【実施報告】公開フォーラム「外国人労働者のプロセス全体にわたる脆弱性を考える」(詳細版)【2022年12月9日】

2022年12月29日

2022年12月9日に、「責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム」2022年公開フォーラム「外国人労働者のプロセス全体にわたる脆弱性を考える」を、JICA市ヶ谷ビル国際会議場及びオンラインのハイブリッド形式で開催しました。同フォーラムの第1部では、2022年のJP-MIRAIの活動内容を報告するとともに、2022年の会員活動報告会にて優秀賞を受賞した企業・団体/個人会員への表彰状授与を行いました。第2部では、「ビジネスと人権」、「地域における多文化共生で取り組むこと」をテーマにそれぞれ先進事例を紹介しながら、パネルディスカッションを行いました。当日はオンライン・会場合わせて230名の方にご参加いただきました。

1. 概要
(1) 会議名:責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム(JP-MIRAI)2022年公開フォーラム「外国人労働者のプロセス全体にわたる脆弱性を考える」
(2) 開催日:12月9日(金)15:00~18:00(公開フォーラム第1部 活動報告・会員活動報告会優秀賞の表彰、公開フォーラム第2部 主催者・来賓挨拶とビデオメッセージ、セッション1「JP-MIRAIがビジネスと人権で取り組むべきこと」、セッション2「多文化共生で取り組むべきこと」)
(3) 場所:東京都新宿区市ヶ谷本町10-5 JICA市ヶ谷ビル2階 国際会議場【+オンライン配信】

2. プログラム
第1部 JP-MIRAI活動報告
(1)2022年活動ハイライト
(2)会員活動報告会優秀賞の表彰
第2部 外国人労働者のプロセス全体にわたる脆弱性を考える
(1)主催者挨拶 独立行政法人 国際協力機構 理事長 田中明彦
(2)来賓挨拶 内閣総理大臣補佐官(国際人権問題担当) 中谷元氏
(3)来賓挨拶 出入国在留管理庁長官 菊池浩氏
(4)外国人労働者からのビデオメッセージ
(5)パネルディスカッション セッション1 JP-MIRAIがビジネスと人権で取り組むべきこと
モデレーター:JP-MIRAI事務局/宍戸健一
パネリスト:
・株式会社SUBARU 調達本部調達統括部 根岸伸行氏
・一般財団法人大阪外食産業協会 副会長 井上泰弘氏
・日本マクドナルド株式会社 取締役 執行役員 サステナビリティ&ESG/渉外/総務担当 宮下建治氏
(6)パネルディスカッション セッション2 多文化共生で取り組むべきこと
モデレーター: 公益財団法人日本国際交流センター 執行理事 毛受敏浩氏
パネリスト:
・公益財団法人佐賀県国際交流協会理事長 黒岩春地氏
・NPO法人トゥマンハティふくおか代表理事 弥栄睦子氏
・エベレスト・インターナショナル・スクール・ジャパン初代理事長 ブパール・マン・シュレスタ氏
(7)閉会挨拶 一般社団法人 JP-MIRAIサービス 代表理事 矢吹公敏

第1部 2022年JP-MIRAI活動報告
(1) 2022年活動ハイライト
JP-MIRAIが2022年に行った主要な活動について報告しました。外国人労働者への情報提供(ポータルサイト&アプリ「JP-MIRAIポータル」)、相談・救済窓口(「JP-MIRAIアシスト」事業)、コミュニケーション強化(「JP-MIRAIフレンズ」)、企業・団体の取組みの支援(公開研究会、セミナー等開催)、会員間の協力(コラボ事業)、国内・海外への発信、その他、ホームページやSNSでの発信の取組みなどを実施しました。
2023年は、活動の重点項目を(1)外国人労働者との情報共有・共助、(2)「ビジネスと人権」における協働、(3)学びあいと内外への発信の3つの柱に定め、活動を推進していきます。

2022年活動ハイライト 資料はこちら

(2)会員活動報告会優秀賞の表彰
2022年に2回実施した会員活動報告会で優秀賞に選ばれた企業・団体/個人会員の方に、表彰状の授与を行いました。(表彰企業・団体/個人:特定非営利活動法人Adovo、ミズノ株式会社、吉開章氏、一般社団法人磐田国際交流協会、明治ホールディングス株式会社、榑松佐一氏)

