【実施報告】受入企業・団体等の認証について考える研究会 第3回「民間企業の取組みとJP-MIRAIの役割」【2022年11月17日】

2023年02月06日

望ましい外国人労働者の受入れには、適切なステークホルダーとの連携が必要である一方で、その探し方、連携関係の構築が難しいといった課題があります。JP-MIRAIは、外国人労働者の雇用や受入れに関して望ましい行動をとっている企業や団体等が選ばれやすくなるための仕組みとして、認証制度の活用を検討する研究会、「受入企業・団体等の認証について考える研究会」を開催して参りました。この度、その最終回として第3回「民間企業の取組みとJP-MIRAIの役割」を開催し、52名の方にご参加頂きましたので、その内容をご報告します。

●まず、本セミナーの冒頭では事務局より今までの研究会の振り返りを行いました。
第1回研究会では、既に認証制度を運用されている自治体や業界団体にご参加頂き、外国人労働者に係るステークホルダーのコンプライアンス遵守は認証の前提要件であることが統一的な見解として示されました。その上でコンプライアンス違反の実態を把握することが困難であるとの課題への対策として、例えば、加入前に誓約書の提出を義務付けるといったような取り組みをご紹介頂きました。他方、自治体・業界団体による認証制度の目的は違反者の摘発ではなく、例えば自治体であれば、同自治体内企業の外国人労働者の適切な受入れ環境の向上であることが共有されました。そして、JP-MIRAIによる認証制度については、特に個々の取組みだけでは解決できないような手数料問題等に関連した項目を含めて新たな認証制度として設計することへの期待をお寄せ頂きました。

第2回研究会では、国際基準による認証や評価制度について関係企業よりご紹介頂き、その理念や活用メリットについての情報共有を行いました。外国人労働者に選ばれる日本になるためには、日本の基準のみならず、国際的に認められた厳格な基準を満たすことを示す必要があるということ、そのうえで、適切なサプライチェーン管理を推進するためには、バイヤーからサプライヤーに対しての、認証に取組むメリットを丁寧に説明するといったエンゲージメントが必要不可欠であることが報告されました。グローバルスタンダードを目指すためには、人権意識の向上と、バイヤーとサプライヤーが一体となった取り組みを継続することが非常に重要であるということが示された研究会となりました。

●続いて、民間企業の取組みに関して次の2名のゲストをお招きしてお話をお伺い致しました。

①受入れ企業チェックシートについて
株式会社One Terrace 取締役 阿久津 大輔 様

最初に、株式会社One Terraceの阿久津様より受入れ企業向けの日本法ならびに国際法規が基礎となる外国人雇用管理アセスメントとその雇用管理チェックリストをご紹介頂きました。
このアセスメントが誕生した背景として、外国人雇用管理に関して、第三者評価によって外国人材を適正に登用する企業であることを証明する必要性の高まりがあるとのお話がございました。その理由として、①一部の企業における対応や人権問題により企業全体が社会から厳しい目にさらされる環境に置かれていること、②企業の社会的責任が問われる時代になり、その対応次第で企業の成長ドライバーでもある外国人材から選ばれなくなる可能性があること、の2点が挙げられました。
本アセスメントを通じて企業は社会的な信頼を獲得するだけでなく、問題の早期発見や継続的な改善に繋げられるとのことでした。直接的なメリットとして、①外国籍社員や従業員が適正雇用企業であることを認識できる、②責任者が外国籍社員の登用や活躍支援を推進しやすい環境になる、③第三者機関により適正雇用事業者であることが証明されること、が挙げられました。間接的なメリットとして、①社会的信用が増し、企業イメージが良くなる、②社会課題への対応ができる、③レピュテーションリスクを低減しガバナンス強化に繋がる、とのお話がありました。
また、本アセスメントの具体的な内容として、導入企業のニーズ(「自社管理」「子会社管理」「取引先管理(サプライチェーン)」「フランチャイズ管理」の4点)に対して7つの調査項目(①採用②労務③人事制度④人材マネジメント⑤働きがい⑥人権⑦社内合意)と40の小項目を、事前アンケート・実地調査等を通じて行っているとのご紹介がありました。アセスメント後は、調査報告書をまとめ、S、A、B、C、Dの5段階で評価を行い、B以上(S、A又はB)の評価を得た企業を適正雇用が行われているとして、1年更新で認定証を発行しているとのことでした。

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②外国人雇用に関する認証制度等の構築支援について
株式会社ワールディング マネージャー 池邊正一朗 様

