行動原則実践事例紹介 第8回 NPO法人トゥマンハティふくおか

2021年12月22日

本企画では、会員各位の外国人労働者受け入れ事例を紹介しています。
第8回でご紹介するのは、NPO法人トゥマンハティふくおかです。トゥマンハティふくおかは会員としてJP-MIRAIに参加され、2021年度上半期活動報告会ではご発表もいただきました。
トゥマンハティふくおかのウェブサイトは右記をご覧下さい。https://temanhati.jimdofree.com/
11月下旬に、JP-MIRAI事務局によりオンラインインタビューを実施しました。

<代表理事 弥栄睦子さん>

<トゥマンハティふくおかの皆様>

Q:NPO法人トゥマンハティふくおかを設立した経緯について教えてください。

1997 年度留学生から学ぶ外国語「インドネシア語初級クラス」を受講したメンバーで、翌年インドネシア語学習サークルを設立しました。そこからインドネシア留学生や研修生と友達づきあいが始まり、現NPOの理事はこのメンバーが中心となっています。
1997年に起こったアジア通貨危機の影響により、インドネシアの通貨「ルピア」が暴落したことで、インドネシアでは経済的な理由から学校に通えない子どもたちが急増してしまいました。それを知った九州大学のインドネシア人留学生たちが、自分のお小遣いからインドネシア現地の子どもたちに支援を始めました。2002年には、留学生側から、チャリティ・イベントを開催したいので手伝ってほしいと頼まれ、『第1回インドネシア・チャリティ・デー』で、その活動をお手伝いするようになったことが団体設立のきっかけです。
2003年7月には、任意団体「インドネシアの子供の教育を救う会」を設立し、ほぼ毎年留学生と一緒にチャリティ・イベントを開催し、経済的理由などで通学を続けられない小・中学生へ奨学金を届けてきました。EPA(Economic Partnership Agreement=経済連携協定)で看護師、介護福祉士の方々が日本に来たり、技能実習生や大学の私費留学が増えたり、国内でもサポートをしなくてはならない人が増えてきたことから、2014年9月に名称を「NPO 法 人トゥマンハティふくおか」とし、特定非営利活動法人化しました。

Q:トゥマンハティふくおかの主な活動内容について教えてください。

トゥマンハティ(Teman Hati)とは、インドネシア語で『心の友』という意味です。日本に住んでいても、インドネシアに住んでいても、居住している国に関わらず、同じ権利を持って暮らせる社会にしたいという思いで名付けました。活動は国際交流、国際協力、多文化共生の三本柱で行っています。インドネシアの子供の教育支援に加え、福岡の国際化推進など、さまざまな活動を通して、地球市民ひとりひとりが「Teman Hati (心の友)」として安心して暮らせる真のユニバーサル社会実現を目指しています。

Q:外国人労働者支援の取り組みを教えてください

【職業性ストレス簡易調査票(57項目)多言語化事業】
EPAで来日していた看護師候補者と出会った際に、滞在期間中に国家試験に通らないといけないというストレスと、母国の家族に仕送りをしないといけないため身体的にも精神的にもいつも疲れていたように見えました。また、企業の受け入れ環境が整っていないことによるインドネシア人技能実習生のトラブルを実際耳にしており、メンタル面でもサポートが必要と感じていました。
国内で働くEPA看護師・介護福祉士候補者や技能実習生のため、簡易性ストレスチェック57項目を7か国語(カンボジア語、フィリピノ語、ミャンマー語、ベンガル語、タイ語、ネパール語、インドネシア語)に翻訳し、Webサイトにて無料で提供しています。
参照:https://stress-check-multilingual.jimdofree.com/
2020年5月13日~2021年10月22日までの期間で、ページビューは3,635回(うちインドネシア語213、タイ語131、ミャンマー語115)でした。任意でご報告いただいたダウンロード件数は23件です。
検査後には、結果シートの翻訳、産業カウンセラーによる個別面談も受け付けています。

【インドネシア人人財サポート】
インドネシアに特化した強みを生かし、受け入れ準備から滞在期間中、帰国時まで、インドネシア人人財をさまざまな角度からサポートしています。
地域に暮らす外国人と住民が交わるきっかけが持てないことで、さまざまな問題が発生しているケースも見受けられます。まずお互いが文化や言葉について知識を持つことで仲良くなることができれば、就労トラブルなどのさまざまな問題を未然に防げるという考えの元、非営利団体という立場で支援を続けることが大切であると考えています。

多文化共生セミナーやワークショップの開催(受け入れ前の事前学習)

翻訳・通訳(ジャカルタ在住のメンバー)