優秀賞を受賞した一般社団法人磐田国際交流協会の高塚さん、
特定非営利活動法人Adovoの松岡さん、個人会員の吉開さん 写真:JICA

第2部 外国人労働者のプロセス全体にわたる脆弱性を考える

(1)開会挨拶 JICA理事長 田中明彦
JP-MIRAIは、2020年の設立以来、多くの方の協力により、大きな発展を遂げてきました。会員数も増え、活動の幅も広がってきました。皆様のご協力に御礼申し上げます。今年は、2月のロシアによるウクライナ侵攻を機に世界が直面する複合的な危機が更に深刻化しました。こうした危機を乗り越えるには世界の協調行動が求められます。日本はODAによる開発協力含め、国際的な協調行動に積極的に関与していますが、JP-MIRAIはこれを支える重要なプラットフォームとなります。日本が外国人労働者の人権を守ること、人間の安全保障を国内で実践できることを世界に示すことができて初めて協調行動に必要な国際的な信頼を得ることができるからです。
労働者の人権に関して、国際スタンダードが確立されつつある中、日本政府は9月に、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を発表しました。JP-MIRAIのマルチステークホルダーによる取り組みが、このガイドラインの実践につながり、外国人労働者の人権尊重に寄与することを期待しています。世界を自由主義陣営と権威主義陣営の対立構造で捉えたうえで、如何に権威主義陣営を取り込むことができるか、といった議論があります。権威主義陣営の国の人の中に自由主義陣営の国に魅力を感じる人が増えること、これによって中長期的に権威主義陣営の国が変化するきっかけを作ることが重要です。権威主義陣営の国の方々が来日して、人権が尊重された状況の下で生活を送る中で、日本の価値観に触れ、帰国後もこうした価値観や日本への親近感を持ちつつ母国の社会・経済の発展に貢献する、これによってその国が自由主義陣営に少しずつ近づいていく、このことが複合的な世界的危機に対する国際的な協調行動の基礎になります。JP-MIRAIにはこれを促進する大きな力があります。
教育、職場などあらゆる場面で多文化共生を実践していくためには、日本社会全体が抜本的に変わる必要があります。マルチステークホルダーのプラットフォームであるJP-MIRAIは、「あるべき日本社会の縮図」であり、JP-MIRAIが模範的な取り組みを進めることにより日本社会の変化を促すことを願っています。

独立行政法人 国際協力機構
理事長 田中明彦 写真:JICA

(2)来賓挨拶 内閣総理大臣補佐官(国際人権問題担当) 中谷元氏
現代の国際社会においてSDGsや「ビジネスと人権」の重要性が広がる中、日本での外国人労働者の待遇などの問題は、国際的な人権保護や自社のブランディングにおいて重要なテーマとなっています。外国人材との共生のための環境の整備に向けてJP-MIRAIには尽力いただいていますが、関係者の皆様と本格的に動き出したことは大変有意義で敬意を表したいと思います。日本政府は、国連人権理事会で支持された「ビジネスと人権に関する指導原則」を着実に履行するために、2020年に「ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)」を策定し、昨年12月には私の下に、関係府省庁会議を設け、省庁横断的な取組を行ってきました。本年9月には、政府の関係府省庁会議で、今年アジアで初めての業種横断的な「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を決定し、政府のガイドラインとして公表しました。企業活動における人権尊重の取組が求められているところ、このガイドラインは国連指導原則を始めとする国際スタンダードを踏まえ、企業に求められる人権尊重の取組について、日本で事業活動を行う企業の実態に即して、具体的かつ分かりやすく解説したものです。私は、今月初めに、スイスでの国連人権高等弁務官事務所主催の「ビジネスと人権フォーラム」に出席し、このガイドラインについてスピーチ、解説し、ステークホルダーと意見交換をしました。会場では、アジアのみならず欧米や世界中の政府、経済界・市民社会などのステークホルダーの皆様から日本の取組への高い関心と期待を感じました。今後もガイドラインの国内外での普及に努めるとともに、特にアジアの各国政府や、企業とも協力して、ガイドラインに沿った企業活動を後押ししていきたいと考えています。
国内外のサプライチェーンで人権尊重の取組が進むことで、企業の競争力、持続可能性を高めると同時に、国際市場におけるアジアをより一層魅力的なものにしていくことに繋がっていくものと期待しています。政府自身も人権デュー・ディリジェンスについて模範となるよう、政府調達の在り方について検討するワーキンググループをつくり意見調整をしています。
技能実習生を含む外国の人との交流は、各国との良好な関係の礎となります。すべての人が個人の尊厳と人権を尊重し、差別や偏見なく暮らせる社会を目指したいと思います。今年は技能実習制度と特定技能制度の見直しについて本格的な検討が始まりました。私も官邸から関係大臣をバックアップしていきたいと考えています。
JICAが長年の開発途上国での人材育成等を通じて築き上げたネットワークや、知見は素晴らしいものがあります。その知見を用いたJP‐MIRAIの相談・救済事業を通じて、多くの方々に「ビジネスと人権」への理解が深まっています。来年度の新たな活動によってさらにビジネスの変化が進むことを大いに期待しています。