次に株式会社ワールディングの池邊様より外国人雇用に関する認証制度等の構築支援、具体的には、同社による「雇用ガイドライン策定支援」とそれに係る「受入基準制定・運用支援」についてご紹介頂きました。
支援にあたっては、基準を満たすための実施推奨施策を案内することを重視されているとのことでした。実際に、ガイドライン策定の支援を行ううえでは、主体者、例えば、受入企業、ライツホルダー、自治体、日本政府等によりぞれぞれの目的があるため、「誰の目線でガイドラインを策定するか」が重要あり、多様な視点を加味して基準となるKPIを設定する必要があるとのお話がございました。
適切な受入基準の制定に向けてのポイントとして、受入企業とライツホルダーの2つの目線からのお話を頂きました。まず、受入企業目線として、主な課題を2点共有頂きました。1点目は、企業の理念・経営理念実現のための行動指針に即した「受入基準の制定」、2点目は円滑な外国人活用、不測事態への即時対応を実現させるための「情報・ノウハウの集約」です。これらは非常に多くの企業が直面している共通課題であるとのお話がありました。次にライツホルダー目線として、国際的規範・ガイドラインにいかに準拠できているかがポイントであるとのお話がございました。その例として、英国の「ビジネスと人権研究所(IHRB)」主導で作成されたダッカ原則を基準として、ベトナム人技能実習生247名に対してアンケート調査を実施したところ、「費用徴収」や「労働組合に入る権利」そして、「グリーバンスメカニズムの整備」といった点が不十分との結果になったとの報告を頂きました。また、遵守が軽視されがちなコンプライアンスとして、「日本語学習機会の提供とその範囲」、「寄宿舎規定」、「監理団体・登録支援機関の選定」があるとのことでした。最後に、ライツホルダー及び投資家として、「人的資本可視化のための開示事項の設定と開示」が重要とのお話がありました。これらを踏まえたうえで認証制度を検討することも可能ではないかとのご示唆を頂きました。

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●次に、JP-MIRAI事務局より現在検討中の認証制度についてご説明しました。本認証は、外国人労働者を適正に受け入れようとする団体等のインセンティブを高めることを目的としていること、認証制度構築にあたっては様々なステークホルダーの皆様と協働するほか、既に認証制度を運用している自治体・業界団体・民間企業とも連携を図ることで信頼性や知名度の向上を目指すことをご説明しました。また、本認証の基本的な方向性として、法令順守状況を中心に適格性を確認する基本認証を中心とすることで、大企業のみならず中小企業の皆様にも取組みやすい内容とすることをお伝えしました。
さらに、認証制度とあわせて、外国人労働者に適切な情報を提供すべく、JP-MIRAIポータルと連動し、母国語で、外国人労働者に法令順守状況を質問する、外国人労働者向けセルフチェックシートの導入を準備していることをお伝えしました。

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●続いて、新たにゲストを2名お招きして、パネルディスカッションを行いました。まず、冒頭でゲスト2名よりそれぞれのお取り組みをご紹介頂きました。

群馬県 地域創生部ぐんま暮らし・外国人活躍推進課 外国人活躍推進係長 後藤 昌宏様
群馬県の後藤様からは、群馬県多文化共創カンパニー認証制度についてご紹介を頂きました。
「多文化共創カンパニー認証制度」は、外国人労働者受け入れに関して、特に優れた取り組みを行う事業者を認証すること、そして、その取り組みを国内外に情報発信をしていくことがセットになった認証制度であることをご紹介頂きました。また、この認証制度の普及を通じて、県内企業に対しては、外国人材が活躍できる働く場づくりのヒントとして頂き、一方で外国人材に対しては、群馬県に活躍できる環境が整っていることを知り、群馬県を働く場として選んでもらうことを目的に取り組んでいるとのお話を頂きました。

アジア技術交流協同組合 代表理事 下茅 亮様
次にアジア技術交流協同組合の下茅様より、監理団体のお立場からお話を頂きました。
外国人受入れに携わる監理団体・登録支援機関等が急速に増えている一方で、人権に特化した指標が無いことについて問題提起を頂きました。これらの課題を解決するため、また、外国人労働者の方が団体を見分けるための印が必要とのご意見を頂きました。

続いて、以下のパネリストによるパネルディスカッションを行いました。
パネリスト①
群馬県 地域創生部ぐんま暮らし・外国人活躍推進課 外国人活躍推進係長 後藤 昌宏氏
パネリスト②
アジア技術交流協同組合 代表理事 下茅 亮氏
パネリスト③
株式会社One Terrace 取締役 阿久津 大輔 氏
パネリスト④
株式会社ワールディング マネージャー 池邊 正一朗氏
パネリスト⑤
JP-MIRAI事務局 宍戸 健一
モデレーター
JP-MIRAI事務局 秋山 映美

