行動原則実践事例紹介 第18回 薦田勉さん

2023年04月23日

本企画では、会員各位の外国人労働者受入れ事例を紹介しています。
第18回でご紹介するのは、薦田勉さんです。

Q. 薦田さんのプロフィールについて教えてください。

生命保険会社勤務を経て、平成13年9月より社会保険労務士として活動しています。また、平成22年に在留資格「技能実習」が創設され、雇入れ当初からの雇用契約が義務化された頃から深くかかわるようになりました。現在では、監理団体からの依頼をうけ、外部理事として技能実習生が働きやすい環境整備の支援を行ったり、中小企業、中小企業団体の指導、支援を行っている機関からの依頼をうけ、県下の監理団体及び実習実施機関約100社を対象に巡回指導を行ったりしています。

Q. JP-MIRAI入会の経緯について教えてください。

JP-MIRAIが掲げる「世界の労働者から信頼され選ばれる・日本」の理念に共感したこと、そしてJP-MIRAIが取り組む「ビジネスと人権」の方向性も自身の考えと近いと感じたため入会しました。

Q. 外国人労働者支援に取組むことになったきっかけについて教えてください。

外国人研修制度が技能実習制度に変化し、受入れ時より労働法規を遵守しなければならないとなった頃に中小企業、中小企業団体の指導、支援を行っている機関から外国人雇用に関するセミナー登壇依頼があり、これをきっかけに外国人労働者に対する関わりがより深くなりました。

Q. 適正な外国人労働者受入れにおける課題はどこにあると感じられていますか。

受入企業における課題
多くの企業にとって外国人労働者はまだまだ安価な労働力だと認識されていることが課題だと思います。例えば、提供する住居においては日本人には好まないものが提供されているケースも散見されます。
また、受入企業は外国人労働者により多くの日本語を学ぶことを求める傾向にありますが、一方で外国人労働者にとっての母国語や英語を学ぶといった取り組みを行っているのは数少ないように思います。相互の努力によりコミュニケーションを円滑にできるのではないかと感じています。

良い企業の特徴の1つは、外国人労働者本人が身内にも紹介したいと感じる職場であると考えます。実際に外国人労働者が定着している企業の受入れ状況を確認すると、前述のように住みやすい住居の提供がされていたり、経営者が積極的なコミュニケーションをとっていたりする職場であるとともに、最初に兄が実習生として来日した翌年、翌々年にその弟さんや従弟の方が同じ実習先を自ら選択してくれるケースが結構あるのです。また、外国人労働者側の文化・慣習について理解しておくこともあわせて重要だと感じています。

外国人労働者における課題
外国人労働者本人から本音を聞き出すことが大変難しいと感じています。例えば、監理団体が外国人労働者向けに聞き取りのアンケートを実施しても、監理団体=企業側であると認識されており、実態を掴むことは非常に難しいです。結果として、実際に支援が必要な場合には監理団体ではなくNPO・NGO等へ駆け込んでいるのが実態だと思います。このことからも、外国人労働者からの信頼を獲得することが重要であると感じています。

Q. JP-MIRAIでは、会員企業・団体に、「責任ある外国人労働者受入れのための5つの行動原則」(https://jp-mirai.org/jp/code-of-conduct/)を実践して頂くよう呼び掛けています。行動原則に関連する取り組みを教えてください。

受入企業に対する関係法令の周知・啓発活動の取組み
例えば、建設関係の給与形態は、日給制が大半である中、国土交通省より月給制への移行が促されたことで現場が混乱しているのが実態であり、現場では残業計算や雨天時の対応等含めご苦労されている状況にあるといえます。そこで、社労士として関係法令の周知啓発活動を積極的に行っています。

外国人労働者に対するキャリアパス作成の取組み
実際にキャリアパスを作成している受入企業もいます。キャリアパス作成においては短いスパンで目標設定を行い、評価基準・待遇も明確に示されています。これらのことは、日本人の若手従業員育成・定着においても活用できるので一石二鳥の取り組みだと思います。
また、受入企業からは外国労働者は短期就業となるため、育成しても仕方ないとの声が聞かれますが、実際は産業によっては、技能実習、特定技能を活用すると10年以上の滞在が可能となるため、日本人と比較しても育成することに十分な意味があるのではないでしょうか。
また、キャリアの考え方の事例として、高度人材(技人国)枠として外国人労働者を雇用した際、受入企業は外国人労働者を通訳として活用したことで本人の就業イメージと異なり、結果として退職されたという残念なケースもありました。つまり、受入企業は予め外国人労働者と職務内容の確認、評価基準、今後のキャリアについて具体的に話しておくことが重要であり、企業に対してキャリアパスの作成の働きかけを行っていきたいと考えています。

労務の専門家である社労士としての取組み
特に初めて外国人労働者を受入れる企業に対しては、労働関係法制だけでなく、入管法の基本的なルールを伝えることが社労士の大きな役割の1つだと考えています。例えば、日本人を雇用する際には様々な業務に従事させることができる一方で、外国労働者に対しては予め業務内容を定めておく必要がある等の違いを含めて伝えていきたいと思っています。また、このほかにも日本人との仕事観の違いや、風俗慣習の違いからくるすれ違いを防止するためにも、積極的にコミュニケーションをとるように働きかけることも重要だと思っています。

Q. JP-MIRAI行動原則①~⑤に取り組む中で、お気づきのことがあればお聞かせください。

監査業務においては1つ目の関係法令の遵守を当初は重視していましたが、外国人労働者支援を続ける中で、相互理解や人権に配慮する等の行動原則の5つすべてが重要だと認識しています。また、受入企業の支援を行う中で、サプライチェーンにおける行動原則の推進にあたっては発注元による発注先への係わりが非常に重要であると感じています。

Q. 受入企業に今後求められていくこととは何だと思われますか。

外国人材は単なる労働者ではなく、一人一人の人生がそこにあり、企業としてどのように人の人生に寄り添うかを考えて受入れることが今後大切であると思います。

Q. JP-MIRAIへの期待についてお聞かせください。

海外の現地情報を含め、提供いただいている情報に価値があると感じています。
今後はマルチステークホルダーで構成されているJP-MIRAIだからこそ、様々な会員のレベルにあわせた情報提供を期待します。

以上

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