内閣総理大臣補佐官
(国際人権問題担当) 中谷元氏
写真:JICA

(3)来賓挨拶 出入国在留管理庁長官 菊池浩氏
我が国の出入国在留管理の現状については、在留外国人の数は一時期リーマンショックや東日本大震災の影響もあり減少した時期もありましたが、本年6月末には約296万人と過去最高となり、平成元年末に比べ約3倍に増加しています。在留資格別にみると多い順に、永住者、技能実習、技術・人文知識・国際業務となっています。このほか、平成31年に創設された特定技能制度については、昨年末は5万人にとどまっていましたが、本年9月末時点では約11万人となり、着実に受入れが進んでいます。技能実習制度、特定技能制度の見直しについて、両制度は法律による検討の時期に差し掛かっていることから、先月、外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議において「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」の開催が決定されました。第一回会議は年内に開催し、その後来年秋ごろまで議論いただく予定になっています。外国人との共生社会の実現に向けた取組みについては、「外国人との共生社会の実現のための有識者会議」で取りまとめられた意見書において、SDGsの理念もふまえ、目指すべき外国人との共生社会の3つのビジョンを示していただきました。これを踏まえ、本年6月、「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」において、外国人との共生社会の実現に向けたロードマップを作成しました。このロードマップでは我が国が目指すべき共生社会のビジョン、その実現のために令和8年度までに取り組むべき中長期的な課題、具体的施策を示しており、出入国在留管理庁としても、関係省庁と共に外国人との共生社会の実現に向けた取り組みを着実に進めています。外国人受入れに関しては様々な課題がありますが、関係者と適切に連携して役割を果たしていきたいと考えています。

出入国在留管理庁長官
菊池浩氏 写真:JICA

(4)外国人労働者ビデオメッセージ
日本で働く外国人労働者の3名の方より、日本に来て困ったこと、日本で働いてよかったと思うこと、受入企業へのメッセージなどについて語っていただき、ビデオメッセージ形式で紹介されました。

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(5)パネルディスカッション セッション1 「ビジネスと人権」とJP-MIRAIの役割
様々な企業のパネリストにより、「ビジネスと人権」の視点から、外国人労働者の人権保護の取り組みの報告と、JP-MIRAIへの期待について議論をして頂きました。

■株式会社SUBARU 調達本部 調達統括部 根岸伸行氏
SUBARUグローバルサステナビリティ方針には「人権尊重」をキーワードとして入れています。また、ありたい姿を「笑顔をつくる会社」と定め、自社に関係するすべてのステークホルダーの笑顔をつくることを目指しています。人権方針は「法令・規範の遵守」「人権デュー・ディリジェンスの実施」を二本柱とし、重点課題を付属書に纏め、サプライチェーンへの働きかけも行っています。調達部門では①人権尊重責任に関するコミットメント表明、②負の影響特定評価、③負の影響停止軽減、④追跡調査、⑤情報公開、⑥是正措置の順で人権デュー・ディリジェンスに取り組んでいます。救済メカニズムに関して、既存の自社の相談窓口に加え、今回JP-MIRAIの相談救済パイロット事業へ参加しました。マルチステークホルダーの相互協力により、公正で有効な課題解決ができることと、アプリや多言語対応など、個社では構築が難しいインフラを協力して構築できることに期待しています。