日本語学習の機会の提供(日本語教師・日本語ボランティアの派遣)

【外国人と仲良く暮らすための多文化共生ワークショップ】
地域の方や同じ職場で働く方に、もっと外国人への理解を深めてもらう目的で、多文化共生についてのワークショップを実施しました。

<ワークショップのプログラム>
1. カードゲームを一緒に楽しんで、インドネシア人と仲良くなろう
講師:dopang株式会社(言語屋)代表 Tania Mirella氏)
2. やさしい日本語のコツを学んで、伝わる自己紹介をしてみよう
講師:「入門・やさしい日本語」認定講師 自見佳珠子氏
3. 「多文化共生ってなんだろう?」~事例を通じてみんなで考えるワークショップ
講師:JICAデスク福岡 国際協力推進員 鬼丸武士氏
4. インドネシアの基礎知識/プレゼンテーション

今回はインドネシア編として実験的にワークショップを実施しましたが、他の国でもアレンジできるプログラムにしたつもりです。今後バージョンアップを重ねて多方面に展開したいと考えています。特に、企業−従業員間のトラブルを未然に防ぐために、外国人材を受け入れている企業にもこのようなワークショップが有用ではないかと考えています。

【特定技能人材候補者との日本語交流会】
2020年度は新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の発令等により、予定していた事業が次々と中止となってしまいました。その一方で、オンライン会議の利点を生かして、現地とリアルタイムに結びつきコミュニケーションを取るという新たな支援の可能性も見えてきました。
2021年3〜5月に3回にわたって、インドネシア、バリ州ジュンブラナ県ヌガラの認定送出機関で日本語を学ぶ特定技能人材候補者たち(参加者:インドネシア人14名、日本人11名)とオンラインで日本語交流会を行いました。日本側からは「日本の生活費の相場」「日本語上達のヒント」「日本で働くことの心構え」について話をしました(インドネシア語での通訳つき)。送出機関とタイアップしてこのような事前レクチャーをすることは大事だと感じています。

Q:JP-MIRAIでは、会員企業・団体に、「責任ある外国人受け入れのための5つの行動原則」を実践して頂くよう呼び掛けています。下記の行動原則のうち、(1)~(4)について、特に気を付けていることや具体的な取り組みがあれば教えてください。
(1)私たちは、外国人労働者の受入れに当たり、関係法令を遵守します。
(2)私たちは、外国人労働者の人権を尊重し労働環境・生活環境を把握し、課題の解決に努めます。
(3)私たちは、働く場と生活の場の両方で、外国人労働者との相互理解を深め、信頼関係を醸成します。
(4)私たちは、日本及び国際社会の発展と安定に貢献するため、外国人労働者の能力開発に尽力します。
(5)私たちは、プラットフォームの取り組みを日本国内及び世界に発信していきます。

(2)の外国人の人権尊重を意識しています。特に私たちは労働者に焦点を当てているのではないのですが、私たちのコミュニティの交流の中にインドネシアから日本に来て働いて生活している方々も含まれていると考えています。企業に積極的に提言をしていくような段階にはまだないと考えていますが、特定技能登録支援機関や企業と知り合いになるところから、まずは意見交換から始めていきたいと考えています。皆でお互いに知り合いながら仲良くなっていくことが自然な形ではないかと考えています。

Q:JP-MIRAIおよびJP-MIRAI会員に期待していること、貢献できることなどございましたら、教えて下さい

私たちは、元々インドネシア人からインドネシア語を習っていたメンバーで、インドネシアが好き、という気持ちから交流の延長で団体の活動を行っています。インドネシアに関わって20年という歴史があるため、インドネシアについては国民性や文化などの知識の蓄積があります。何でも聞いていただければと思いますし、インドネシア語の通訳や翻訳も可能です。
NPOとして外国人労働者の責任ある受け入れを考えたとき、NPOだからこそできることとは、行政や企業、外国人とのハブになることだと考えています。前述した多文化共生のワークショップもさまざまな所属の方をお招きしました。NPOというどこにも契約関係のない第三者的な立場だからこそ、外国人労働者の方、ステークホルダーの方へ隣人のように多文化共生の支援を提供できると思っています。

<インタビューを終えて>

弥栄様には、お忙しい中長い時間をこのJP-MIRAIの取材のために割いていただきました。友人関係の延長線上としての支援というご認識が、とても印象的なインタビューでした。この場を借りて感謝申し上げますと同時に、JP-MIRAIとしても皆様の意見をきちんと今後の活動に活かしていきたいと思います。

<取材執筆協力 株式会社クレアン 秋山映美・原田宏美>

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