行動原則実践事例紹介 第12回 ミズノ株式会社

2022年10月20日

本企画では、会員各位の外国人受入れ事例を紹介しています。

第12回でご紹介するのは、ミズノ株式会社(以下 ミズノ)です。同社は企業会員としてJP-MIRAIに参加され、2021年度下半期活動報告会での発表で会員相互の投票にて優秀賞にも選ばれています。 
ミズノ株式会社のウェブサイトは右記をご覧下さい。https://corp.mizuno.com/jp

9月中旬に、JP-MIRAI事務局によりオンラインインタビューを実施しました。

<取材に応じて頂いたミズノ株式会社の西村さん、安達さん>

Q. ミズノ株式会社のプロフィールを教えてください。

当社は1906年4月1日に『水野兄弟商会』として創業され、今年で創業117年になります。経営理念は「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」です。
また、創業以来、「ええもんつくんなはれや」という創業者・水野利八の言葉と共に発展してきたミズノの歴史はまさしく良いものを追い求めてきた歴史でもあります。
参考:ミズノの歴史
現在は子会社24社および、関連会社13社で構成されており、スポーツ品の製造および、販売を主な事業内容としています。
参考:ミズノの国内・海外活動拠点

Q. ミズノ株式会社のJP-MIRAI入会の経緯について教えてください

前共同事務局のASSCさんからJP-MIRAIの紹介があり、入会しました。

Q. JP-MIRAIでは、会員企業・団体に、「責任ある外国人受入れのための5つの行動原則」を実践して頂くよう呼び掛けています。本行動原則に関連する取り組みを教えてください。

行動原則2「私たちは、外国人労働者の人権を尊重し労働環境・生活環境を把握し、課題の解決に努めます。」の実践をしています。7月5日の「会員活動報告会」では、この行動原則実践の取り組みについて発表させて頂きました。

具体的には、国内外のミズノ製品を製造している拠点や工場において労働者に対する法令違反や人権侵害が行われていないかを調査し、問題があれば改善していくCSR(Corporate Social Responsibility)監査を2004年から行っています。

7月5日の「会員活動報告会」におけるミズノの発表内容

恐らく日本の企業の中で同取組みの実施は比較的早い方だったといます。当時、2004年にアテネオリンピックが開催された際、人権NGO・国際的な労働組合がオリンピック関連商品を製造する生産拠点・工場における労務管理・労働条件、労働安全衛生の改善、適正納期・価格の協議などをグローバルスポーツメーカーに求めるキャンペーンを展開しました。このキャンペーンに対応するためにミズノは、国内外の生産拠点・工場でCSR監査を開始しました。
当時はCSR監査という言葉は日本ではなじみが薄く、社内でも十分に理解が進んでいなかったため協力を得難かったと聞いています。しかし、徐々に社内の理解も深まり、今では年間30社~50社の監査を実施しています。

Q. CSR監査をどのように行っているのですか?

年に1度各担当者に工場との取引状況や従業員数などの工場情報の更新の依頼をします。工場との取引状況に基づいて500社以上ある取引先の中から監査対象工場を選出します。約150社の監査対象工場の中から、当年度の監査を実施する工場を選出しています。対象工場において3年に1度の監査を行うことにしており、本年度は、約50社以上のCSR監査を計画しています。 

2004年以来、CSR監査を行い、監査対象工場の選定方法などを見直しながら、現在の監査規模になりました。現在の仕組みになるまでに時間を要しましたが、早くからCSR監査を行ってきたことによる手ごたえやメリットも感じています。例えば、CSR監査を始めた当初は、受け身で取り組んでいたサプライヤーの方々も、今は自ら改善を進めておられます。現在の当社のサプライヤーの方々のCSR意識は、非常に高い水準にあると感じています。

また、ミズノでは、3年に1度のCSR監査の都度、不適合項目の指摘、是正というPDCA(Plan(計画)-Do(実行)-Check(評価)-Action(改善))のサイクルを回しています。監査後に、各工場が不適合項目を是正していくことにより、監査を重ねるごとに工場のCSR管理の状況が改善されています。ミズノのCSR監査では、監査結果をA/B/C/Dでランク付けを行いますが、年々Aランクと評価される工場が増えています。