■一般社団法人 大阪外食産業協会 副会長 井上泰弘氏
大阪外食産業協会では外国人労働者・技能実習制度に関する活動の重点課題として、「2つの認証、1つの認定制度の運用」「特定技能2号、技能実習制度の導入に関する関係省庁への働きかけ」「適正かつ健全な外国人雇用に繋がる啓蒙活動」を掲げています。外国人材適正雇用推進認証制度も作成し、受入企業、人材紹介会社、外国人材のスキルに対し実態調査を行いながら認証を行っています。より精度の高い認証制度に改善していくことや、業界毎の課題を把握し、外国人労働者と日本企業の双方にとってベストな人権課題解決の方法を探ることをJP-MIRAIで行っていきたいです。

■日本マクドナルド株式会社 取締役 執行役員 サステナビリティ&ESG/渉外/総務担当 宮下建治氏
「おいしさと笑顔を地域の皆さまに」をパーパスとして掲げています。人権尊重や強制労働の排除は、自社のバリューズの「Serve」「Inclusion」「Integrity」に関わると考えます。我が社のサプライヤーの皆様には、まずサプライヤー行動規範に合意していただき、行動規範をポリシーとして落とし込んだサプライヤー職場環境管理プログラム(SWA)を使って年一回監査を行っています。SWAの課題は主に二つあり、技能実習生の採用関連費の自己負担と、職場環境です。より包括的な職場環境を提供することが、より良い企業文化をつくり、会社の信用、そして人的資本の強化につながると考えています。

―サプライチェーン管理について、企業内で理解があってもサプライヤーの理解が得られないという声もあります。現場での苦労や取り組みはどのようなものがありますか。

根岸氏 人権方針→人権デュー・ディリジェンス→救済の順に人権の取り組みを進めています。サプライヤー向けの説明会を定期的に行っていますが、理解いただけないこともあります。その際、理解を促すためのポイントは三つあると考えており、一つ目はメリットの訴求、二つ目はデメリットと感じられていることの払拭、三つ目は対等で密なコミュニケーションを行うことです。それらを行うことにより、理解していただけるサプライヤーが増えてきたと感じています。

―サプライヤーにとってのメリットは何でしょうか。

根岸氏 サプライヤー説明会では労働者・SUBARU・サプライヤーの三者にとってのメリット・デメリットを説明しています。サプライヤーにとって、労働者が元気になれば労働生産性があがるほか、労働者間での会社に対する評判の向上につながることがメリットであると説明しています。

宮下氏 監査の説明会の際に併せて啓発活動をしています。SWAを実施している取引先では理解が進んできたと感じていますが、取引を始めたばかりのサプライヤー様にご理解いただくことに苦労しています。また、グローバル水準で監査をできる人材が不足しており、人材育成も課題だと感じています。

―訪日前の手数料に関して、発見した際の是正はどのように対応されていますか。また、サプライヤーとブランドホルダーにおける労働者のコストの配分に関して、どのように考えていますか。

宮下氏 人権尊重の志を持つ企業と、コンプライアンス意識の高い監理団体や送り出し機関との良いマッチングができているところもあれば、できていないところもあると感じています。斡旋料の領収書が無い、あったとしても領収書として内容が不足しているなどの課題が多くケースバイケースで話し合いを行っています。コスト負担に関しては、サプライヤー、フランチャイジー、マクドナルドの三本足で相互に信頼しながらリスクを共有しています。

―認証制度について、最近は自治体で取り組まれるケースが多く立ち上がってきました。業界団体からの立ち上げは初めてと伺いましたが、制度立ち上げまでにどれくらいの期間を要しましたか。また、企業に理解いただくためのポイントはどこにありましたでしょうか。

井上氏 最初は、外国人雇用に関してのプロジェクトを3人で立ち上げて、その後、認証制度を始めました。個人で技能実習生の国に赴き、話を聞き、一緒に寝泊まりすることを行っていました。国内外で外国人労働者や留学生の声を直接聞き、本当に困っていることは何で、それを解決するにはどうしたらよいかを考えながら活動しています。大阪外食産業協会の会員には大手企業もいらっしゃいますが、外国人のことになると耳を傾けてくれなかったことがありました。その際企業訪問をし、それがなぜかを探ったところ、触れていただきたくないという空気感がありました。自分たちができることは何かを考え、行政書士や日本語学校、監理団体、送り出し機関、外国人を集めて意見を聞き、企業の矛盾を突き止めることで改善に結びつくと考えています。

