取材のために割いていただきました。この場を借りて感謝申し上げますと同時に、JP-MIRAIとしても皆様の意見をきちんと今後の活動に活かしていきたいと思います。

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