Q. 明治ホールディングス株式会社のプロフィールを教えてください。
明治グループは赤ちゃんからお年寄りまであらゆる世代の皆さまに寄り添い、毎日の生活に欠かせない「乳製品」「菓子」「栄養」「薬品」などの幅広い分野の製品を通じて、「おいしさ・楽しさ」の世界を広げ、「健康・安心」への期待に応えてゆくことを使命として事業活動を営んでいます。
明治グループは、食と健康のプロフェッショナルとして事業を通じた社会課題の解決に貢献し、人々が健康で安心して暮らせる「持続可能な社会の実現」を目指します。そのために策定したのが「明治グループサステナビリティ2026ビジョン」です。持続可能な社会の実現に向けて、明治グループが2026年までに取り組む活動を整理しています。「明治グループサステナビリティ2026ビジョン」は3つの活動テーマ(「こころとからだの健康に貢献」「環境との調和」「豊かな社会づくり」)とそれらに共通するテーマ(「持続可能な調達活動」)という大きく4つの柱で構成されており、この中の「豊かな社会づくり」の中で「人権の尊重」という取り組みに注力しています。
*明治グループサステナビリティ2026ビジョンについてはこちらをご参照ください
Q. JP-MIRAI入会の経緯について教えてください
全社で外国人労働者の人権尊重に関する取り組みを進めている中で、お世話になっているコンサルタントがJP-MIRAIの共同事務局をされており、その方にご案内いただき入会しました。
Q. JP-MIRAIでは、会員企業・団体に、「責任ある外国人受入れのための5つの行動原則」(https://jp-mirai.org/jp/code-of-conduct/)を実践して頂くよう呼び掛けています。下記の行動原則に関連する取り組みを教えてください。
行動原則2「外国人労働者の人権を尊重し労働環境・生活環境を把握し、課題の解決に努めます。」の実践をしています。
当グループでは2016年に企業行動憲章を改定し、人権に関する項目を追加しました。企業行動憲章に則り、人権ポリシーや調達ポリシーを制定し、自社およびサプライチェーン上の人権尊重の取り組みを行っています。また、当グループとしてグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンに加盟し、「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の4分野10原則を支持し、その実現に向けた取り組みを推進しています。
2019年には、グループ人権会議という、傘下の事業会社を束ねながらグループ全体で人権尊重を考える会議を立ち上げ、これにより人権に関する取り組みが加速したといえます。
Q. 人権会議立ち上げ当時の社内の反響はどのようなものでしたか?
当グループが人権デューデリジェンスの具体的な施策を始めたのが2019年ですが、そのころは「うちは人権についてすでに取り組んでいるよね」「今から何かやらなきゃならないの」というような社内の雰囲気はありました。当グループでは自社のハラスメントなどの問題にはもちろん取り組んでいましたが、もっとバリューチェーン全体に視野を広げて人権課題にとりくまないといけないと社内で話をした際、「そこまでやらなければならないのか」という反応は多々ありました。
2019年にグループ人権会議を立ち上げた後、世間でも技能実習生に関する問題がニュースで取り上げられたりして、社内でも「やらなければならないんじゃないか」という空気が徐々に広がってきました。
Q. 外国人労働者の人権尊重に注力することになったプロセスを教えてください。
当グループのバリューチェーン上の人権リスク・課題を洗い出し、JP-MIRAI共同事務局も務めているコンサルタントの助言を得て、全てのリスク・課題を深刻度と発生可能性の2軸で評価・マッピングし、当グループのバリューチェーンにおける顕著な人権課題を特定しました。特定した15個の顕著な人権課題の中の一つが、「外国人労働者における人権課題」です。当グループで特定した顕著な人権課題はホームページでも公開しています。