―大阪外食産業協会の認証制度ではすでに10社が認証を取得されたとのことですが、今後はどのように進められるでしょうか。

井上氏 外国人労働者を雇用していても入管法を知らない方が多いと感じています。昨今の社会情勢から外国人の入国者数が増えることが予想され、また外国人労働者に関するトラブルが増えている中、現在は大阪外食産業協会へ多くの問い合わせをいただいています。

―外食産業以外にもこの認証制度の流れは広がっていくと考えられますか。

井上氏 全国に広げないといけないと思います。JP-MIRAIは意見をぶつけ合い議論をしていく場であると思っています。各ステークホルダーの考えや意見を本音で話すことができれば、色々な場所で良い方向に動いていくと考えています。

―JP-MIRAIの来年度の活動についてご意見をいただきたいと思います。現在パイロット事業として取り組んでいるJP-MIRAIアシストに加え、外国人セルフチェックシートや認証制度を検討していますが、特に協働という面でコメントをいただきたく思います。

井上氏 JP-MIRAIには、各ステークホルダーが意見を述べ合い、議論ができる場となることを期待しています。

宮下氏 JP-MIRAIアシストの相談・救済窓口には技能実習生からどのような意見が集まり、どのような環境であるのかを理解する機会があると良いと思っています。また、企業、監理団体、送り出し機関の先進事例の共有も需要があると考えます。そして、関係省庁・団体と情報共有しながら進めていくことが大切なので、JP-MIRAIにはそのコミュニケーションのハブになってほしいと期待しています。

根岸氏 自動車一台当たり三万点の部品があり、一つ一つのサプライヤーを追うことに非常に苦労しています。労働者の生の声を聞きたくてJP-MIRAIアシストに参加した、という経緯があります。このような事業はマルチステークホルダーの協力なしには取り組むことが難しいため、引き続きJP-MIRAIアシストを継続していただきたいと考えています。

―最後に、JP-MIRAIに期待することや、協働という点でコメントをいただきたいと思います。

根岸氏 「外国人労働者の権利を尊重することで選ばれる日本になること」というJP-MIRAIの目標は崇高であり、一社では到底思いつかないものだと感じます。自社もその目標に感銘し会員入会をしましたので、今後もJP-MIRAIの活動に参加、協力していきたいと思います。

宮下氏 外国人労働者を安い労働者として雇用するのではなく、人財として愛情をこめて育成することで、会社のインクルーシブな組織づくりや、やりがいを感じる環境、そして人的資本強化やブランドトラストの評価につながり、企業価値向上に寄与するという循環を、経営陣に対する勉強会やメッセージとして伝えることも、JP-MIRAIに期待しています。

井上氏 私は、外国人の現場を自分の目で見て、直接声を聞くことに徹してきました。日本では、外国人労働者を単に労働力として見るのではでなく、彼らが母国に帰国した際にどのように活躍するかが見えているでしょうか。今は在留資格を作ってほしいと活動しています。私は技能実習制度自体が悪いものではないと考えています。本当に外国人が日本にとって必要なのか、まだまだ日本は環境が整っておらず、トップとボトムの意識のギャップが現実としてあると思います。JP-MIRAIは率直な議論をぶつけられる、戦う団体であってほしいです。

株式会社SUBARU 調達本部 調達統括部
根岸伸行氏 資料はこちら 写真:JICA

一般社団法人 大阪外食産業協会 副会長
井上泰弘氏 資料はこちら 写真:JICA

日本マクドナルド株式会社 取締役 執行役員 サステナビリティ&ESG/渉外/総務担当 宮下建治氏 資料はこちら 写真:JICA

(6)パネルディスカッション セッション2 多文化共生で取り組むべきこと
モデレーターに日本国際交流センター 執行理事 毛受敏浩氏をお迎えし、さまざまな立場のパネリストにより、どのように各セクターが連携して多文化共生を考えるかを議論いただきました。

■公益財団法人 佐賀県国際交流協会 理事長 黒岩春地氏
佐賀県国際交流協会は30年前に外向きの国際交流と内向きの国際理解の二本柱でスタートしましたが、現在は「内なる国際化」として、7000人を超える佐賀県内の外国人の方々との地域づくりとサポートを主な活動としています。具体的には、外国人相談窓口、災害多言語支援センター、コロナワクチン接種サポート、ウクライナ避難民受け入れをしています。また、サッカーを通じて積極的な国際交流を図ることを目的とし、サガン鳥栖や佐賀県庁、JICA九州と連携し、サッカー大会を行いました。

