【実施報告】選ばれる日本に向けた望ましい外国人材受入れ制度を考える 第2回「送出し国ごとの労働者の脆弱性の違い」【2022年6月30日】

2022年07月21日

今後より多くの外国人材の来日が予想されることや、本年は外国人材の受入れ制度の見直しが行われるなど、その制度の在り方について注目が高まる中、JP-MIRAI(責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム)は、公開研究会「選ばれる日本に向けた望ましい外国人材受入制度を考える」シリーズの第2回「送出し国ごとの労働者の脆弱性の違い」をオンラインで6月30日(木)に開催しました。当日はJP-MIRAI会員と会員以外の参加者を合わせ169名の方にご参加いただきました。シリーズ第2回は、労働者の脆弱性は、送出し国の具体的な制度や特徴により異なることを理解したうえで、ビジネスと人権の観点から取り組むべきことについてパネルディスカッションを行いました。

【基調講演】
基調講演では、西村あさひ法律事務所 パートナー ヤンゴン事務所代表の湯川雄介様より、「送出し国により脆弱性の違いがあるのか?中国、ベトナム、フィリピン、インドネシアの例より」と題し、送出し国の具体的な制度や特徴を踏まえ、検討すべき視座についてご説明いただきました。「送出し国と受入国の脆弱性の関連性があるのか、また、どうすれば課題を解決することができるのかを考えることが必要である」とお話しいただきました。また、受入国では政府の取組に加え、企業が人権デューディリジェンスを行う際に、どのようなフェーズでどのように取り組んでいくか考えることが大切であることに加え、国の構造的問題は企業単体で取り組むのが難しく、その場合の対応も検討する必要があることをお話しいただきました。

【パネルディスカッション】
ビジネスと人権の観点から取り組むべきことについて、パネリストからの発表及び、モデレーターの投げかけによりディスカッションを行いました。

<モデレーター>
グローバルHRストラテジー 杉田昌平様
<パネリスト>
西村あさひ法律事務所 パートナー ヤンゴン事務所代表 湯川雄介様
京都大学大学院文学研究科 准教授 安里和晃様
帝人フロンティア株式会社 環境安全・品質保証部 部長 岡本真人様
グローバルコンパクト・ネットワークジャパン SDGsタスクフォース 渡辺美紀様

京都大学の安里和晃様には、斡旋料と失踪率の関係性や、高額な斡旋料ほど市場のシェアを握るという国際労働市場の失敗についてご説明いただきました。また、「日本人に対する職業紹介手数料は労働者負担がほぼゼロなのに対し、外国人に対しては高額な斡旋料を許容しているのはなぜか。良心に依存するのではなく、支える制度が必要である」というご指摘をいただきました。

帝人フロンティア株式会社の岡本真人様からは、自社のCSR調達管理や、技能実習生に対して行ったインタビューから実態を把握し、グループ会社で協働して一つの監理団体に統一した上で手数料負担を行っていることや、技能実習生に対し母国の文化を尊重した丁寧な指導、居住環境の整備や健康管理といった取組についてご紹介いただきました。

国連グローバルコンパクト・ネットワークジャパンのSDGsタスクフォースの渡辺美紀様からは、国連ビジネスと人権に関する指導原則には、国内法と国際原則が相反する場合、国際原則の尊重を追及すると記載されていることについてご説明いただいたうえで、グローバルに繋がっている企業に求められるのは、ハードローを守るのみのコンプライアンスではなく、国際原則を尊重することであると強調されました。そして、外国人労働者を雇用する際に、企業として意思表示をしていただき、人権にどう向き合うか方針を立て、考え方を示すことが求められていることをお話しいただきました。

参加者からのアンケートでは、「斡旋手数料の抑制が効かなくなっている今、最も喫緊の課題で、企業のグッドプラクティスはもっと社会的に認知されるべきだと思った」、「『最近は求人を出しても人が集まらない』という声をよく聞くが、これまでの集め方に問題があったという事が意識されてこなかった結果なのかと考えさせられた」、「解決には政治的決断が必要だというメッセージに共感した」という感想と同時に、「JP-MIRAIを中心とした外国人材を取り巻く環境改善に向けた取り組みが、広く一般の方々に周知されることを期待したい」、「問題点は共有できたと思うが、課題解決のためのアクションについてもっと議論が必要だ」というご意見もいただきました。

送出し国ごとに異なる移住労働者の「脆弱性」に着目し、受入国である日本として、受入企業として行動する際に求められているのは、国際原則に則った行動であることをあらためて考える研究会となりました。参加者からも、更なる議論が必要というご意見もいただき、JP-MIRAIでもこの課題については、引き続き、研究会などで議論を深めていきたいと思います。
第2回研究会に参加くださいました皆様、ありがとうございました。
7月28日には第3回「受入国と移住労働者の脆弱性~受入国の制度は移住労働者の脆弱性に影響するか」を開催予定です。ぜひこちらもご参加ください。(参加申込み・詳細はこちら

本研究会の全講師より資料公開のご了承をいただきましたので、公開します。※資料の無断転載を禁じます

開会挨拶

基調講演「送り出し国により脆弱性の違いがあるのか?中国、ベトナム、フィリピン、インドネシアの例より」西村あさひ法律事務所 パートナー ヤンゴン事務所代表 湯川雄介様 資料はこちら

「国際労働市場の失敗:高額斡旋料が好まれる構造を通じて構築される労働者の脆弱性」京都大学大学院文学研究科 准教授 安里和晃様 資料はこちら

「外国人技能実習制度に係る取組み」帝人フロンティア株式会社 環境安全・品質保証部 部長 岡本真人様 資料はこちら

「ビジネスと人権の観点を活かす企業の視点」グローバルコンパクト・ネットワークジャパン SDGsタスクフォース 渡辺美紀様 資料はこちら

パネルディスカッション

Page Top