その結果、当社と取引のある工場で、重大な問題のある工場は、ほとんどなくなりました。2004年から20年近くCSR監査に取り組んできた長年の蓄積が活かされている一例と思います。

Q. CSR監査を通じて感じた課題はありますか?

課題は、以下の3点です。

1)CSR監査をいかに補完するかということです。通常、監査では、1~3日間、現場に赴き工場の現場確認をします。現場の監査は工場のサイトチェックと工場関係者へのインタビューが中心となります。しかしながら、1~3日間の監査で得られる情報は限られます。
そこで、現場の声をよりタイムリーに収集するには、工場労働者の苦情処理メカニズムの導入が有効ではと考えています。しかしながら、導入には、OEM工場の経営者の了解を取らなければならないなど、制約が多くまだ導入にまで踏み込めていません。

2)ミズノと直接取引のある1次サプライヤーの監査は実施できていますが、部品、部材や副資材などの2次3次サプライヤーの監査は、試験的に実施したものの、定着しておりません。

3)CSR監査を通じての課題とは違いますが、ホームページ上で開示している工場情報の開示内容を今以上に充実させたいと思っています。

Q. 日本の「外国人労働者受入れ」についてどのようなことを感じますか?

日本の「外国人労働者受入れ」については、やはり技能実習生制度に問題点や課題があると感じます。技能実習制度の本来の目的である技能、技術、知識の開発途上国等への移転による国際貢献というより、労働者の調達で利用されているケースがほとんどで、帰国後に外国人技能実習生による技術移転がされていないケースも多いと聞いています。

ミズノでは、毎年、ミズノの監査員が現場の工場に入り、外国人労働者へのインタビューを直接行います。今年は16-17社の工場に実際に入って技能実習生インタビューなども行う予定です。その際には工場の管理者の方々の立ち合いのない、自由に意見を言える環境でインタビューを行います。インタビューでは、必ず実習生の手数料問題(日本に来る前に外国人技能実習生が背負う借金の問題)を聞いています。
昨年の監査時のインタビューでは、100万円くらいの借金を背負って日本に来た外国人労働者の話も聞きました。日本に来た最初の1年は借金返済のために働いたようです。
監査の現場確認の際には、必ず技能実習生の寮も訪問することで住環境を確認します。寮は相部屋のことが多く、住環境などは、日本に来る前に聞いていた事と違うという話も聞きました。

インタビュー時に「日本に来る前は、日本に対する憧れ、生活環境や労働環境への期待があった。現状は期待外れだったが、慣れました」というあきらめの言葉を聞いて、非常に残念に思ったこともあります。それでも、どこまで彼らの本音が聞き出せているかどうかはわからないとも思っています。

監査の記録は2012年からデータベース化しており、インタビュー時の記録など、日本国内工場の監査時の情報をまとめたものをJP-MIRAIに提出しました。それをJP-MIRAI事務局に見て頂いたことが会員活動報告会に登壇してほしいという要請に繋がりました。

Q. JP-MIRAIへの期待を教えてください。

外国人労働者の労働環境・待遇改善のため、今後もイニシアチブを取っていただきたいと思います。
具体的には、現在、最も多くの外国人技能実習生を派遣しているベトナムの送り出し機関への強制力を持った法整備・手数料規制、制度を悪用する送り出し機関・受入れ機関に対するより厳格な処罰など、政府への働きかけに加えて、外国人労働者の苦情処理メカニズムの構築に主導的な役割を担っていただきたいと思っています。   

<インタビューを終えて>
西村さんおよび安達さんには、お忙しい中長い時間をこのJP-MIRAIの取材のために割いていただきました。率直に現状や課題意識をお話され、現場を最重視し現場の外国人労働者の話を聞き続ける、ミズノ株式会社のお2人の姿勢には、取材しながら大きく感銘を受けました。この場を借りて感謝申し上げますと同時に、JP-MIRAIとしてもお2人のご意見を今後の活動にしっかりと活かしていきたいと思います。

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