行動原則実践事例紹介 第1回 株式会社農園たや

2021年02月18日

責任ある外国人労働者受け入れプラットフォーム(JP-MIRAI)は設立から3ヶ月が経過し、これまでに150を超える企業・団体・個人の皆様を会員に迎えることができました。JP-MIRAIでは、責任ある外国人労働者受け入れによって選ばれる日本となることを目指し、今月(2021年2月)から毎月一回、会員各位による素晴らしい外国人労働者受け入れ事例を取材して、皆様に共有させて頂くこととしました。

第1回に登場するのは、株式会社農園たや田谷徹社長です。福井県でこだわりを持った農園を営む田谷社長は、インドネシアからの技能実習生を迎え入れるにあたり、実習生が派遣される前から実習生一人一人のビジネスプランを考え、実際に派遣された後は農業の実習のみならずキャリアプランを構築する様々なトレーニングやワークショップを実施し、実習生帰国後のビジネスまでも支援するという、まさに技能実習生の受け入れを国際貢献の場として活動されている方です。農園たやの取り組みについては以下のホームページをご覧下さい。

https://www.nouentaya.com/project/

農園たやで働く技能実習生の皆さん

そんな田谷社長にJP-MIRAIの事務局が2月5日にオンラインで取材を行わせて頂きました。取材は当初の予定時間を大幅に超えて、田谷社長の熱い想いを伺う機会となりました。

株式会社農園たや 田谷社長

2021年2月5日(金)16:30-17:30 インタビュー実施

Q.御社が行っている「インドネシア農業技能実習プログラム」を始める前の御社と技能実習生との関わり/このプログラムを始めたきっかけは?

A.2002年に農業高校の交流事業においてインドネシア語の通訳を行ったのがきっかけです。ちょうど「グレーである」「賃金が安い」などといった技能実習生の問題が起きていたころで、私自身2003年から2005年までインドネシアのボゴール農科大学大学院に留学しており、自分がインドネシアと関わっていく中で、技能実習制度がもっと素晴らしい交流・出会いの場にならないか?ということを考えました。タンジュンサリ農業高校からも要望あり、自分の農園で技能実習生を受け入れることとなったものです。

私は昔、青年海外協力隊に参加したこともあり、ともするとブラックなイメージで語られがちな技能実習制度を、ワーキングホリデーのように、あるいは青年海外協力隊の逆バージョンのように、外国で知見を得る学びの場所になってほしいと思ったのです。

Q.このプログラムを始めることによって何が変わりましたか?

A.1点目は、経験値の共有方法です。農業というとマニュアル化されていない、勘や経験、職人芸のところがありますが、技能実習生の受け入れを機にできるだけ簡素にし、より簡単なことばで言い表せるようにしました。その結果、経験値の共有が楽に進むようになり、社内の整理整頓も以前にも増して進みました。農業は家族経営がほとんどなので、曖昧になりがちなのですが、3年で入れ替わる外国人が来ることで、より分かりやすく使用、整理整頓しよう、言葉も簡単にしようという意識が生まれていると思います。

例えば、指示の出し方です。「ちょっと」収穫してというところを「一握り分」というとか、「何グラム」など、具体的に話すようになり、社内のコミュニケーションもよくなった。

そのようにした結果、作業の生産性が上がったように思います。

2点目は、日本人の若いスタッフが増えたということです。私の農園には国際協力したいというメンバーが日本全国からきています。福井は農業者の平均年齢70歳だが、私の農園は日本人スタッフも20代、30代の若者が来てくれます。これは福井の中ではかなり珍しいことです。国際協力がしたい若者が日本全国から農業の場に来るのです。私の農園のスタッフは全員県外の方です。東京からも2名来ています。とても意外でした。

Q.責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム(JP-MIRAI)は、会員企業・団体に、「責任ある外国人受け入れのための5つの行動原則」を実践して頂くよう呼び掛けています(行動原則) 農園たやの技能実習生に対する取り組みは、上記5つの行動原則を実践していると言えますか。実践しているのはどう言った取り組みか、会員への模範事例として、具体的にご教示頂ければと思います。

