【実施報告】選ばれる日本に向けた望ましい外国人材受入れ制度を考える 第3回「受入国と移住労働者の脆弱性~受入国の制度は移住労働者の脆弱性に影響するか」【2022年7月28日】

2022年08月19日

外国人材の受入れ制度の在り方について注目が高まる中、7月28日(木)、JP-MIRAI(責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム)は、公開研究会「選ばれる日本に向けた望ましい外国人材受入制度を考える」シリーズの第3回「受入国と移住労働者の脆弱性~受入国の制度は移住労働者の脆弱性に影響するか」をオンラインにて開催しました。当日はJP-MIRAI会員とそれ以外の参加者を合わせ117名の方にご参加いただきました。 本研究会では、受入国の制度と移住労働者の脆弱性の関係について、各方面で活躍されているご登壇の皆さまより、それぞれの観点からご報告をいただき、その内容を踏まえたパネルディスカッションを行いました。

【基調講演】
基調講演では、筑波大学人文社会系教授の明石純一様より、「移住労働者の脆弱性を考える―人の国際移動は管理されうるのか―」と題し、時代や環境に伴う人の国際移動に関する制度の変化と、移住労働者の脆弱性の捉え方についてご説明いただきました。具体例を用いて、受入国制度が移住労働者の脆弱性を決定づけるとは必ずしも言えないとされ、特定の制度によって移住労働者の脆弱性を解決することは困難であり、移住労働という行為自体が内包する脆弱性や、受入国の構造・環境・事情が生む脆弱性が存在することをご指摘されました。また、まとめの中で、制度から零れ落ちる方が一定数いる中で、コミュニティレベルの柔軟な支援の在り方や柔軟な対応が求められていることや、長期的視点に立ち外国人労働者との共生について現実的な議論を行う必要があることをお話しいただきました。

【パネルディスカッション】<パネリスト登壇者>
筑波大学教授 明石純一様
東海大学 教養学部 教授 万城目正雄様
メコン・マイグレーション・ネットワーク コーディネーター 針間礼子様
JICA国内事業部/弁護士法人Global HR Strategy 杉田昌平様(兼モデレーター)

東海大学の万城目正雄様には、「技能実習制度の成り立ちとこれまでの経緯」について、主に技能実習制度の変遷と、主要な送り出し国と日本の間のルートごとの性質の違いをご説明いただきました。移住労働者の脆弱性を生み出す要因は、受入国の制度だけでなく、アジアの経済・社会構造に起因することも多いことを踏まえ、日本の受入制度と送出国の送出制度の調和(harmonization)を図ることが大切ではないか、また、「人材育成」の(対外関係における)制度運用面の意義を再確認しておくべきだとお話しいただきました。

メコン・マイグレーション・ネットワークの針間礼子様からは、「送出国から見たホスト国の制度」と題し、送り出し国からの視点から見た日本という受入国と、求められることについてお話しいただきました。権利保護や技術移転の観点でメコン諸国から日本への期待が高い中で、日本における労働力不足の補充という観点だけでなく、日本への期待と信頼をもって日本産業に貢献しようとしている労働者たちの受け入れについて、送り出し国と受入国双方のマルチステークホルダーによる連携が必要であることをお話しいただきました。

JICA国内事業部/弁護士法人Global HR Strategyの杉田昌平様からは、「受入国の制度と移住労働者の脆弱性に関する論点整理の試み」と題し、移住労働者の脆弱性に関する視点をご紹介いただきました。移住労働者の受入数とその権利がトレードオフの関係にあること、「国境の開放」と「平等な市民権」といった要求が両立しない状態(リベラルパラドクス)が存在するといった指摘や、ホスト国の制度の類型、脆弱性の要因等について視覚化され、移住労働者の脆弱性を検討するうえで、移住の期間や目的、権利、数からのアプローチが必要であると指摘いただきました。

パネルディスカッションでは、受入国の制度が移住労働者の脆弱性に対して果たす役割に関して、人材育成を旗印に移住労働者の脆弱性を支援する意識醸成や、受け入れる日本社会や企業が責任を持って情報提供や受入支援をしていくこと、企業による模範的なふるまいにインセンティブを与えることがより良い労働者を招き入れて良い循環をつくりだすこと、といった意見が示されました。

参加者からのアンケートでは、「技能実習制度の30年のフェーズ分けや、三つのルートの整理が大変わかりやすかった」、「送り出し国の視点からの議論は今までに聞いたことがなく、とても参考になった」、「人材育成を旗印にすること、送り出し国の理解と協力が前提となること、ホスト国の脆弱性軽減のための真摯な取り組みが重要であることが再認識できた」という感想と同時に、「もう少しライフサイクルに沿った長期的視点をもち、外国人労働者の自立や自律の過程にも注目して欲しかった」、「新たな多文化共創社会への構築に向けた議論もしていただけると良い」というご意見もいただきました。

移住労働者の「脆弱性」を緩和するために受入国である日本の制度はどのような役割を果たすことができるか、その脆弱性について理解を深め、様々な制度との関係といった視点から考えることができた研究会となりました。参加者からも、更なる議論が必要というご意見もいただき、JP-MIRAIでもこの課題については、引き続き、研究会などで議論を深めていきたいと思います。
第3回研究会に参加くださいました皆様、ありがとうございました。
第4回研究会の開催の詳細につきましてはJP-MIRAIホームページやSNSで随時情報を更新する予定です。ぜひご参加ください。

本研究会の全講師より資料公開のご了承をいただきましたので、公開します。※資料の無断転載を禁じます。

各登壇者の動画・資料リンク

開会挨拶

筑波大学教授 明石純一様 資料はこちら

東海大学 教養学部 教授 万城目正雄様 資料はこちら

メコン・マイグレーション・ネットワーク コーディネーター 針間礼子様 資料はこちら

パネルディスカッション JICA国内事業部/弁護士法人Global HR Strategy 杉田昌平様の資料はこちら

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