https://www.meiji.com/sustainability/society_creation/human_rights/
Q. 優先課題として「外国人労働者における人権課題」が浮かび上がった中で、どのような行動を起こされたのですか?
2019年当時は自社およびグループ会社の外国人就労者数もはっきりしておらず、現状がわからない状態でした。そのため、自社グループ内でどこに何人の外国人労働者が働いているのかについて調査を行い、実態を把握するところから始まりました。
2019年から、外国人労働者を多く雇用しているグループ会社を訪問し、ヒアリングを行いました。その後コロナ禍となりましたのでオンラインに切り替え、外国人労働者を雇用しているすべてのグループ会社・自社工場についてヒアリングを行いました。
その結果、事業所ごとに採用担当者の知識と対応に大きな差があることがわかりました。
また、受入れ事業所の職場環境については、法律で定められていることは守られており、大きなリスクは見当たらなかったものの、外国人労働者の契約内容や作業内容の理解、作業中の安全や避難経路についての周知などはまだまだフォローが必要だということが見えてきました。受入れ事業所によっては、作業手順などを外国人労働者が理解できる言語で表示したり、ルビを振るなどしているところもありましたが、一方でそのような配慮が十分でない事業所もありました。
Q. 外国人労働者の雇用に関するガイドラインを制定されたとのことですが、詳しく聞かせてください。
2022年6月に「明治グループ外国人労働者雇用ガイドライン」を制定しました。
このガイドラインの制定にあたっては、日本国内の法令だけでなく、厚生労働省の外国人雇用管理指針や、The Consumer Goods Forum(CGF)のガイドライン、ビジネスと人権ロイヤーズネットワーク/外国人労働者弁護団/外国人技能実習生問題弁護士連絡会のガイドラインなどを参照し、日本の国内法規にとどまらず国際基準に合わせて作成しました。当グループでは、現在のところ、技能実習生の雇用はほとんどありませんが、外国人労働者の課題の中でも技能実習生の手数料問題は一番大きな課題ですので、ガイドラインにはあえて仲介手数料に関連する項目も入れました。
このガイドライン策定後、昨年9月に最初の説明会を行い、そこで初めて、外国人の就労状況を見える化していきたいということを各事業所にお願いしました。さらに、このガイドラインが自社だけでなくサプライヤーも対象とすることも説明しました。現在も、継続して個別に各事業所のヒアリングを行い、同時に、委託事業者等のサプライヤーに直接このガイドラインを説明し、一緒に良い職場環境を作りましょうと呼びかけています。
Q. ガイドラインの説明会を行う中でどのような反応がありましたか。
サプライヤーの中でも外国人労働者の課題に対する認識が異なることがわかりました。これから、現場に入り、Face To Faceで各事業所やサプライヤーと一緒に取り組みを進めていかなければならないと考えています。
事業所の中には、サプライヤーが雇用している外国人労働者や間接雇用(派遣)の外国人労働者に関しては「雇用している事業者に任せています」という意識を持っているところも多かったので、同じ職場で働いている外国人労働者については、私たちも気にかけて取り組みを進める必要がありますという説明をしているところです。
Q. 外国人労働者の「人権尊重」に取り組む中で、社内・グループ会社・サプライヤーに変化は見られましたか?
そもそも最初は、自社グループの中で外国人労働者がどこで何人働いているかわからない状態でした。それを可視化していく過程で、グループ各社やサプライヤーの管理部門、人事部門などへの問い合わせが必須となり、現在はそのような協力部門と一緒に外国人労働者の人権尊重に取り組みができていることが収穫だと思っています。このような取り組みの中で協力部門の意識にも変化がありました。
今後も、関係部門の人たちの意識と施策の底上げを図っていくことが重要だと思っています。
また、サプライヤーに関しては、むしろ自分たちの方が勉強させていただいているというくらい、真摯に取り組んでいるところが多いという発見がありました。そのサプライヤーに対して、弊社からヒアリングさせて頂くことで、「明治って外国人労働者の問題に真剣に取り組んでいるんだ」と伝えることができたのではないかと思います。
Q. JP-MIRAIおよびJP-MIRAI会員への期待を教えてください。
次年度から明治グループはJP-MIRAIの「責任ある外国人労働者の受入れ企業協働プログラム2023」に参加する予定です。このプログラムのように、外国人労働者が言語の気兼ねなく相談できる窓口の設置が必要と考えています。
現在行っている事業所ヒアリングでは、「明治で働いてよかった」と思って母国に帰る外国人労働者を増やしていきたい、という話を一生懸命しています。
今後とも、JP-MIRAIには、JP-MIRAIの規範に沿った行動を会員に推奨してもらえるとよいと思います。