1つ目の議題として、コンプライアンス違反に対する対応方法について意見交換を行いました。参加者からは法令遵守は認証を受けるうえでの最低基準であるとの見解が示されました。また、ワンテラス様、ワールディング様におかれましては、コンプライアンス違反を確認した場合について、改善提案報告書にてフィードバックを行い、適正化に向けて伴走支援を行っているとのことでした。また、ワールディング様からは監理団体のコンプライアンス状況を確認する方法として「外部監査報告書」「事業報告書」「(監理団体の)優良要件適合申告書」を求めるべきではないかとのアドバイスを頂きました。

2つ目の議題として「手数料問題」について意見交換を行いました。参加者からは手数料問題は複雑であり、センシティブな問題であるとの声がありました。例えば、教育費と手数料の区分基準の設定の難しさや、手数料をゼロとした場合の必要経費の負担を誰が担うのか、といった点で議論がありました。そのうえで、サプライチェーン全体で適切にコスト分散しているかどうかを認証基準の1つに入れることは非常に有益とのお話を頂きました。

3つ目の議題として日本全体で外国人労働者の受入れ環境を向上するという観点から、JP-MIRAI認証はどのような水準で行っていくべきか、について議論を行いました。参加者からは「最低限のコンプライアンス確認であれば、定期監査を実施している監理団体を認証審査機関として活用できるのではないか。」「監理団体に丸投げにならないように受入企業を巻き込んだ取組みが必要なのではないか。」「監理団体だけがチェック機能を持つのではなく、第三者機関が別の視点でダブルチェックすることが有効ではないか。」等のご意見を頂きました。

4つ目の議題として参加者それぞれのお立場からJP-MIRAI認証の構想についてご意見を頂きました。全体として、認証制度やそれに紐づくチェックシートは受入企業・支援機関・外国人労働者にとってもコンプライアンスを再確認する良い機会になるのではないかとの前向きなご意見を頂きました。

そして、今後更なる検討を進めるうえで、下記の通り具体的なアドバイスを頂戴いたしました。
<認証制度全体について>
・認証の仕組みの中に監査等も含む非常に重いチェック項目があることから、「認証取得のメリット」を明確に打ち出すことが重要である。
・「認証取得のメリット」はブランドだけでなく、入管手続きの簡易化や、送り出し機関からの優先的な人材確保、企業単独での技能実習生の受入れ等の具体的なメリットとなるものが実現できると望ましい。
・この認証は海外での採用活動に非常に有効となる可能性がある。海外での認証の普及に向けた仕組み作りが重要である。
・外国人労働者の受入れに関わる多くの団体が参加できるよう費用負担を下げる仕組みを検討したうえでの価格設定が必要である。
・自治体との連携にあたっては、既存の認証制度とJP-MIRAIの認証制度が同一の目的、方向性が担保できるか、また実現可能な実施体制の調整ができるのかが重要である。

<セルフチェックシートについて>
・外国人労働者向けセルフチェックシートに関しては、対象が外国人という特別視した設問を検討するのではなく、一度日本人に置き換えて、導入した場合にはどのような影響が出るのかを経営者目線で検討することで新たな課題がみえてくるのではないか。
・チェックシートの設問は曖昧にせず、具体的な例示等を示しながら明確化する必要がある。
・より多くの監理団体に参画頂くためには企業向けセルフチェックシートに「認証を受けた監理団体を通して受け入れているか」、監理団体向けには「認証を受けているか」等を設問に入れることも一案ではないか。

群馬県 地域創生部ぐんま暮らし・外国人活躍推進課 外国人活躍推進係長 後藤 昌宏氏の資料はこちら

アジア技術交流協同組合 代表理事 下茅 亮氏の資料はこちら

●研究会終了後の参加者からのアンケートでは「認証制度は非常に意義のあることだと感じた」「地方自治体でも利用できる制度の完成を期待している」「第三者認証としての信頼性の担保やメリットが必要」「監理団体の選定等を含めて、グループ会社に任せきりになっている企業が多いとの指摘から大きなヒントを得た」という声を頂きました。

第3回「受入企業・団体等の認証について考える」公開研究会にご参加くださいました皆様、ありがとうございました。本研究会の全講師より資料公開のご了承をいただきましたので、公開いたします。

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