リレーエッセイ『SDGsとの出会い』 日本繊維産業連盟 富吉 賢一

2024年10月10日

リレーエッセイ『SDGsとの出会い』

日本繊維産業連盟 副会長
JP-MIRAIアドバイザリー会合メンバー
富吉 賢一

SDGsの基礎概念であるsustainable development(持続可能な開発)が世に登場したのは、1987年発表の国連「環境と開発に関する世界委員会」報告書です。ノルウェー初の女性首相を務めたブルントラント氏が委員長だったため、ブルントラント委員会と称されるこの委員会の報告書は、「将来世代のニーズを損なうことなく現在の世代のニーズを満たす」という持続可能な開発の基本的な考え方を示し、その実現方策を提言したものです。

実は、報告書が取りまとめられる直前、1987年2月に東京で持続可能な開発に関する国連シンポジウムが開催されており、そこに通産省入省1年目だった私が参加したのが私にとってのSDGsとの出会いなのです。会議メモも何も手元にないのですが、世の中にはこんな考え方があるのか、と強烈な印象を受けたのを覚えています。

委員会報告書から5年、1992年に地球環境サミット、いわゆるリオサミットが開催され、「持続可能な開発」が表舞台に出て、後のMDGs、SDGsにつながっていきます。1987年時点では社会人一年生が扱うぐらいで誰にも見向きもされない政策で、悲しい思いをしましたが、それに関わることができた偶然が、今の外国人労働者関係の仕事にもつながっております。まさに「人間万事塞翁が馬」という諺のとおりだと感じます。

30年近く経ってSDGsという形になりましたが、そのターゲットは今でも「現世代と将来世代」、すなわち「人」です。日本では、SDGsを温暖化、リサイクルなどの環境問題に対応するための目標と誤解している方が多いと感じますが、SDGsは「人」が持続的に幸せに暮らせる世界を作ることが究極目標なのです。SDGs第1目標「貧困削減」、第2目標「飢餓対策」、第3目標「健康と福祉」となっているのも、人に着目した最も重要な目標だから初めに来ているのです。外国人労働者の人権対応を核とするJP-MIRAIの活動は、「人」に着目した取組としてSDGsの中核に位置するものであり、そのお手伝いができるのは嬉しいことです。

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