「選ばれる日本に向けた望ましい外国人材受入れ制度を考える」第1回 「移住労働者の脆弱性」開催報告

2022年06月06日

今後より多くの外国人材の来日が予想されることや、本年は外国人材の受入れ制度の見直しが行われるなど、その制度の在り方について注目が高まる中、JP-MIRAI(責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム)は、公開研究会「選ばれる日本に向けた望ましい外国人材受入制度を考える」シリーズの1回「移住労働者の脆弱性」をオンラインで5月31日(火)に開催しました。当日はJP-MIRAI会員と会員以外の参加者を合わせ97名の方に参加いただきました。 

 シリーズ第1回は、外国人材が抱える脆弱性を「基調講演」と「現場報告①②」を踏まえて理解した上で、それぞれのステークホルダーが取り組むべきことについてパネルディスカッションを行いました。

基調講演では、グローバルHRストラテジー代表の杉田昌平弁護士より「移住労働者の脆弱性とその要因」を説明明いただきました。国際労働移動は、送出国から受入国、そして帰国という移動プロセスがあり、このプロセスを通した移住労働者の脆弱性を把握する必要があることや、永住または短期的な受入制度の是非ではなく、移住労働者本人の選択と脆弱性を中心に考える必要があることが紹介されました。そして、「全ての脆弱性要因をなくすことはできないため、脆弱性要因を利用しない/利用させないという基本的な行動規範を確立できることこそが重要」と力説いただきました。

 次いで「現場報告①」として、朝日新聞GLOBE編集部の織田一様より「特定技能制度の課題」として国としての支援体制が不十分であることや都市に集中する傾向があること等が報告されました。また、「現場報告②」では、自動車整備の技能実習生の監理団体であるあいおい人材交流協会理事長の井上秀様より「手数料問題の解決に向けて」と題し、同協会がフィリピンに加えベトナムから実習生を迎えるにあたり、現地送出し機関と協力して自動車整備と日本語を実地訓練してから受入れる仕組みや、手数料を請求しないという合意をするために行った工夫についてお話しいただきました。

 各登壇者の講演後、各ステークホルダーが取り組むべきことについて、パネリストからの発表後に、モデレーターの投げかけによりディスカッションを行いました。

 <パネルディスカッション:パネリストと発表トピック>

①「国際的な要請と国の役割」 ILO駐日事務所 プログラムオフィサー/渉外・労働基官  田中竜介様

②「企業・雇用主の役割-サプライチェーン管理」GCNJ SDGsタスクフォース 渡辺美紀

③「送出し機関・監理団体/登録支援機関等の役割」株式会社ジェイサット 森川晃様

④「地域の役割」佐賀県国際交流協会理事長 黒岩春地様

ILOの田中竜介様は、ILOが2019年に発行した移住労働者に関する「公正な人材募集・斡旋に関する一般原則・実務指針 募集・斡旋手数料と関連費用の定義」に紹介されている国の役割(実務指針)や、最近の日本政府およびG7での動向について説明。国連グローバルコンパクト・ネットワークジャパンのSDGsタスクフォースの渡辺美紀様(JP-MIRAI事務局)は、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に照らして企業がサプライチェーンを通して外国人労働者の課題を把握し改善することの重要性と、そのためには各社が行動指針を定め事業特性に応じて創造的に実施すべきであること、その取組事例が紹介されました。続いて、ミャンマー最最大手の日系人材紹介会社かつ送出し機関であり日本語学校運営を行う株式会社ジェイサット森川晃様より、外国人労働者が日本で働くにあたっては、関係者(人材本人、送り出し機関、監理団体や登録支援機関、受入企業)が相互に情報共有のレベルを高め透明性を高めることが重要、とのご指摘をその背景と改善事例とともにいただきました。最後の登壇者である佐賀県国際交流協会理事長の黒岩春地様からは、佐賀県における外国人労働者支援の経験に基づいて、技能実習制度の大幅修正の必要性と具体的な修正提案をご披露いただきました。

最後にJP-MIRAI事務局(JICA上級審議役)の宍戸健一様をモデレーターとして会場からの質問を含めた登壇者への質疑が行われました。

参加者からのアンケートでは、「制度の問題だけでなく、『脆弱性』から課題を考えるという新しい視点に気づいた。」「国、企業、送り出し機関、地域それぞれの視点からのお話しを伺うことができ、非常に勉強になった。」「日本は移民を認めていないという先入観が働き『移民労働者』に無知な事業者が多いと思う。このようなセミナーをもっと幅広く実施していたただきたい。」などの声と同時に、「もっと質疑応答やディスカッションの時間を設けてほしかった」といったご指摘をいただきました。

移住労働者に共通する「脆弱性」に着目すると取るべき施策や姿勢も変わってくることを、発表者・参加者ともに気づかされました研究会でした。

6月30日には第2回「送出し国ごとの労働者の脆弱性の違い~より良い受け入れに向けて」を開催予定です。ぜひこちらもご参加ください。

改めて、第1回研究会に参加くださいました皆様、ありがとうございました。

本研究会の全講師より資料公開のご了承をいただきましたので、公開します。※資料の無断転載を禁じます。

資料リンク

基調講演:移住労働者の脆弱性とその要因 グローバルHRストラテジー代表 杉田昌平様

現場報告①「特定技能制度の課題」朝日新聞GLOBE編集部 織田一様

現場報告②「手数料問題の解決に向けて」あいおい人材交流協会理事長 井上秀様

パネルディスカッション

ILO駐日事務所 田中竜介様 「国際的な要請と国の役割」

JP-MIRAI事務局/GCNJ SDGsタスクフォース 渡辺美紀 「企業・雇用主の役割-サプライチェーン管理」

株式会社ジェイサット 森川晃様 「送出し機関・監理団体/登録支援機関等の役割」

佐賀県国際交流協会理事長 黒岩春地様 「地域の役割」

Page Top