■NPO法人トゥマンハティふくおか 代表理事 弥栄睦子氏
トゥマンハティふくおかでは、職業性ストレス簡易調査票(57項目)の多言語化事業や、福岡市での「ムスリムの人も気軽に訪れ、ともに暮らせる街づくりに向けた研究」発表、JICA海外協力隊まつり in FUKUOKA 2022への参加、多文化共生ワークショップの開催などを行ってきました。今年度は、職業性ストレス簡易調査票のバージョンアップと、実施代行できる仕組みづくり、国を超えたメンタルヘルスのフォロー体制整備に取り組んでいます。

■エベレスト・インターナショナル・スクール・ジャパン 初代理事長 ブパール・マン・シュレスタ氏
幼稚園から高校三年生までを対象に英語で教育を行う学校「エベレスト・インターナショナル・スクール・ジャパン」を設立し、現在は東京都多文化共生推進委員会委員をつとめ、多文化共生とネパールについての講演活動、在日ネパール人コミュニティの諸活動を通じて、外国人当事者として現場の声を発信しています。多文化共生において最も重要なのが交流であると考えており、地域や学校での交流機会を創出し、また積極的に参加することで、さらなる相互理解を促進していきたいと思っています。

―ネパールから見て、日本での暮らし、仕事面をどのよう捉えていますか。近年ネパール人の来日人数が増えている中で、どのように感じていますか。

シュレスタ氏 現在日本に在住するネパール人は12万5千人を超えています。彼らにとっては特に日本語の壁が大きいと感じます。来日前に日本の情報を把握しておらず、来日後に不明点が多くトラブルが起きることがありますが、その際はネパール人コミュニティやSNSで問い合わせることがスタンダードのようです。

―来日するネパール人の中には、ネパールの農村部から日本の東京都心に住む方も多いと聞きます。その際にオリエンテーションをするべきではないかと以前お話されていましたが、そのあたりはいかがでしょうか。

シュレスタ氏 右も左もわからない状態で来日するネパール人もいます。日本での生活に関するオリエンテーションは企業内で行われるところもあれば、ない企業も多いです。自治体にはチラシ等がおいてあるケースが多いかと思いますが、基本的な生活の情報に関するオリエンテーションがあるとより良いと思います。

―福岡県ではいかがでしょうか。福岡県での在留外国人の暮らしについてどのようにお考えでしょうか。

弥栄氏 福岡市内は大学や日本語学校の留学生が多く、労働者は少ないです。学生の生活は学校に守られていると感じます。多くの技能実習生は福岡市内ではなく、福岡県内の工場で働いています。

ー外国人労働者に対する職業性ストレス簡易調査票の多言語化に関して、何かきっかけがあったのでしょうか。

弥栄氏 EPAの制度を利用して来日している外国人労働者たちと知り合った際、仕事と資格取得のための試験勉強とのバランスで悩んでおり、だんだん元気がなくなっていく様子を見ました。雇用関係もあり人間関係を悪くしたくないという思いから職場に相談はできなかったようです。当NPOはインドネシアの文化を知っているという前提があり、インドネシア人にとって心の垣根がなく本音が言いやすいのです。そのため、自分たちの団体に本音を漏らしてくるという流れとなっています。そこでストレス簡易調査表の結果が客観的なデータとなり企業に改善を提案とできるのではないかと思い至ったのです。

―佐賀県ではいかがでしょうか。

黒岩氏 外部や行政には言えないようなことを相談に来られる外国人が多くいらっしゃいます。地元に留学し、地元が好きになり、地元で仕事をしたいという想いを持つ外国人がいて、かつ雇用したいという地元企業があるのにも関わらず、留学資格から就労資格へ変更できず、帰国するケースが多く、非常に残念です。少しずつ変わっていけたらと期待しています。

―外国人は日本語の壁はどのように超えていけると思いますか。また、日本社会が歩み寄るべきだと思われますか。外国人の努力をどのように企業はサポートできるでしょうか。

シュレスタ氏 日本で生活するうえでは勿論生活レベルまでの日本語を勉強しなければいけないと思いますが、日本もグローバル化に向けて多言語化する努力をする必要があると思います。仕事の能力があっても日本語ができずに仕事ができないということもあります。IT人材にも日本語能力試験レベルのN2を求める企業が多いですが、それは本当に必要でしょうか。また、日本語ができないことでライフラインを整備できないことはハードルが高いと感じます。