A.守っていると思います。もちろん1.の法令遵守は必要ですが、「選ばれる日本」というのを目指すのであれば、4. の「私たちは、日本及び国際社会の発展と安定に貢献するため、外国人労働者の能力開発に尽力します」という行動原則が大事だと思います。「あそこに行ったらキャリアアップになる」と思ってもらえないといけないと思います。今、私の農園では農業高校から来たい人が増えていますが、2名しか受け入れられず、生徒会長か学年1位かしか来られないくらいで、農園にいる実習生の中には国立大学を蹴ってきてくれた子もいるのです。

Q.責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム(JP-MIRAI)は、受け入れ企業・団体・監理団体・弁護士・学会の先生方など幅広い外国人労働者受入れに関わる方々を会員に迎えており、今後右のような活動を予定しています(「JP-MIRAIとは」に掲載の「主な活動内容」)農園たやが独自に「インドネシア農業技能実習プログラム」を実践していく中で、気づいたこと、課題と感じたこと、そして上記5つのJP-MIRAIの活動の中で今後特にJP-MIRAIが活動すべきと思われることとして、具体的にどのようなことがありますか?

A.農園の中では私ともう1名がインドネシア語が出来るのですが、社内での語学の格差や意識の格差が若干生まれています。今後そういったところに向けて、JICAのスキーム(民間連携でのJICA海外協力隊)を使って社員をインドネシアに送っていくことで、社員が向こうの現場の理解を深まっていけると思っています。技能実習生たちの生活環境を理解したうえで受け入れをするということが、大事で、安心につながります。受け入れも進むし、帰った実習生たちの地域をどうしていくのかも、共感を持って考えていけます。そういった「共感を持った人材」の育成が大きな急務だと思います。

また、技能実習生の問題で一番大きい、送り出しのところを改善していかないと思います。必要以上なカリキュラムを組むことで日本での生活に必要のない授業をして、それが実習生の借金につながるケースがあり、こちらの現場と向こうの現場とのすり合わせが必要だと思います。

続いて、田谷社長の紹介を頂き、農園たやで2年近く働くインドネシア人の技能実習生、Dadan Lesmanaさんにもオンラインで取材を行わせて頂きました。

インタビューに答えるDADANさん

2021年2月12日(金)19:00-20:00 インタビュー実施

Q.なぜ日本で働きたいと思ったのですか?

A.もともと日本のアニメーションや桜などの文化に興味があったのと、日本の農業の現代技術を勉強しようと思い、日本に来ようと思ったのです。

Q.なぜ「農園たや」を選んだのですか?

A.農業を学ぶだけでなく、ビジネスプランも学ぶことができると思ったからです。

Q.実際に「農園たや」で働いて、期待どおりでしたか?期待を上回る経験はありましたか?

A.期待を上回る経験がありました。「農園たや」は野菜農場ですが、私はインドネシアに帰ったら酪農と野菜栽培のハイブリッドの経営をしたいと考えていてそれを田谷社長に相談したところ、外の酪農農場での研修も受けさせてもらえました。

Q.あなたは、外国人労働者を受け入れる日本の企業・団体にどのようなことを期待しますか?

A.コミュニケーションの問題を重視することだと思います。

Q.それは具体的にはどういうことですか?

A.私は今大変いいコミュニケーションの下で働いているのですが、知り合いの技能実習生の中には、日本人が外国人労働者を過小評価し、「お前は何も知らない」のようなことをいう人もいるのだそうです。それではいいチームワークができないと思います。

いいチームワーク、いいコミュニケーションのためには、日本人と外国人労働者、お互いの「respect=尊敬」が必要だと思います。田谷社長がインドネシア語を話せるのはコミュニケーションに役立ってはいますが、より重要なのは「態度」、そして「respect=尊敬」だと思います。「農園たや」では、そのおかげで社員がファミリーのようなのです。

Q.JP-MIRAIに外国人労働者の視点から何を期待しますか?

A.日本人と外国人労働者の間にはコミュニケーションの問題がしばしば存在すると思っています。JP-MIRAIには、ぜひこの問題を研究して頂き、解決策を考えてもらいたいです。

田谷社長、Dadanさんとも、お忙しい中長い時間をこのJP-MIRAIの取材のために割いて頂きました。この場を借りて感謝申し上げますと同時に、JP-MIRAIとしても皆様の意見をきちんと今後の活動に活かしていきたいと思います。

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