弥栄氏 福岡県はまだグローバル化が進んでいないことから、日本語の能力が必須で、これに加えて専門分野とコミュニケーション能力が必要になるわけですから、日本で就職するのはたいへんです。しかし、日本で成功を収めていくチャンスは誰でもあるので、日本語の習得をしっかりすること、そしてその努力は報われるということを外国人に伝えていく必要があります。

黒岩氏 地方で働く場合は日本語がマストであり、最低でもN2がないと話にならないというのが現実です。大学では英語で授業を受けられるため日本語はそこまでできなくても良い環境であったのに、就職時に日本語が必須条件で困るといったケースも多いです。働きながら日本語を学べるシステムや、英語で働くことができる企業があっても良いと思います。

―最後に、多文化共生の側面からJP-MIRAIに何を期待しますか。

黒岩氏 JP-MIRAIにはぜひ現場のことを知ってもらいたいです。例えば、在日外国人が運転免許の切り替えに大変な苦労をしていることは、各地方で大きな問題となっています。現場で何が起きているかを把握し、可能であれば、国へ要望や提案をする組織であってほしいです。

弥栄氏 監理団体や特定技能登録支援機関の考え方、企業のそれぞれの取り組み姿勢に差が激しすぎると感じます。社会保険労務士と契約している企業を優先して外国人労働者を受入れる仕組みを作ったり、必ず外国人労働者にはストレスチェックを義務化したり、メンタルヘルスを専門にした専門家を置くなど、夢を持って来日した外国人労働者を受入れ、育てるためのシステムづくりをしていただきたいですし、JP-MIRAIにも切り込んでいって取り組みを進めてほしいです。

シュレスタ氏 JP-MIRAIが掲げている様々な目標達成のために頑張っていただきたいです。また、JP-MIRAIアシストの中の言語にぜひネパール語を入れていただきたく、何か協力できることがあればさせていただきたいです。現場の実態調査を行い、ポリシーをプラクティスに変えていただく段階だと思います。外国人は労働力だけではなく定住する住民であることを認識し、各ステークホルダーがどのように協力していけるかを考えながら事業を進めていただきたいです。

モデレーター 日本国際交流センター
執行理事 毛受敏浩氏 写真:JICA

公益財団法人 佐賀県国際交流協会 理事長
黒岩春地氏 資料はこちら 写真:JICA

NPO法人トゥマンハティふくおか 代表理事
弥栄睦子氏 資料はこちら

エベレスト・インターナショナル・スクール・ジャパン 初代理事長
ブパール・マン・シュレスタ氏 資料はこちら 写真:JICA

(7)閉会挨拶 一般社団法人 JP-MIRAIサービス 代表理事 矢吹公敏
JP-MIRAIは設立以来多くの皆様の協力により、外国人労働者に関する課題解決のためのプラットフォームとして発展してまいりました。今年度はJP-MIRAIポータルや外国人労働者の相談窓口、救済パイロット事業(JP-MIRAIアシスト)、JP-MIRAIフレンズといった具体的なプロジェクトが立ち上がりました。また、多くの研究会やセミナーを開催することができました。皆様の日頃のご協力に感謝申し上げます。国連のビジネスと人権に関する指導原則が脚光を浴び、企業でも人権デュー・ディリジェンスの実施が求められています。同指導原則では、各国に国家基盤型の非司法的苦情処理メカニズムの構築を求めています。その役割を担うことがJP-MIRAIに求められていると考えます。他方で、日本では少子高齢化が加速する中、我が国が「選ばれる日本」となることは重要であり、日本を目指す若者が、日本で人権侵害を受け、失意の帰国をするようなことはあってはならないと思います。来年は政府により技能実習制度や特定技能制度の見直しが行われると発表されており、国内だけでなく国際社会からも、日本がどのような制度を作り、外国人の責任ある受入れを行っていくのか注目を集めることになると思います。JP-MIRAIとしましても、来年はより多くのステークホルダーの方々にご参加いただき、様々な課題に取り組むとともに、内外への発信も強化していきたいと考えています。また、組織全体を一般社団法人化し、実施体制を整備・強化していく予定です。引き続き皆様のご協力とご支援を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。本日は誠にありがとうございました。

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